RPAとは?AIエージェントとの違いは「判断の条件を書き切れるか」|すでにRPAがある会社が生成AIをどこに足すか

生成AIの導入を任されて、社内のどの業務から試せるかを聞きに回る。そんな段階に入った方も多いのではないでしょうか。
ところが経理や総務に行くと、「その作業はもうRPAで自動化してあります」と返ってきます。
調べてみると、「RPAは決めた手順どおりに動く、AIは自分で判断する」という説明はすぐに出てきます。
それでも、自分の会社のどの業務がどちら側なのかは書いてありません。しかも説明しているのは、自動化を売っている会社ばかりです。
この記事では、RPAが何を自動化するものなのか、AIエージェントとの境目がどこにあるのか、そしてすでに動いているRPAに生成AIをどこへ足すのかを整理します。
根拠にしたのは、総務省が公開している2つの文書と、Microsoft・UiPath の公式ドキュメントです。
本記事で開いた総務省のガイドブックは、RPAを「何でもできる魔法の道具というわけではありません」と書いていました。できないことの側から読むと、境目が見えてきます!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
RPAとは何を自動化するものなのか

総務省が自治体向けに公開している「自治体におけるRPA導入ガイドブック」は、RPAを次のように説明しています。
普段人が行う定型的なパソコン操作をソフトウェアのロボットが代替して自動化するもの、という書き方です。
同じガイドブックは、その仕組みも書いています。パソコン上の操作を認識・記録し、処理のルールを定義したシナリオに沿って動くとしています。
動かす対象は1つのアプリに限りません。表計算ソフト、業務システム、Webサイト、メールなど、複数のアプリケーションをまたぐ業務を自動化するツールだと書かれています。
ここで先に、まぎらわしいものを切り分けておきます。
同じガイドブックは、業務の自動化手段としてRPAのほかに表計算ソフトのマクロ機能と業務システムを並べ、3つを比べた表を載せています。
マクロ機能の短所として挙げられているのは、表計算ソフト以外の業務の自動化が基本的にはできない点です。業務システムのほうは、複数のシステム間の連携に調整や開発の負担が大きいとされています。
RPAの短所も同じ表に書かれています。基本的にパソコン上で操作できることしか自動化できないという制約です。
つまりRPAは、業務システムを入れるほどの件数はなく、マクロだけでは届かない作業のための手段だという位置づけになります。
同じガイドブックの言い方を借りると、既存の業務システムの隙間を埋める存在として使われてきたものです。
製品の側の書き方も確認しておきます。Power Automate を提供する Microsoft の公式ドキュメントは、デスクトップフローを単純または複雑なルールベースのタスクを実行するための機能だと説明しています。
同じページには、操作の手がかりについての記述もあります。アプリケーションのUI要素、画像、または座標を使ってコンピューターと対話できるという書き方です。
この「画面の要素を手がかりに操作する」という性質が、あとで出てくる止まり方に直結します。
AIエージェントとの違いはどこにあるのか

境目は、判断の条件を全部書き切れるかどうかにあります。
総務省のガイドブックは、RPAができないことをはっきり書いています。
与えられたインプットとシナリオのとおりに動作するため、人間のようにあらゆる状況に応じてその都度判断し、迷ったら指示を仰ぐということはできないという説明です。
そこから導かれる条件も、同じ箇所に書かれています。
RPAに渡すのは、判断を必要としない作業か、あるいは判断の条件を全て定義しきれるような単純作業のみを切り出したものだとしています。
大事なのは後半です。判断がまったくない仕事だけがRPAの対象という意味ではありません。
条件を書き切れるなら、判断を含む作業も渡せます。
書き切れなくなった時点が、境目です。
この軸は、当サイトのAIワークフローの記事が「手順を先に決めるか」として整理したものと近い軸ですが、置き方が違います。
同記事は手順を先に決めるかで切っているので、AIワークフローはRPAと同じ側に立ちます。本記事は条件を書き切れるかで切っているので、要約のような工程を含むものはAIの側に寄ります。
同じ業務でも、どちらの軸で見るかで置き場所が変わるということです。AIワークフローの位置づけそのものは、同記事のほうが正面から扱っています。
AIエージェントそのものの意味と、AIワークフローとの書き分けは、それぞれの記事で扱いました。
RPA製品を提供している側の書き方も見ておきます。UiPath は自社の公式ドキュメントで、構造化されたロジックと固定のルールに従う決定論的なシステムとしてのRPAロボットと、確率的なアプローチをとるエージェントを書き分けています。
同じドキュメントは、エージェントが判断を要する処理に向くとし、必要なときは人へエスカレーションするとも書いています。
この書き分けは、RPA製品を売っている会社が自社の新しい製品を説明するために書いたものです。業界で合意された定義として読むものではありません。
それでも、総務省の文書と同じ方向を指している点は押さえておく価値があります。条件を書き切れる側と、書き切れない側という分かれ方です。
なお、画面を見て操作するAIとRPAの違いは、Computer Use(コンピュータ操作AI)の記事で扱いました。同じ「画面を操作する」でも、手順を再生するのか、その場で判断するのかが分かれます。
自治体の公開データでは、RPAはもう古いのか

「生成AIが出てきたのだから、RPAは役目を終えたのではないか」という見方があります。
少なくとも公開されている数字は、そう読めるものではありません。
総務省は「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」を平成30年から続けています。令和7年度の結果は、令和8年4月24日に公表されました。
この調査は1,788の都道府県・市区町村を対象にしたもので、1,788団体すべてから回答があったと書かれています。基準日は令和7年10月31日です。
結果はこうなっています。RPAの導入済みの割合は、都道府県が98パーセント、指定都市が100パーセントです。
その他の市区町村は44パーセントで、実証中・導入予定・導入検討中を含めると約62パーセントが導入に向けて取り組んでいるとされています。
これは自治体を対象にした調査です。民間企業の普及率として読まないでください。
同じ資料は、生成AIを含めた重なりも出しています。AI・RPA・生成AIのいずれかを導入済みの団体は1,322団体(74.0パーセント)で、いずれも導入している団体が513団体(28.7パーセント)です。
つまり入れ替わりではなく、並んで使われているという姿が出ています。
削減の例も同じ資料に載っています。都道府県の例として挙げられているのは、河川海岸等許可台帳システムへの入力業務で年間3,300時間の削減(99パーセント減)です。
人口3.8万人の団体の例では、マイナンバー発行情報のシステムへの入力作業で年間604.6時間の削減(40パーセント減)が挙げられています。
並べてみると、どれも決まった手順の、大量の入力作業です。ここに生成AIを持ち込む理由は、いまのところ見当たりません。
RPAはどんなときに止まるのか

RPAを足すか替えるかを判断するには、止まり方を知っておく必要があります。総務省のガイドブックは、ここを具体的に書いています。
1つ目は、操作する相手が変わることです。
同じガイドブックは、シナリオに不具合がなかったとしても、操作対象の業務システムの画面や処理内容、入口となる帳票やデータの仕様が変更されれば、その時点からRPAは意図した動作ができなくなると書いています。
外部のシステムについての注意も添えられています。インターネット上のサービスやWebサイトを含む外部システムの仕様変更は、事前の通告なく頻繁に行われることもあるという書き方です。
製品の側からも同じことが見えます。Microsoft の公式ドキュメントは、無人実行が失敗したときの診断機能を説明する箇所で、診断の対象としてUI要素の検出エラーを挙げています。
無人実行向けに任意で有効にできる診断機能として案内されていて、有効にすると失敗の前の60秒の画面を録画する、という記述です。
UI要素の検出エラーが、診断の対象として名指しで挙げられているという点だけ、ここでは押さえておきます。
2つ目は、想定していなかったデータが来ることです。
ガイドブックは、RPAがシナリオで定義された指示どおりに動作するため、例外的な状況や仕様変更の場合を除き、処理を誤ることはないと書いています。
問題はその例外のほうです。同じ箇所は、例外的な状況でRPAが停止せず処理を続行した場合、意図とは異なる形でデータを更新してしまう可能性に触れています。
だからこそ、想定外の入力データが来たときやシステムの応答が遅いときには、自動処理を止めて人の判断を挟むか、処理を飛ばして後から確認できるようにする対策を、開発の時点でとっておくことが最も重要だとしています。
3つ目は、ここがいちばん見落とされます。人が替わることです。
ガイドブックは、シナリオの作成・保守を内製化している場合、担当者の異動・退職等により内部構造がわからなくなり、メンテナンスができなくなることへの備えが必要だと書いています。
長期にわたって処理をRPAに任せきりにしたまま異動や退職があると、いざという時に対応できる人がいないおそれがあるという指摘です。
同じガイドブックは、マクロ機能についても近いことを書いています。マクロの作成・管理は属人的になりがちで、引き継ぎがうまくいかないと自動化した業務の内容がブラックボックスになってしまうことが多々ある、という書き方です。
3つ目は製品を替えても解決しません。AIに置き換えても、中で何をしているか誰も説明できない状態は、そのまま残ります。
RPAで足りる業務とAIが要る業務は、どう分かれるのか

ここまでを踏まえると、業務は2つではなく3つに分かれます。
RPAで足りる業務の条件は、ガイドブックがはっきり書いています。効果を高めるには、一度に大量の処理を繰り返し行う業務か、日次や月次などの頻度で定常的に繰り返す業務で使うべきだとしています。
得意な形も書かれています。複数の業務システムをまたがる処理、特に独自に改修できない外部システムの操作を含む自動化です。
AIが要る業務は、その裏返しです。条件を書き切れない判断が含まれていて、切り出しても単純作業にならないものです。
読み取りや要約のように、入力の形が毎回ゆれるものもこちら側に入ります。
そして3つ目が、どちらも要らない業務です。ここを立てておかないと、自動化の検討が「どちらを買うか」に化けます。
ガイドブックは、RPAが必要ない場合を明示しています。業務システムに機能として搭載されていれば、RPAで自動化する必要はないかもしれないという書き方です。
費用の側からも書かれています。RPAの導入効果は処理件数が多いほど上がるため、団体の規模によってはライセンス費用や委託費を回収できるほどの歳出削減効果を得にくい場合もあるとしています。
処理時間についての注意も見逃せません。同じガイドブックは、1件あたりの処理時間で比べた場合、RPAが人間より短時間で終えられるとは限らないと書いています。
熟練した担当者のほうが手早く終えることも珍しくなく、事前準備や結果の確認まで含めるとRPAを使うほうが時間がかかることもあるという説明です。
RPAが真価を発揮するのは、同じ処理を何件も繰り返す必要があるときだとしています。
候補の業務を比べられる形に書き出す作業そのものは、業務棚卸しの記事で扱いました。3分割の判定は、書き出したあとの工程です。
すでにRPAがあるなら、生成AIはどこに足すのか

置き換えではなく、足す場所を3つに分けて考えると決めやすくなります。
1つ目は、前段です。
総務省のガイドブックは、RPAとの親和性が高い技術としてAI-OCRを挙げています。
AI-OCRとRPAを組み合わせることで、紙の申請書等をデジタルデータ化し、システムに入力する一連の作業を効率化できるとし、自治体での活用例が増えてきていると書いています。
読み取りの側の事情は、AI OCRの記事で扱いました。読み取った後にどんな形で返ってくるかが、RPAへ渡せるかどうかを決めます。
このとき、AIが担うのは形をそろえるところまでです。そろった後の入力は、これまでどおりRPAの仕事で構いません。
2つ目は、例外の側です。
前の章で見たとおり、想定外のデータが来たときには人の判断を挟む設計が推奨されています。そこで人が引き取る分の下書きを作る、という置き方があります。
ここで注意が1つあります。下書きを作る役はAIでも、最終の確認は人に残る設計のままです。
自動処理を止めて人の判断を挟むという推奨が、これで消えるわけではありません。
3つ目は、引き継ぎです。
止まる原因の3つ目は、シナリオの中で何をしているか誰も説明できなくなることでした。ガイドブックはこれに対して、シナリオの保守性を高めるための共通のルールを定め、RPAの仕様や操作方法を文書として残すことを挙げています。
文書として残す形そのものは、SOP(標準作業手順書)の記事で扱いました。手順を人とAIの両方に渡せる形に整える話です。
なお、RPAツール自体がAIを積むという方向もあります。
総務省のガイドブックは、3段階の自動化レベルがあると言われているという留保つきでこれを紹介したうえで、現在普及しているRPAツールは1段階目で、AIは含んでいないと書いています。
同じ箇所は、AIを搭載した他のツールと組み合わせた利用は可能だとも書いています。本記事が挙げた3つの置き場所は、この組み合わせの側の話です。
結局、どちらを選べばいいのか

判断の順番は、3つの問いで足ります。
1つ目は、繰り返す件数があるかです。件数がなければ、RPAの効果は出にくいとガイドブックが書いていました。
2つ目は、判断の条件を書き切れるかです。書き切れるならRPA、書き切れないならAIの側になります。
3つ目は、業務システムの機能で足りないかです。足りるなら、どちらも要りません。
この順番で見ていくと、RPAで足りている業務を生成AIに置き換える理由は、そう多くありません。
一方で、RPAが止まる3つの原因のうち、人が替わることへの備えは、AIを入れても自動的には解決しません。ここは別に手を打つ必要があります。
小さく試して広げるかどうかを判断する順番そのものは、AI導入ロードマップの記事で扱いました。
最後に、本記事の数値の扱いを書いておきます。
導入率と削減時間はすべて自治体を対象にした総務省の調査のもので、民間企業の数字ではありません。
また、RPAを安全に運用する条件や、認証情報の扱いについては、本記事では可否を判定していません。自社の情報システム部門とガイドラインを確認してください。
すでにあるRPAと生成AIの線引きを、自社の業務に当てて整理したい場合は、お問い合わせからご相談ください。
この記事の出典
- 自治体におけるRPA導入ガイドブック(総務省、令和7年7月、2026-09-18確認)
- 令和7年度「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」の調査結果の公表(総務省、令和8年4月24日公表、2026-09-18確認)
- 自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)(総務省、令和8年4月24日版、2026-09-18確認)
- デスクトップ フローの概要(Microsoft Learn、2026-09-18確認。ページの更新表示は2026-08-23)
- クラウド フローからデスクトップ フローをトリガーする(Microsoft Learn、2026-09-18確認)
- About agents(UiPath 公式ドキュメント、2026-09-18確認)
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