RAG(検索拡張生成)とは?ファインチューニングとの違いと、社内資料に答えさせるツールの選び方

RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)とは、AIが答える前に社内資料などを検索し、見つかった部分を読んでから回答を作る仕組みです。
AIが元々知らない情報でも、資料に書いてあれば答えられるようになります。
近い方法のファインチューニングとの違いは、知識をその都度資料から渡すか、学習でAIに覚えさせるかです。社内の規程やマニュアルのように、よく変わり、出典を示したい情報にはRAGが向きます。
この記事では、RAGの仕組みと近い方法との違い、向く情報と向かない使い方、自分で作らずに使えるツール、精度を上げる資料の整え方を順に見ていきます。読み終えると、自社の資料にAIで答えさせる方法と、使うツールを決められます。
NotebookLMやClaudeなど、RAGを自分で作らずに使えるツールを表で比べています!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
RAGとは、答える前に資料を探して読ませる仕組み
RAGの動きは3段階です。質問に関係しそうな部分を資料の山から探し、見つかった数か所を質問と一緒にAIへ渡し、AIはそれを読んで答えを書きます。
たとえば経理の担当者が「出張の日当はいくら?」と聞くと、AIは社内の旅費規程から日当の条文を探し出し、その条文を読んで「1日3,000円です(旅費規程 第8条)」のような形で答えます(金額は例です)。
AI自身が規程を覚えているわけではなく、聞かれるたびに規程を開いて読んでいる、と考えると分かりやすくなります。
この考え方は、2020年にFacebook AI(現Meta)の研究者たちが論文で発表したものです。いまはChatGPTやClaudeなどの製品の中でも、ファイルを読ませて答えさせる機能として広く使われています。
AIに自社の知識を使わせる方法は、RAGのほかに2つあります。違いを並べると次のようになります。
| 方法 | 知識の渡し方 | 資料が変わったとき | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| RAG | 質問のたびに資料を検索して、関係する部分だけ渡す | 資料を差し替えれば翌日から反映 | 規程、マニュアル、FAQなど量が多く、よく変わる情報 |
| 資料をそのまま貼る | 会話に資料の全文を入れる | 貼り直す | 1回きりの短い資料 |
| ファインチューニング | AIを追加で学習させて覚えさせる | 学習のやり直しが必要 | 文体や回答の型をそろえたいとき |
全文を貼る方法は手軽ですが、AIが一度に読める量(コンテキストウィンドウ)を超える資料は入りません。数百ページの規程集や、部署ごとのマニュアル全部を扱うなら、必要な部分だけを探して渡すRAGの出番です。
向くのは「社内にしかない」「よく変わる」情報
RAGが一番役に立つのは、インターネットには載っていない社内の情報です。就業規則、製品の仕様書、過去の問い合わせ対応の記録などは、AIが学習で知りようがないので、資料を読ませるしかありません。
たとえば問い合わせ窓口で、過去の回答記録と製品マニュアルを読ませておけば、新人が先輩に聞く前にAIへ聞けます。答えに出典が付くので、先輩が確かめるときも元の記録をすぐ開けます。
よく変わる情報にも向きます。料金表や手順書が改定されても、資料を差し替えるだけで答えが新しくなり、AIを学習させ直す必要がありません。
もう1つの利点は、答えの根拠を示せることです。多くのツールは回答に「どの資料のどこを読んだか」を添えるので、社員が元の条文を開いて確かめられます。
反対に、資料全体をまとめる使い方は苦手です。RAGは関係しそうな数か所だけをAIに渡すので、「過去3年分の議事録から論点を全部挙げて」のような質問では、拾われなかった部分が抜け落ちます。
資料に書いていないことを聞くと、AIがそれらしい答えを作ってしまうこともあります。RAGはハルシネーションを減らしますが、なくすわけではないので、出典を開いて確かめる運用はそのまま残します。
自分で作らなくても、既製のツールで使える
RAGを使うのに、システムを一から作る必要はありません。資料をアップロードすると、検索して答える部分をツールが受け持ってくれます。
2026年10月4日に各社の公式ページで確認した内容を並べます。
| ツール | 向く使い方 | 無料で使える範囲 |
|---|---|---|
| NotebookLM(Gemini Notebook) | 手元の資料を集めて、自分やチームで質問する | ノートブック100件、1件につき資料50件、質問は1日50回まで |
| Claudeのプロジェクト | 資料と指示をまとめた作業場所で質問する | プロジェクト5件まで。資料が多いときに自動で検索に切り替わるのは有料プランのみ |
| Microsoft 365 Copilot | 社内のメール、文書、チャットを横断して質問する。本人が見られる範囲だけを読む | 無料プランなし(法人向けの有料オプション) |
| Dify | 社内向けの問い合わせボットなど、RAGのアプリを作って配る | 無料のSandboxで資料50件、保存容量50MB、5アプリまで |
自分の調べ物や小さなチームで試すなら、NotebookLMが手軽です。社員全員が使う問い合わせ窓口を作るなら、アプリとして配れるDifyのようなツールが向きます。
すでにMicrosoft 365で仕事をしている会社なら、資料を移さずにMicrosoft 365 Copilotで横断して聞く方法もあります。権限のない社員には見えない資料が答えに混ざらない点も、全社で使うときの安心材料です。
Difyを社内で広く使っている企業の例は、Difyの活用事例で紹介しています。
資料をアップロードする前に、そのツールが入力をAIの学習に使うかどうかを確かめます。個人向けと法人向けで扱いが違うことが多く、詳しくはAIに学習させない設定で整理しています。
精度を決めるのは、AIより資料の側
RAGの答えがずれるとき、原因はAIよりも資料の側にあることがよくあります。検索で正しい部分が見つからなければ、AIはその部分を読めないからです。
資料は、AIが読む前に数百字ほどの塊(チャンク)に切り分けられ、意味の近さで探せる形(埋め込み)にして保存されます。質問に近い塊を探す処理がベクトル検索で、言葉の一致と組み合わせる方法はハイブリッド検索と呼ばれます。
既製ツールを使うなら、この仕組みを自分で触ることはほとんどありません。代わりに、入れる資料を次の3点で整えると、答えの質が上がります。
1つ目は、古い版を消すことです。改定前と改定後の規程が両方入っていると、AIが古いほうを読んで答えることがあります。
2つ目は、表や図の中身を文章でも書いておくことです。画像の中の文字や複雑な表は、検索で拾われにくくなります。
3つ目は、ファイル名と見出しを中身が分かる名前にすることです。「資料1.pdf」より「旅費規程_2026年4月改定.pdf」のほうが、AIも人も正しい資料にたどり着けます。
入れたあとは、答えが分かっている質問を10個ほど投げて、正しく答えられるかを試します。
まとめ
RAGは、AIが答える前に資料を検索し、見つかった部分を読んでから回答する仕組みです。知識を学習で覚えさせるファインチューニングと違い、資料を差し替えるだけで答えが新しくなり、出典も示せます。
まず試すなら、NotebookLMに自部署のマニュアルを数件入れて、よく聞かれる質問を10個ほど投げてみるのが手軽です。
社内の問い合わせ対応にRAGを使いたいものの、どの資料を入れてよいか、全社に広げるならどのツールを選ぶかを決めかねている場合は、運営会社のAIリスキルがご相談を受けています。
この記事の出典
- Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks(Lewis ほか、arXiv、2020年5月、2026年10月4日確認)
- NotebookLM のプランと上限(Google、2026年10月4日確認)
- What are projects?(Claude Help Center、2026年10月4日確認)
- Pricing(Dify、2026年10月4日確認)
- Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ(Microsoft Learn、2026年10月4日確認)
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