Dify活用事例|社員3万人・アプリ1万個のリコーとカカクコムの実例

Difyは、プログラミングの知識なしに生成AIアプリを組み立てられるツールです。リコーとカカクコムでは、エンジニアではなく業務の担当者が自分でアプリを作っており、社内で使われるアプリは数百から1万個規模まで積み上がっています。
気になるのは、その規模まで増えたあとに何が起きるかでしょう。両社ともワークスペースの分け方、コストの追い方、公開範囲のルールを先に決めています。ここが、小さく試した先まで見通せるかの分かれ目になります。
この記事では、両社が公開している情報をもとに、実際に動いているアプリの中身と、規模が大きくなってからの運用の作り方を見ていきます。読み終えると、Difyを試す最初の一手が決まります。
記事の最後には、自社で着手する業務を選ぶためのワークシートもご用意しています!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
Difyで実際に何が作られているのか
リコーグループでは国内グループ社員約3万人が使える環境が整い、2026年7月27日時点で業務に即したアプリが約10,200個作られています。
カカクコム(食べログ運営元)も全社的にDify Enterprise版を導入し、複数部門でアプリを内製する体制を敷いています。
なお確認できるのは両社が公開している範囲の情報です。カカクコムの数値の一部は2025年11月時点のDify公式ブログに基づくもので、リコーの数値(2026年7月時点)とは基準時点が異なります。
契約形態や費用など、公開情報だけでは分からない点も残ります。
イメージを掴むには、実際に作られたアプリの中身を見るのが早道です。
リコー: 無償公開されている業務テンプレート9種
リコーは2026年6月、社内実践のノウハウをもとに作った業務テンプレートを9種類、無償で提供し始めました。
ラインナップには、レポートを読み込んで提案書を自動作成するもの、オファリング提案を自動作成するもの、イベント招待メールを作成するものが含まれます。
ほかにも、アンケートの自由記述をカテゴリー分類するもの、共創ビジネスのアイデアを生成するもの、顧客課題を言語化するツール、AIによる顧客インタビューが並びます。
いずれも、専門的なプログラミング知識がなくても、日々の資料作成や顧客対応の一部をアプリに置き換えられる粒度になっています。
カカクコム: 3時間で本番稼働した抽出ツール
カカクコムの場合は、製品データを抽出するツールが象徴的な事例です。Dify導入後わずか3時間でこのツールを本番稼働させました。
Dify公式ブログ(2025年11月時点)によると、この抽出ツールは日次で数千件の製品データを処理しており、従業員の75%がDifyのアカウントを持ち、約950個のアプリが社内で使われていました。
この2社に共通しているのは、「エンジニアが数か月かけて作るシステム」ではなく、「現場の担当者が自分の業務課題に合わせて作る小さなアプリ」の積み重ねだという点です。ひとつひとつのアプリは大掛かりなものではありません。
それぞれの基準時点で見ても、リコーでは約1万個、カカクコムでは約950個という規模まで積み重なっています。
なぜここまで広がったのか
Difyが広がった理由は、生成AIの性能そのものよりも、「誰が作るか」を変えたことにあります。
これまで社内向けの業務アプリを作るには、エンジニアに要件を伝え、開発してもらうという手順が必要でした。Difyのようなノーコード基盤では、業務の当事者自身が、プログラミングの知識なしにワークフローやチャットボットを組み立てられます。
要件を伝える相手が「他の誰か」から「自分」に変わることで、着手までのスピードと、現場の実情に合った細かい調整のしやすさが一気に上がります。
リコーやカカクコムでこれだけの数のアプリが生まれた背景には、この「作る人を増やす」という設計思想があります。エンジニアのリソースを増やさなくても、現場の人数だけアプリを作れる可能性が生まれます。
これが、他のAIツールにはない、ノーコード基盤ならではの伸び方です。
大きくなっても運用が破綻しない理由
ここで気になるのが、「そんなに増えたら収拾がつかなくなるのではないか」という不安でしょう。この点についても、両社は具体的な対策を講じています。
カカクコムの対策: ワークスペースとAPIキーで分ける
カカクコムは、ワークスペースを部門ごとに分けて設計し、ワークスペースごとに異なるAPIキーを設定することで、「どの部署・プロジェクトで、どれだけAI利用コストが発生しているか」を把握できる体制を作っています。
アプリの公開範囲も、同一ワークスペース内に限定する「探索」機能を基本とし、外部に開いてしまう公開URLの発行は原則禁止としています。定期的な監視ジョブで、未審査のモデルやツールが有効化されていないかをチェックする運用も組み込んでいます。
リコーの対策: 利用状況を可視化するダッシュボード
リコーも同じ課題に行き着いています。2026年7月31日には、Difyの利用ログをもとに「誰が・何を・どれだけ利用しているか」を可視化するダッシュボード構築サービスを発表しました。
約3万人が使える環境で約10,200個のアプリが動く規模になったからこそ必要になった仕組みですが、逆に言えば、そこまで増えても対処法が確立されているということでもあります。
なお、このサービス自体の価格や提供形態は、7月31日時点のリリースに明記されていません。
リリース内のダッシュボード画面例(総ワークスペース数、総メンバー数、トークン消費量)も「サービス内容を説明するために作成した架空のもの」と注記されており、実データではありません。
つまり、「作る人を増やしたら収拾がつかなくなるのではないか」という不安には、すでに大手企業が実例で解決策を示しています。
ワークスペースを部門単位で分けること、APIキーを分けてコストを追える状態にすること、定期的に棚卸しすること。この3点を最初から意識しておけば、小さく始めた運用が大きくなっても慌てずに済みます。
何から始めればいいか
ここまで見てきたのは、数万人・数千アプリという規模の話です。ただ、自社で試すのに、その規模を最初から目指す必要はありません。
Difyにはクラウド版の無料プラン(Sandbox)が用意されており、クレジットカードなしで基本的な機能を試せます。
まずは自分の業務の中で繰り返し発生する小さな作業をひとつ選び、チャットボットやワークフローとして組んでみるところから始めるのが現実的です。
リコーの無償テンプレートのように、資料の要約、アンケートの分類、メール文面の自動作成といった、成果物のわかりやすい作業から着手すると、効果を実感しやすくなります。
料金プランや具体的な機能の詳細は、ツール詳細ページで随時最新情報に更新しています(Difyの詳細ページ)。
まとめ: まずは小さく試すところから
Difyが「使えるツールかどうか」は、リコー・カカクコムの実例がすでに証明しています。大事なのは、いきなり全社展開を目指すことではなく、自分の業務の中にある小さな繰り返し作業をひとつ選び、無料プランで試してみることです。
試す前に、次の点を確認しておくと迷いません。
- 業務の中で繰り返し発生する小さな作業を1つ選べているか
- 資料の要約やアンケート分類のように、成果物がわかりやすい作業から始めようとしているか
- アプリが増えてきたときのために、ワークスペースやコスト管理の考え方を知っているか
- 本格的に展開する場合の相談先を決めているか
まずは自分で無料プランから触ってみたい場合は、Dify公式サイトからSandboxプランに登録できます(クレジットカード不要)。
自社の業務のどこにDifyを組み込めばいいか、導入から運用まで相談しながら進めたい場合は、AIリスキル株式会社の生成AI導入支援もご利用いただけます。
「何から試せばいいかわからない」「小さく始めて、うまくいったら広げたい」といったご相談は、お気軽にどうぞ。
この記事の出典
- リコージャパングループの実践から生まれた「Dify活用可視化ダッシュボード構築サービス」を提供開始(リコー、2026年7月31日)
- 「Dify Essential/Standard」ライセンスと、Difyアプリケーションの無償テンプレートを提供開始(リコー、2026年6月1日)
- カカクコムにおけるDifyエンタープライズ版の全社導入と活用ポイント(食べログTech Blog、2025年5月13日)
- Dify公式ブログ: Kakaku.com導入事例(Dify、英語、2025年11月21日公開)
- Dify公式料金ページ
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