AI事業者ガイドラインとは?「AI利用者」に当たる会社が第1.2版で確認する事項

社内で生成AIを使うルールを整えることになり、根拠になりそうな公的資料を探すと、「AI事業者ガイドライン」という名前に行き当たります。
開いてみると、AI開発者・AI提供者・AI利用者で書かれている内容が分かれていて、自社がどこに当たるのか迷いやすい構成です。
この記事では、この文書が何なのか、法律との違い、そして「AI利用者」の立場で何が挙げられているのかを順に解説します。
自社が「AI利用者」に当たるかを先に確かめると、読む範囲が絞れます!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
AI事業者ガイドラインとは何ですか

AI事業者ガイドラインは、総務省と経済産業省が連名で公表している、AIの活用に関する指針です。本編の表紙には「第1.2版」と「令和8年3月31日」が記されています。
本編は、この文書を参照することで、AIを活用する事業者が安全安心な活用のための望ましい行動につながる指針を確認できるもの、と位置づけています。
3つのガイドラインを統合して作られた文書
本編の「はじめに」によると、総務省主導の2つのガイドラインと経済産業省主導の1つのガイドラインを統合・見直しして、2024年4月に策定されたものです。
従来のガイドラインに代わって参照する文書である、という整理が本編に書かれています。公的機関を含む事業者を対象にしていることも同じ箇所に記載があります。
版が上がる前提で作られている
本編と概要資料は、このガイドラインを「Living Document」として今後も更新を重ねると明記しています。経済産業省の掲載ページにも、第1.1版からの見え消し版が置かれています。
そのため、解説記事や社内資料を参照するときは、どの版の話なのかを確かめる必要があります。本記事が対象にしているのは第1.2版です。
AI事業者ガイドラインは法律とどう違うのですか

本編は、このガイドラインを「非拘束的なソフトロー」と明記しています。関係者の自主的な取組を促し、ゴールベースの考え方で作成した、という説明が添えられています。
本記事で確認した範囲では、本編に違反への罰則の定めは見当たりませんでした。ただしこれは、読者の会社に何も適用されないという意味ではありません。
法令の遵守は別に述べられている
第2部の「共通の指針」は冒頭で、憲法、知的財産関連法令及び個人情報保護法をはじめとする関連法令、AIに係る個別分野の既存法令等を遵守すべきだと述べています。
つまり、ガイドラインに沿うことと、適用される法令を守ることは、この文書の中でも別々に扱われています。本記事はそのどちらについても可否の判定をしません。
法律と、法律に基づく指針は別にある
本編は、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が令和7年法律第53号として2025年6月に公布され、9月に全面施行されたと記しています。
本編の脚注は、同法第13条に基づく「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」が、2025年12月19日に人工知能戦略本部決定として策定されたと記しています。
これらは本ガイドラインとは別の文書です。自社に何が適用されるかは、該当する公式資料と社内の確認先で判断することになります。
「AI利用者」に当てはまるのはどんな会社ですか

本編は、対象者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに大別しています。このうちAI利用者は「事業活動において、AIシステム又はAIサービスを利用する事業者」と定義されています。
生成AIのサービスを契約して業務で使っている会社は、この定義の言葉に沿って、自社の立場を確認することになります。
3つの主体は兼ねることがある
本編は、AIの活用方法によっては同一の事業者が複数の主体を兼ねる場合もある、と明記しています。自社の製品にAIを組み込んで提供していれば、利用者と提供者の両方に関わることがあります。
どの主体に当たるかは自社の事業内容によって変わるため、本記事では個別の判定をしません。
対象に含まれないと書かれている立場もある
本編は、事業活動以外でAIを利用する人や、AIを直接事業で利用せずにその便益を享受する人を指す「業務外利用者」と、データを提供する「データ提供者」を、このガイドラインの対象には含まないとしています。
ただし、AIの開発・提供・利用を担う者から業務外利用者への必要な対応は記載する、とも書かれています。対象外イコール無関係ではない、という整理です。
「AI利用者」には何が挙げられているのですか

第5部「AI利用者に関する事項」には、AIシステム・サービスの利用時に重要な事項が挙げられています。次の表は本編の項目名と記載例を整理したもので、社内ルールの完成形ではありません。
| 本編の項目 | 記載されている内容の例 |
|---|---|
| 安全を考慮した適正利用 | AI提供者が定めた利用上の留意点を守り、設計で想定された範囲内で利用する |
| 入力データ又はプロンプトに含まれるバイアスへの配慮 | プロンプトに含まれるバイアスに留意し、責任をもって出力の事業利用を判断する |
| 個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策 | 個人情報を不適切に入力しないよう注意を払い、侵害の防止を検討する |
| セキュリティ対策の実施 | 提供者のセキュリティ上の留意点を守り、機密情報等を不適切に入力しない |
| 関連するステークホルダーへの情報提供 | 出力を事業判断に活用したとき、その結果を合理的な範囲で情報提供する |
| 関連するステークホルダーへの説明 | 問合せ窓口を合理的な範囲で設置し、AI提供者とも連携して説明する |
| 提供された文書の活用及び規約の遵守 | 提供された文書を適切に保管・活用し、サービス規約を守る |
書きぶりは「重要である」「期待される」
第5部の冒頭は、AI利用者がAI提供者の意図した範囲内で適正に利用することを「重要である」とし、必要な知見の習得を「期待される」と書いています。
義務を課す書き方ではなく、自主的な取組を促す書き方です。ここを社内で「必須項目の一覧」として配ると、文書の性格とずれます。
個別の用途ごとの確認は別の作業
表の項目は、どのAIをどの業務で使うかが決まって初めて具体化します。用途ごとに何を見るかは、AIリスク評価とはで扱っています。
ガイドラインはどこから読み始めるとよいですか

概要資料によると、別添には「第5部関連」という区分があり、AI利用者向けとして案内されています。その中身は、第5部の解説と、第2部の「共通の指針」の解説の2つです。
つまり、AI利用者向けと案内されている範囲にも、全主体に共通する第2部が含まれています。第5部だけを読む構成にはなっていません。
チェックリスト(別添7)は全主体向けと書かれている
経済産業省の掲載ページには、チェックリスト(別添7)のPDFと、同じ別添7のワークシートのExcelが置かれています。本記事でPDFを開いたところ、中身はAとBの2枚でした。
Aは冒頭に「全主体向け」と明記され、第2部の「共通の指針」を要約したものだと書かれています。Bは広島AIプロセスの国際指針の項目です。
本記事で確認した範囲では、この別添7にAI利用者だけの項目表は含まれていませんでした。主体別の記載を読みたい場合は、本編の第5部と別添の該当区分に当たることになります。
社内の文書に落とすのは別の作業
掲載ページには、本編と概要のほか、活用の手引き(案)とチャットボットも公開されています。どこから読むかを決めるときの入口になります。
社内で配る文書をどう書くかは、生成AIガイドラインとはとAI利用ポリシーとはで扱っています。
まとめ

AI事業者ガイドラインは、総務省と経済産業省が連名で公表している指針で、本編の表紙に記された現行版は第1.2版です。本編は自らを非拘束的なソフトローと位置づけています。
読む範囲を絞る起点は、自社が3つの主体のどれに当たるかです。事業活動でAIサービスを使う会社は、本編の定義に沿って「AI利用者」に当たるかを確認します。
第5部には利用時の事項が挙げられていますが、別添の案内では第2部の共通の指針もあわせて読む構成です。ガイドラインを読むことと、社内の文書を書くことは、別の作業として分けます。
AIを業務で使う範囲を社内で整理したい企業の方へ
公式資料を読む順番が決まっても、自社のどの業務から着手するかは別の検討になります。進め方や社内への定着を具体化したい場合は、お問い合わせはこちらからご相談ください。
この記事の出典
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省、令和8年3月31日、2026年9月18日確認)
- AI事業者ガイドライン 掲載ページ(経済産業省、最終更新2026年4月1日、2026年9月18日確認)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(概要)(総務省・経済産業省、2026年9月18日確認)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)チェックリスト(別添7)(総務省・経済産業省、令和8年3月31日、2026年9月18日確認)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(内閣府、2026年9月18日にページの到達を確認)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針(内閣府、2026年9月18日にページの到達を確認)
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