AIガバナンスとは?AI利用で「誰が決め、誰が確認するか」を整える仕組み|最初に決める3つのこと

AIガバナンスとは、AIの利用について「誰が決め、誰が確認し、誰が止めるか」という責任とルールのしくみを組織で整えることです。規約を一度作って終わりにする話ではありません。
何から手をつけるかは、担当者を決めるだけでは見えてきません。効いてくるのは、リスクの把握、最初に決めること、公的な指針との関係、自社だけで足りない部分をどう補うかの4点です。
この記事では、専任部署がなくても始められる整え方を、この4点に沿って整理していきます。読み終えると、最初に決めるべきことと、公的な指針との関係を理解したうえで、次に何が必要か判断できます。
最初は、利用範囲・入力する情報・確認手順から。今日から始められる範囲で整理していきます!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
AIガバナンスとは、AI利用について「誰が決め、誰が確認し、誰が止めるか」を組織で整えること

AIガバナンスとは、AIの導入・利用・改善について、誰が決め、誰が確認し、何かあれば誰が止めるかという責任とルールを、組織として整えるしくみです。
目的は、活用を止めることではなく、リスクを抑えながら活用を続けることにあります。ルールが無いまま利用が広がると、確認や責任の所在があいまいになりがちです。
対象は生成AIに限らず、AI全般の利用です。近年は生成AIの普及にともない、社内での取り組みが急速に注目されるようになりました。
また、AIガバナンスは一度ルールを作れば終わる話ではありません。AIの使われ方や関連する法律・指針は変わり続けるため、継続的な見直しが必要です。
担当者を決め、リスクを把握する

AIガバナンスを整えるうえで最初に必要なのは、誰が責任を持つかを決め、どんなリスクがあるかを把握することです。
誰が責任者になるか
専任のガバナンス部門が無くても始められます。経営層や情報システム担当が、他の業務と兼務で責任者になるという考え方が現実的です。
重要なのは肩書きではなく、誰が最終的な判断と確認を担うかを決めておくことです。担当が決まっていない状態のままだと、次に挙げるリスクへの対応が遅れます。
どんなリスクがあるか
生成AIの利用には、いくつか共通するリスクがあります。代表的なのは、機密情報の漏えい、もっともらしい誤情報の混入、著作権侵害、偏った出力の4つです。
それぞれの詳しい内容は、生成AIの7大セキュリティリスクで個別に整理しています。
AIエージェントを、人の確認を挟まず処理が自動で進む形で使う場合は、同じリスクがより早く広がる点にも注意してください。
最初に決める3つのこと

専任部署がなくても、最初に次の3つを決めておくと、AIガバナンスの土台になります。
どの業務でAIを使ってよいか(利用範囲)
まず、どの業務でAIを使ってよいかの範囲を決めます。社外への提出物か社内向けの下書きかなど、影響の大きさで区切ると考えやすくなります。
入力してよい情報/だめな情報
次に、AIへ入力してよい情報とだめな情報の線引きを決めます。個人情報保護法(個人を特定できる情報の扱い方を定めた法律)は、AIサービスを使う場面にもそのまま適用されます。
個人情報保護委員会は2023年6月2日、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました。入力した情報がAIの学習データとして使われる設定になっている場合、個人情報を取り扱う事業者が個人データを入力すると、提供者への第三者提供にあたることがあります。
第三者提供には、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です(個人情報保護法第27条・第28条)。すべての入力に一律で同意が必要というわけではなく、扱う情報の種類や、AI側の学習データとしての利用設定によって変わります。
自社がどの情報までなら入力してよいかは業務によって異なるため、利用規約を確認したうえで線引きを決めてください。
出てきた答えをどう確認してから使うか
AIの回答は、もっともらしい言い方で誤った内容を含むことがあります。この現象はハルシネーションと呼ばれ、生成AIに共通する性質です。
出てきた答えをそのまま使わず、重要な判断や社外に出す文書ほど、人が最終確認する手順を決めておくことが欠かせません。
この3点は最初の一歩であり、これだけで自社のAIガバナンスが完成するわけではありません。決めたルールは、次に説明する見直しの中で更新していくことになります。
公的なガイドラインと、自社のルールはどう関係するか

「AIガバナンス」を調べると、公的なガイドラインと法律の両方が出てきて、どちらを守ればよいか分かりにくいことがあります。ここでは両者を分けて整理します。
AI事業者ガイドラインとは
AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省が公表した、事業者が自主的に検討する行動指針をまとめた文書)は、2026年3月に第1.2版が公表されました。初版は2024年4月に策定されています。
このガイドラインは、事業者の自主的な取り組みを促す非拘束的な文書であり、法律のような拘束力はありません。リスクの大きさに応じて対応の程度を決める、リスクベースアプローチという考え方を基本にしています。
対象は、AIを開発する「AI開発者」、AIをサービスに組み込んで提供する「AI提供者」、事業活動でAIを利用する「AI利用者」の3つに大きく分かれます。事業規模の大小を対象の条件にはしていません。
多くの企業は「AI利用者」にあたりますが、自社でAIを開発・カスタマイズする場合は、当てはまる区分が変わることがあります。判断に迷う場合は、ガイドライン本文で確認するか、専門家に相談してください。
ガイドラインとは別に、既存の法律はAI利用にもそのまま適用される
AI事業者ガイドラインを踏まえることは、法律上の義務を果たすこととは別の話です。個人情報保護法など、生成AI以前からある法律は、AIを使う場面にもそのまま適用されます。
先ほどの個人情報保護委員会の注意喚起も、この法律が生成AIの利用にそのまま及ぶことを示した例です。ガイドラインと法律は別物として、両方を意識しておく必要があると整理できます。
業種によっては、これとは別の指針が必要になる場合もあります。自社の業界団体や監督官庁の情報もあわせて確認してください。
ルールは一度作って終わりにしない

最初に決めたルールは、そのまま固定するものではありません。AIの使われ方が広がったり、関連する法律や指針が変わったりするたびに、内容を見直す必要があります。
見直しの頻度を先に決めておくと、対応が後手に回りにくくなります。半年に一度など、社内の運用に合わせた周期を決めておくとよいでしょう。
もう一つ決めておきたいのが、問題が起きたときの初動です。誤情報を社外へ出してしまった、機密情報を入力してしまったといった場合に、誰へ報告し、何を止めるかをあらかじめ決めておきます。
対応を事前に決めておくと、実際に問題が起きたときに、原因の切り分けや再発防止に早く進めます。
自社だけで進めるのが難しいときは

担当者を決め、リスクを把握し、ルールを見直す体制まで、自社だけで整えるのが難しい場合もあります。そうした場合は、社内向けの研修や外部の専門家への相談も選択肢になります。
全社的にAIリテラシーを底上げする研修は、利用範囲や入力情報の線引きを、現場の一人ひとりが理解する助けになります。
自社の業務に合った研修内容や、相談すべき専門家の分野は、会社の規模や扱う情報によって変わります。
AIガバナンスについてよくある質問

中小企業にも必要ですか
専任の部署が無くても取り組めます。AI事業者ガイドラインも事業規模を対象の条件にしていません。まずは責任者を決め、最初に決める3つのことから始めてください。
ガイドラインを守らないと罰則がありますか
AI事業者ガイドライン自体は非拘束的な文書のため、守らなかった場合の罰則はありません。一方で、個人情報保護法など既存の法律に違反した場合は、その法律に基づく対応が別途生じます。
何から始めればいいですか
まずは責任者を決めることから始めます。そのうえで、利用範囲、入力してよい情報、確認手順の3点を決めると、最初の土台ができます。
まとめ

AIガバナンスとは、AIの利用について「誰が決め、誰が確認し、誰が止めるか」という責任とルールのしくみを組織で整えることです。専任部署が無くても、経営層や既存の担当者の兼務で始められます。
最初に決めるとよいのは、利用範囲、入力してよい情報、確認手順の3点です。公的なAI事業者ガイドラインは非拘束的な指針であり、個人情報保護法などの既存の法律とは別に、両方を意識する必要があります。
決めたルールは作って終わりではなく、使われ方の広がりや法律・指針の変化に合わせて見直していくものです。
自社のAI利用ルールづくりや社員研修をどこから始めればよいか整理したい場合は、お問い合わせはこちらからご相談ください。
この記事の出典
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)(総務省・経済産業省、2026年3月31日公表)
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日公表)
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