AI利用ポリシーとは?会社でAIを使う範囲を決める社内文書の考え方

生成AIを業務で使う場面が増えるほど、どのツールなら使えるか、資料のどこまで入力してよいかを、個人の判断だけに任せにくくなります。
使い方を一律に止めるのではなく、業務や情報に応じて確認するには、社内で共通のよりどころが必要です。
この記事では、AI利用ポリシーが何を示す文書なのか、載せる項目、関わる人、作成後の運用を順に解説します。
この記事では、社内で確認したい項目と、作った後の運用を順に解説します!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
AI利用ポリシーとは何ですか

AI利用ポリシーは、社内でAIを使ってよい範囲と、迷ったときの確認先を示す文書です。利用する目的、対象者、扱う情報、確認の手順を、関係者が同じように確認できる形にします。
ここでいうポリシーは、AIを使うこと自体を許可・禁止するだけの一覧ではありません。日々の業務で、どの場面を事前確認に回すかをそろえるための文書です。
AIガバナンスとの違い
AIガバナンスは、組織としてAIのリスクと便益をどう管理するかという統制の全体像です。AI利用ポリシーは、その中で従業員へ伝える利用範囲や確認手順を文書にしたものと考えると区別しやすくなります。
組織の役割や意思決定の全体像は、AIガバナンスとはで詳しく解説しています。本記事では、社内で配る利用ルールの文書に絞ります。
文書で示すのは判断のよりどころ
経済産業省・総務省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、必要に応じたAIガバナンスに関するポリシー、文書化、教育を挙げています。これは、組織が何を確認し、説明できる状態にするかを考える手がかりになります。
ただし、そのガイドラインをそのまま社内規程へ移すことは、各社の利用条件や業務に合うことを意味しません。自社で使うAI、扱う情報、判断の重さを踏まえて、文書の範囲を決めます。
AI利用ポリシーはなぜ必要になるのですか

AIの利用形態や業務の目的が変われば、確認したい点も変わります。デジタル庁のガイドブックも、利用形態やユースケースによって想定されるリスクが変わると説明しています。
利用ポリシーがあると、個人が毎回ゼロから可否を考える代わりに、決められた範囲と確認先を参照できます。新しい使い方が出たときも、禁止か許可かを急いで決める前に、どこへ相談するかをそろえられます。
シャドーAIとの関係
会社が把握していないAI利用は、一般にシャドーAIと呼ばれます。ポリシーはシャドーAIをそれだけで解決するものではありませんが、承認済みの利用範囲や相談先が伝わっていなければ、確認されない利用が生まれる要因の一つになります。
シャドーAIが何を指し、禁止だけに頼らない対処をどう考えるかは、シャドーAIとはで確認できます。ここでは、利用ポリシーを社内の相談ルートとしても使う視点を持ちます。
提供元の案内と自社のルールを分ける
提供元の公式案内は、契約、プラン、設定によって対象範囲が分かれることがあります。たとえばOpenAIは、対象となるBusiness、Enterprise、APIなどについて、既定でビジネスデータをモデル学習に使わないことや、管理機能を説明しています。
これはOpenAIの対象製品についての説明です。他のAIサービスにも同じ条件が当てはまるとは限らないため、候補製品ごとにデータ利用、保持、アクセス管理の案内を確認し、その結果を自社の利用ルールへ反映します。
AI利用ポリシーには何を書くことが多いですか

AI利用ポリシーの項目は、会社の業務、扱う情報、利用する製品で変わります。以下は完成ひな形ではなく、本文で検討する一例です。
| 検討する項目 | 文書で決めることの例 |
|---|---|
| 目的と対象 | どの業務・部署・利用者を対象にするか |
| 利用範囲 | 使ってよいAIサービスや利用場面をどう確認するか |
| 情報と出力 | 入力前に確認する情報、出力を業務で使う前の確認方法 |
| 相談先と記録 | 迷ったときの相談先、例外を確認する流れ、見直しの記録 |
目的と利用範囲を先にそろえる
最初に、何の業務を対象にするか、誰に適用するかを決めます。そのうえで、利用するAIサービスを指定するのか、利用前の確認基準を示すのかを、自社の運用に合わせて選びます。
ALSOKが公開しているAI利用ポリシーには、同社の利用範囲として製品・サービスの開発、業務効率化、顧客体験の向上などが記載されています。これは一社の公開例であり、自社の利用範囲を決めるときは、同じ表現を採用するのではなく、対象業務を確認します。
入力する情報と出力の扱いを決める
入力する情報では、社内で扱うデータの区分と、利用候補のAIサービスが説明するデータの扱いを照らして確認します。入力できる情報を、誰が、どの案内にもとづいて判断するかを記しておくと、現場が相談する先を見つけやすくなります。
出力については、業務で使う前にどのような確認をするかも論点になります。AIの出力をそのまま正しいものとして扱うのではなく、業務の目的に応じて、人が事実や表現を確かめる場面を決めます。
例外と相談の流れを残す
利用範囲に入らない新しい使い方が出たとき、問い合わせ先がないと、現場は独自の判断をしやすくなります。相談する窓口、確認に必要な情報、回答をどこへ残すかを決めると、次の似た相談にも使えます。
これらを書けば法的に問題がない、あるいは情報を安全に扱える、と本記事では判断しません。必要な確認は会社の業務と利用製品によって異なるため、該当する社内規程や提供元の公式案内を確認します。
AI利用ポリシーを作るときは誰が関わりますか

誰が作成を主導するかは、組織の規模や業務によって異なります。文書を使える状態にするには、利用製品やアカウントを把握する人、業務で使う人、社内規程や判断を確認する人が、必要な範囲で関わることがあります。
役割をあらかじめ固定して考えるより、各論点を誰に確認するかから始めると整理しやすくなります。たとえば、利用するAIサービスの管理は情報システム、業務での出力確認は現場、既存規程との関係は法務や管理部門へ確認する形が考えられます。
文書の内容を確認する人
目的と利用範囲は、AIを使う業務の責任者や現場の利用者に確認します。扱う情報や外部サービスの条件は、情報システムや情報管理の担当者に確認することがあります。
既存の規程や契約との関係を確認したい場合は、法務や管理部門との相談が必要になることもあります。どの部門が最終的な役割を持つかは会社ごとに違うため、本記事では断定しません。
方針と体制の話は別の記事へ渡す
利用ポリシーは、方針や体制のすべてを説明する文書ではありません。公平性、透明性、人の関与などを組織としてどう考えるかは、責任あるAIの考え方も参考になります。
ALSOKの公開ポリシーは、人間の関与や従業員教育を同社の方針として掲げています。自社で同じ項目を採るかどうかは、利用場面と意思決定の重さを確認して決めます。
AI利用ポリシーは作った後にどう運用しますか

文書を置くだけでは、利用者が対象範囲や相談先を知るとは限りません。公開する場所、説明する機会、質問の受け皿を決めて、実際の業務で参照できる状態にします。
経済産業省・総務省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIに関わる人への教育・リテラシーの確保や、情報を文書化して参照可能な状態にすることを挙げています。社内のポリシーでも、読まれる場所と質問できる経路を考える理由になります。
周知と質問を業務に結びつける
周知では、文書のURLを知らせるだけでなく、どの業務で見直すか、迷ったらどこへ聞くかを伝えます。利用者が具体例を持ち寄れるようにすると、文書に書かれていない場面を把握しやすくなります。
業務でAIを使うために必要な判断力は、ツールの操作だけでは足りません。AIリテラシーとはで、業務で判断できる力としての考え方を確認できます。
変化を見て見直す
利用するAIサービスの条件、社内で扱う情報、対象業務は変わることがあります。NISTはAIリスク管理の枠組みを任意利用のものとして示し、組織の目標や優先順位に沿ったリスク管理を説明しています。
そのため、見直す時期を一律に決めるより、新しい製品を使い始めるとき、入力する情報が変わるとき、質問や例外が増えたときに、文書を確認する流れを用意します。更新した内容と理由を残すと、利用者への説明にも使えます。
まとめ

AI利用ポリシーは、社内でAIを使ってよい範囲と、迷ったときの確認先を示す文書です。完成したひな形を選ぶ前に、対象業務、扱う情報、利用するAIサービスの案内を分けて確認します。
作成には、利用する人と情報・規程を確認する人が必要な範囲で関わります。作成後も、周知、質問、条件の変化に応じた見直しを続けることで、業務で参照できる文書になります。
AIを業務で使う範囲を整理したい企業の方へ
利用ポリシーは、使う業務、扱う情報、利用する製品の条件を分けて確認すると、社内で話し合う論点をそろえやすくなります。導入の進め方や社内への定着を具体化したい場合は、お問い合わせはこちらからご相談ください。
この記事の出典
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)(経済産業省・総務省、最終更新2026年4月1日、2026年9月15日確認)
- テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)(デジタル庁、最終更新2025年6月6日)
- AI Risk Management Framework(National Institute of Standards and Technology)
- OpenAI におけるエンタープライズプライバシー(OpenAI、更新2026年1月8日)
- AI利用ポリシー(ALSOK)
この記事は役に立ちましたか?
感想は、今後の記事改善に活用します。
関連記事

文字起こしAIとは?仕組み・精度の見方と業務で確認したいこと
文字起こしAIは、会議や動画などの音声を文字にする技術です。音声認識との関係、Google Cloud Speech-to-Textの資料で説明される認識結果に関わる条件、保存先や共有範囲など会社で使う前に確認したい点を整理します。

社内AIチャンピオンとは?現場でAI活用を広げる人の役割と、任せる前に考えること
社内AIチャンピオンは呼び方や範囲が会社で異なります。本記事では、現場のAI活用を支え、事例や質問をつなぐ役割として整理し、任せる前の論点を解説します。

FAQボットとは?よくある質問への回答を自動化する仕組みと、資料・確認・有人対応の考え方
FAQボットは、よくある質問への回答を自動化する用途です。チャットボットとの違い、元になる資料の整え方、回答の確認、有人対応へ引き継ぐ場面を、会社で検討する順番に沿って解説します。

承認フローとは?AIの出力を業務で使う前に決めること
承認フローとは、AIの出力を業務で使う前に、誰が何を確認して通すかを決める手順です。置き場所、確認項目、負担を増やしすぎない見直し方を整理します。
次のAIツール選びへ
気になるツールを並べて、料金や特徴の違いを確認できます。


