シャドーAIとは?無許可のAI利用の実例と、禁止だけに頼らない防ぎ方

社内で誰かが、会社の許可を得ずに無料の生成AIツールを使っている――そんな気配を感じたことはないでしょうか。
自分自身が、業務の下書きに個人のAIアカウントを使ってしまっている場合もあるかもしれません。
こうした状態は「シャドーAI」と呼ばれ、実は多くの会社で起きています。どのくらいの規模で起きているのか、感覚だけでは判断できません。
この記事では、国内の調査データと実例をもとに、シャドーAIの実態と、禁止だけに頼らない防ぎ方を整理します。
禁止するだけでは、実は防ぎきれないんです。
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
シャドーAIとは、会社が把握・許可していない状態でのAI利用のこと

シャドーAIとは、会社が把握・許可していない状態で、従業員が生成AIツールを業務に使うことです。
大きく分けると2つのパターンがあります。会社の端末で、情報システム部門が承認していないAIツールを使うケースです。
もう1つは、私物のスマートフォンやパソコン、個人のAIアカウントで、業務のデータを扱うケースです。
どちらも、悪意があって行われるとは限りません。業務を早く終わらせたい、便利だから使いたいという理由で、ルールが追いつかないまま広がっていきます。
AIガバナンスが会社の中でまだ整っていない、あるいは現場まで行き渡っていないときに、シャドーAIは起きやすくなります。
実際どのくらい起きているのか

「うちの会社は大丈夫」と思うかもしれません。しかし国内の調査では、シャドーAIは多くの職場で起きていることが分かっています。
国内調査が示す規模
株式会社エルテスが2026年1月に実施した調査(会社員・公務員300名対象)では、34.3%が業務で生成AIを利用していました。
そのうち約5人に1人(20%)が、会社が許可していない生成AIツールを使っていると回答しています。
同じ調査で、45%が「会社に生成AI利用の規程がない」、26.7%が「わからない」と回答しました。7割以上が自社のルールの有無をはっきり把握できていません。
ガートナージャパンの調査(2026年6月発表)によると、国内企業の73%がシャドーAIを把握できていない(43%)か、把握していても対策が取れていない(30%)状態にあります。
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威2026」組織編でも、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出され3位に入りました。
実際に起きた事例
Samsung電子は2023年3月、社内でChatGPTの利用を許可した後、約20日間で3件の情報流出が起きました。半導体設備のソースコードや会議音声の文字起こしなどが該当します。
緊急のプロンプト文字数制限、その後の利用禁止へと方針を転換しています。
この事例は「無許可で使っていた」のではなく、「許可はしたが、何を入力してよいかのルールが決まっていなかった」ケースです。シャドーAIとは少し性質が異なります。
ただし、ルールを決めないまま利用を広げると同じリスクが起きる例として参考になります。
Amazonや米国の大手金融機関数社も2023年、社員が生成AIに機密情報を入力することを懸念し、利用を制限しました。
なぜ「禁止するだけ」では防げないのか

シャドーAIへの対応というと、まず「使用禁止」を思い浮かべるかもしれません。しかし調査結果を見る限り、禁止だけでは防ぎきれない実態があります。
先ほどのエルテス調査では、「非公開情報のアップロードに抵抗がある」と答えた75.8%のうち、64.1%が実際にはアップロードしていました。
抵抗感を持ちながらも、行動はそれに伴っていません。ルールを作って「禁止」と伝えるだけでは、現場の行動までは変わらない場合が多いということです。
私物の端末やアカウントでの利用は、会社側から見えにくいという事情もあります。禁止のルールがあっても、実際に守られているかを確認しづらいのです。
日経クロステックの報道では、専門家(GMO Flatt Security)が「私用端末の利用の方がリスクが大きい」と指摘しています。会社が統制できない環境ほど、事故対応も難しくなりやすいとされています。
「禁止する」というルールを作ることと、それが実際に守られることの間には距離があります。次に、その距離を埋める進め方を見ていきます。
禁止以外にできる、現実的な管理の進め方

シャドーAIへの現実的な対応として、実務では「可視化」「許可制への転換」「統制と定着」という3段階がよく紹介されています。
これで完全に防げるわけではありません。ただし、禁止だけに頼るよりは現実的な出発点になります。
1. まず可視化する
対策を決める前に、実際にどんなAIツールが、どのくらい使われているかを把握します。
専任部署がなくても取り組みやすいのが、従業員への匿名アンケートです。責める前提ではなく、実態を尋ねる形にすると答えやすくなります。
2. 「禁止」ではなく「安全な使い道」を用意する
現状を把握したら、一律禁止ではなく、安全に使える選択肢を用意することが実務ではよく勧められています。
たとえば、入力内容が学習に使われない設定の法人向けAIサービスを用意し、他のツールとの違いを従業員に説明します。
ツールを「使ってよい」「条件付きで使える」「使ってはいけない」の3段階に分けて周知すると、現場が判断しやすくなります。
何を入力してよいか・だめかも、具体的な情報の種類で示すと伝わりやすくなります。
3. 統制と定着を続ける
一度ルールを整えて終わりにしません。既に使っている社内システムのセキュリティ機能でできる範囲の確認から始めます。
必要に応じて、専用の監視ツールを段階的に追加していきます。定期的な研修で「なぜ気をつける必要があるのか」を伝え続けることも欠かせません。
この3段階は、AIガバナンスの記事で扱った「誰が決め、誰が確認し、誰が止めるか」という体制づくりの一部でもあります。
シャドーAIへの対応だけを切り出すのではなく、会社全体のAI利用ルールの一部として位置づけると、継続しやすくなります。
会社全体のルール作りが必要なときは

ここまで、シャドーAIという一つの問題に絞って整理してきました。
実際にルールを整えるときは、AI利用全体の責任者や、入力してよい情報の線引きなど、より広い範囲を決める必要が出てきます。
会社としてAI利用のルールをどこから整えればよいかは、AIガバナンスとは?AI利用で「誰が決め、誰が確認するか」を整える仕組みで詳しく解説しています。
AIの回答をそのまま信じてよいかという点は、ハルシネーションの記事も参考になります。
シャドーAIについてよくある質問

シャドーAIは悪意のある行為ですか
多くの場合、悪意によるものではありません。業務を早く終わらせたい、便利だから使いたいという理由で広がるケースがほとんどです。
ただし、結果として情報漏えいなどのリスクにつながる点は変わりません。
生成AIを全面禁止すれば安全ですか
調査結果を見る限り、禁止だけでは防ぎきれない実態があります。抵抗感を持ちながらも実際には使ってしまう、というギャップがあるためです。
可視化したうえで、安全な使い道を用意する方が現実的です。
何から始めればいいですか
まずは、社内でどんなAIツールがどのくらい使われているかを把握することから始めます。
匿名アンケートなど、責める前提ではない形で実態を確認すると取り組みやすくなります。
まとめ

シャドーAIとは、会社が把握・許可していない状態で、従業員が生成AIツールを業務に使うことです。
国内調査では、生成AI利用者の約5人に1人が会社の許可外のツールを使っています。非公開情報のアップロードに抵抗を感じながらも、実際にはアップロードしてしまう人が多いというギャップもあります。
「全面禁止」だけでは、こうしたギャップを埋めきれません。まず実態を可視化し、禁止ではなく安全な使い道を用意し、統制を続けて定着させる進め方が、現実的な出発点になります。
自社のシャドーAI対策やAI利用ルール全体の整備をどこから始めればよいか整理したい場合は、お問い合わせはこちらからご相談ください。
この記事の出典
- 【実態調査】生成AI利用者の約5人に1人が「シャドーAI」リスク(株式会社エルテス、2026年1月19日公表)
- 企業の7割超がシャドーAI対策できず、放置で情報漏洩・法令違反のリスクも(日経クロステック、ガートナージャパン2026年6月発表の調査を報道)
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](IPA、2026年3月公表)
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