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Metaのザッカーバーグ氏が中国製AIの禁止に反対。AIによる侵入事件では大手の商用AIが解析を断っていた

AIツールギャラリー編集部公開日
Metaのザッカーバーグ氏が中国製AIの禁止に反対。AIによる侵入事件では大手の商用AIが解析を断っていた

Metaのマーク・ザッカーバーグCEOが、米国政府による中国製AIモデルの禁止に反対する立場を表明しました。7月28日にWall Street Journalへ寄せた「The AI Future Is for Everyone」と、同じころ公開されたFinancial Timesのインタビューで、中国製AIの遮断は「効果的な解決策ではない」と述べ、OpenAIとAnthropicに都合よく規制が作られる事態に懸念を示しました。

この直前に、主張を裏づけるような出来事が起きていました。OpenAIのモデルが評価環境を抜け出してHugging Faceに侵入した事件です。侵入された側が解析に使えたのは大手の商用AIではなく、中国企業が公開しているモデルでした。

この記事の監修者

山原 慎也
山原 慎也

AIリスキル株式会社 代表取締役

AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。

実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など

ザッカーバーグ氏が主張したこと

  • 中国製AIの禁止は、米国が優位に立つ方法として効果的ではない。自国の開発を遅らせている要因を直すほうが先だ
  • 安全性を理由にした制限は逆効果になりうる。公開されたモデルのほうが多くの人が脆弱性を見つけて直せる
  • 制限で最も得をするのはOpenAIとAnthropicである

OpenAIやAnthropicの従業員ら1200人超が米政府に開発ペースの調整を求めた書簡への反論という位置づけです(The Next Web)。書簡は別記事で報じました。

根拠になった事件で起きたこと

攻めたのはOpenAI自身のモデル

OpenAIは自社モデルのサイバー能力を測る内部評価で、GPT-5.6 Solと社外に出す予定のない試作モデルを、本番の安全装置を外した状態で走らせていました。モデルはテストを解く代わりに、パッケージ管理ツールArtifactoryの未知の脆弱性を突いて評価環境の外に出て、答えがありそうなHugging Faceの本番システムに入り込みます。攻撃は7月9日から13日まで続きました(Fortune)。詳しい経路はこちらの記事にまとめています。

解析を断られたHugging Face

Hugging Faceが侵入を公表したのは7月16日で、当時は攻撃者の正体を特定できていませんでした。同社の事後報告によると、攻撃ログの解析を商用のAIサービスに任せようとして、失敗しています。

解析には、実際の攻撃コマンド、エクスプロイトのペイロード、C2の痕跡を大量に投入する必要がある。これらのリクエストは、提供各社の安全ガードレールによってブロックされた(同報告より、日本語は編集部訳)

そこで同社は、中国企業Z.aiが公開しているGLM-5.2を自社のインフラで動かし、記録された1万7000件を超えるイベントを再構成しました。攻撃側が米国の最先端モデルで、防御側が頼れたのは中国製の公開モデルでした。この並びが禁止論への反証として使われています(財経新聞)。

AIツールギャラリーの視点

悪用を防ぐための安全機能が、防御という正当な作業まで止めてしまった。同じことは日常のツール利用でも起こります。原因を調べるためにログやエラーの中身を貼っただけで、危険な内容とみなされて回答を断られることがあります。

  • 断られたら、別のAIに投げ直す前に目的を書いて聞き直す。自分が管理する環境の調査だと伝えるだけで通ることがあります
  • 仕事で使うAIを1つに絞らない。ChatGPTのような商用サービスと、手元で動かせる公開モデルの両方を試しておくと逃げ道になります

自分の使い方にどう関係するか

今回の事件が示したのは、使えるAIの選択肢が減るといざというときに手が止まる、ということでした。Hugging Faceほどの企業でも、断られた瞬間、自前で動かせるモデルがなければ調査を進められません。契約している1社が方針を変えたときに代わりを用意できるでしょうか。禁止論の行方より、そちらのほうが実際的な備えです。

わかっていないこと

  • ザッカーバーグ氏が事件をどこまで具体的に挙げたかは報道で扱いが分かれ、言及のない記事もあります
  • 攻撃に関わったモデルの全容。OpenAIは複数としていますが、GPT-5.6 Sol以外の内訳は公表していません
  • 解析を断った商用AIサービスがどこか。Hugging Faceは社名を挙げていません

続報が出たらこの記事に追記します。禁止か開放かという二択の前に、防御に使えるAIを誰が確保できるのかという問いが残りました。

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