AIツールギャラリー

中国軍の部隊がOpenAIのAIから215万件の回答を集め、自前の小型AIを訓練していた

AIツールギャラリー編集部更新: 2026年9月18日
中国軍の部隊がOpenAIのAIから215万件の回答を集め、自前の小型AIを訓練していた

中国人民解放軍の部隊に所属する研究者が、OpenAIの「GPT-3.5」から215万件の回答を集め、そのデータで自前の小型AIを訓練していたことがわかりました。ロイターが2026年7月31日に独占記事として報じたもので、米ジェームズタウン財団のデータをもとに中国の学術論文と特許80件超を精査した結果です。

ただし中身は、最先端AIを丸ごとコピーしたという話ではありません。能力をひとつだけ切り出し、家庭用のグラフィックボード1枚で動く大きさに詰め直した、という地味な作業です。

この記事の監修者

山原 慎也
山原 慎也

AIリスキル株式会社 代表取締役

AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。

実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など

何が確認されたのか

215万件の要約から単一GPUで動くモデルへ

事例は、北京の軍事情報・サイバー戦部隊とされる人民解放軍第96941部隊の研究者が2025年7月に公開した論文です。論文を直接検証したXenoSpectrumによると、公開データセットのJavaコードをGPT-3.5に読ませて要約を215万件集め、3億5000万パラメータの小型モデルを10.5時間で訓練しました。動作には16GBの消費者向けGPUが1枚で足ります。動機に挙げられているのは、機密性の高いソースコードを外部のAIへ送ることの漏えいリスクです。

研究の段階と実戦配備は分けて読む

もう一方の例は、中北大学の研究者が2025年に発表した論文です。AnthropicのClaude 3 Haikuで小型の分類モデルを作ったもので、抄録はソーシャルメディア監視への応用可能性に触れますが、軍や警察へ納入したとは書かれていません。ジェームズタウン財団自身も、中国の学術誌は出版まで1年から2年かかると断っています。

氷山の一角に過ぎず、現在進行中の実態ではなく公開された研究から確認できた過去の事例にすぎない

蒸留はAIの答えでAIを育てる手法

大きなAI(教師)に大量の質問を投げ、返ってきた答えを教材にして小さなAI(生徒)を訓練する手法を蒸留と呼びます。技術そのものは正当ですが、問題になるのは持ち主が許可していない場合です。OpenAIもAnthropicも、自社の出力を他社モデルの訓練に使うことを規約で禁じています。中国科学院の研究チームが各社のモデルに自分をどのようなモデルだと認識しているか尋ねた実験では、次の回答が返ったとされています。

  • Alibabaの「Qwen-Max」は、Anthropicが作ったClaudeだと答えた
  • DeepSeekの「DeepSeek-V3」は、OpenAIが作ったと答えた

もっとも、この自己申告だけで蒸留が証明されるわけではありません。他社モデルの会話が学習データに混ざっただけでも、同じ答え方をすることがあります。

規約違反から国家安全保障の問題へ

先に数字を示したのはAnthropicです。同社は2026年2月23日の報告で、DeepSeek、Moonshot AI、MiniMaxの3社が約2万4000の不正なアカウントでClaudeと1600万回を超えるやりとりを行ったと発表しました。第三者の監査で確定した数字ではなく、同社による帰属です。

AIツールギャラリーの視点

  • 機密情報を外部のAIにそのまま貼らない判断は、軍の研究者ですら取っています。社内コードや顧客情報は、どこまで外に出すかの線を先に決めておくと安全です
  • 中国製モデルは、名乗る開発元と実際の開発元が食い違う場合があると知っておくと出力を落ち着いて扱えます。DeepSeekのように日本から使えるモデルは増えています
  • 出力を他のAIの訓練に使わない規約条項は個人にも適用されます。用途ごとの選び方はChatGPTとClaudeとGeminiの比較記事にまとめてあります

わかっていないこと

研究成果が実際の装備や部隊の運用に組み込まれたのかは、公開論文からわかりません。中北大学のモデルが軍や警察へ納入された記録も公開資料にありません。

自分の使い方に何が関係するか

いちばん実務的だったのは、軍の研究者の悩みが多くの読者と同じだった点です。外部のAIは便利だが、機密を含む中身をそのまま送りたくない。だから外部のAIには公開データで教材だけ作らせ、作業は手元で終える。この順番は社内文書やコードを扱う人が参考にできます。

続報が出たらこの記事に追記します。残る問いは、出力そのものを守る手段が規約と監視のほかにあるのかどうかです。

この記事の出典

関連AIツール

この記事は役に立ちましたか?

感想は、今後の記事改善に活用します。

関連記事

シャープが9月からAIサーバーの受注開始。NVIDIAのGPUを積んだ機械を自社ブランドで国内販売へ
ニュース2026年9月5日

シャープが9月からAIサーバーの受注開始。NVIDIAのGPUを積んだ機械を自社ブランドで国内販売へ

シャープが8月7日の決算説明会で、AIサーバー事業の受注を9月に始めると発表しました。NVIDIAのGPUを載せた機械を自社ブランドで国内向けに売ります。同じ日に通期の純利益見通しは170億円下方修正されました。

GoogleがAI部門トップを刷新。DeepMindのハサビスCEOは会長へ、ジェフ・ディーン氏は27年で退社
ニュース2026年8月31日

GoogleがAI部門トップを刷新。DeepMindのハサビスCEOは会長へ、ジェフ・ディーン氏は27年で退社

Googleが8月5日、AI部門トップの刷新を発表しました。DeepMindのハサビスCEOは会長へ退き、後任にカヴクチオグル氏が昇格。在籍27年のジェフ・ディーン氏は退社して新会社を設立します。

OpenAIがプレゼン作成AIのNextSlideを買収。チームはChatGPTの開発に合流
ニュース2026年8月30日

OpenAIがプレゼン作成AIのNextSlideを買収。チームはChatGPTの開発に合流

OpenAIがプレゼン資料の作成AIを手がける米NextSlideを買収し、チームがChatGPTの開発に合流しました。買収は今年すでに完了しており、発表が数カ月遅れたとされます。買収額は非公表です。

Grokの画像生成が「Imagine Image 2.0」に刷新。狙った場所だけ直せる編集を武器にランキング世界2位
ニュース2026年8月27日

Grokの画像生成が「Imagine Image 2.0」に刷新。狙った場所だけ直せる編集を武器にランキング世界2位

xAIが8月7日、画像生成AIの新モデル「Imagine Image 2.0」を公開しました。狙った場所だけを直せる編集機能が売りで、ArenaランキングではOpenAIのGPT-Image-2に次ぐ世界2位です。

次のAIツール選びへ

気になるツールを並べて、料金や特徴の違いを確認できます。