ChatGPT Enterprise活用事例|2名のAI部門から始まった全社導入、月12,500時間を削減したZenkenの1年半

Zenkenは2024年11月、国内で初めてChatGPT Enterpriseを全社員に導入したと発表しました。この規模の展開を支えたAI部門は、2024年1月の始動時から2名のままです。
人を増やさずに広げられたのは、対象を広げる順番を設計していたからです。最初に何人を対象にするか、次にどの単位で広げるか、外部の支援をどこまで前提に置くか。この3点で運用の負荷を抑えています。
この記事では、2023年のChatGPT Plus利用開始から全社員導入までの1年8か月を追い、少人数で回すための工夫を見ていきます。読み終えると、自社で最初に区切る範囲が決まります。
記事の最後には、自社で着手する業務を選ぶためのワークシートもご用意しています!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
Zenkenで実際に何が起きているか
導入後の社内アンケート(有効回答380件)では、月間約12,500時間の工数削減と平均約2倍の生産性向上が確認されています。2024年通年では外部委託費用が前年比で約5,000万円減りました。
AI部門が2名だったことは、2024年1月の始動時から少なくとも2025年5月時点まで公式ブログで確認できます。
Zenkenは、マーケティング・海外人材・不動産の3つの事業を展開する1978年設立の企業です。ChatGPT Enterpriseへの全社移行は、ある日突然決まったものではなく、1年8か月ほどかけて段階的に進められました。
2023年3月〜2024年7月、段階的に対象を広げた1年4か月
きっかけは2023年3月のGPT-4登場でした。ここからZenkenはChatGPT Plusの利用を始めています。
本格的な体制づくりが動き出すのは2024年1月で、社内にAI部門が立ち上がり、150名からChatGPT活用を始めました。この時点でAI部門の人員は2名です。
対象はここから徐々に広がります。2024年7月には、営業職の全員にアカウントが付与されました。
全社の一部署をまるごと対象にすることで、特定の業務にどう根づくかを見極める段階だったと考えられます。
2024年11月、国内初の全社員導入
そして2024年11月、ZenkenはChatGPT Enterpriseを全社員に導入したと発表しました。
プレスリリースでは「特定の部署における生成AIの活用事例はありますが、企業の全社員に『ChatGPT Enterprise』を導入するのは当社が国内初となります」としています。
導入にあたってはOpenAI社のサポートを受けながら、現場から経営層まで全員のAI活用スキル向上に取り組んでいるとも説明されています。
このタイミングより前に対象となっていた社員へのアンケートでは、99%が「業務効率の向上を実感した」と回答しており、全社展開の判断材料になったとみられます。
なぜ段階を踏んだのか
Zenkenの展開が学びになるのは、「AI部門2名・全社員450名」という体制の小ささよりも、いきなり全員に配らなかったという順番の設計にあります。
150名という規模から始め、次に営業職という業務内容がまとまった1つの部署に広げ、そのうえで全社員という流れは、少人数の運用チームが対応できる範囲を段階的に押し広げていく設計だと見ることができます。
最初から数百人規模に配布していたら、問い合わせやサポートの量がAI部門のキャパシティを超え、活用が定着する前に運用が行き詰まっていた可能性があります。
150名、次に営業職全員という区切りは、AI部門が問い合わせ対応やノウハウの整理に追いつける規模を保ちながら、成功パターンを社内に蓄積していく期間だったといえます。
2名の体制でも運用が破綻しない理由
「AI部門が、少なくとも2025年5月時点までは2名のまま」と聞くと、無理に少人数で回しているように見えるかもしれません。ですが、Zenkenのプロセスを見ると、増員に頼らずに規模を広げられた理由が段階設計そのものにあることがわかります。
対象を広げる順番を設計した
前述の通り、150名→営業職全員→全社員という順番自体が、サポート負荷をコントロールする仕組みになっています。
新しく対象になる社員が増えるたびに、AI部門がゼロから対応方法を考えるのではなく、直前の段階で得た知見を次の対象に転用できる状態を作っていたと考えられます。
OpenAIのサポートを受けながら進めた
Zenkenの発表では、OpenAI社のサポートを受けながら展開を進めた旨が明記されています。
具体的な支援内容までは公表されていませんが、社内のAI部門だけで全てを内製する体制ではなく、ツール提供元との連携を前提に置いていたことは、少人数のまま規模を広げられた一因と考えられます。
なお、工数削減や生産性向上などの数値はいずれもZenken自身が実施した社内アンケート(有効回答380件)に基づくもので、外部機関による監査を経た数値ではありません。
また、AI部門の人数(2名)と支えている社員数(450名)は、いずれもZenken公式のAI部門ブログが2025年5月時点で示している数値であり、現在の体制と完全に一致するとは限りません。
導入にかかった費用やライセンス条件についても、今回確認した発表の範囲では公表されていません。
何から始めればいいか
Zenkenの事例が示しているのは、全社導入を目指す前に、まず「どの範囲から始めるか」を決めることの重要性です。自社でChatGPT Enterpriseの導入を検討する場合も、いきなり全社員を対象にする必要はありません。
まずは特定の部署、あるいは業務内容がまとまった一部のチームを対象に試し、そこで出てきた質問やつまずきを記録しておくことが次の一歩になります。その記録が、対象を広げる際にAI部門(あるいは推進担当者)が使い回せる知見になります。
Zenkenの場合、150名からの試行と営業職全員への展開という2段階を経てから全社に広げており、いきなり全社展開を目指すよりも、対応にかかる負荷を見積もりやすいやり方だといえます。
料金プランや導入時に必要な要件は、ツール詳細ページで随時最新情報を確認できます(ChatGPTの詳細ページ)。
まとめ: 全社導入に必要なのは増員ではなく順番の設計
ChatGPT Enterpriseの全社導入は、AI専任チームを大きくすることが前提ではありません。
Zenkenは2023年のChatGPT Plus利用開始から2024年11月の全社員導入まで、AI部門を2名のまま、対象を150名→営業職全員→全社員という順番で広げ、結果として月間約12,500時間の工数削減、年間約5,000万円の外部委託費用削減という成果につなげています。
自社での導入を検討する際は、次の点を確認しておくと迷いにくくなります。
- いきなり全社を対象にせず、最初に試す範囲(部署・チーム)を決められているか
- 最初の対象で出てきた質問やつまずきを、次の対象に引き継げる形で記録する仕組みがあるか
- 対象を広げるタイミングの目安(人数や期間)を決めているか
- 社内担当だけで抱え込まず、ツール提供元のサポートを活用する前提を持てているか
ChatGPT Enterpriseに限らず、自社にとって最初に試す範囲をどう区切るべきか、段階的な展開をどう設計すればよいかを含めて相談したい場合、AIリスキル株式会社では生成AIの導入支援を行っています。
「全社に配る前に、まず何から試せばいいかわからない」「少人数の体制でどこまで広げられるか知りたい」といったご相談は、お気軽にどうぞ。
この記事の出典
- Zenken、国内で初めて「ChatGPT Enterprise」を全社員に導入!(Zenken株式会社、2024年11月26日)
- Zenken、ChatGPT Enterprise全社員導入で年5,000万円の外部委託費用削減を実現!(Zenken株式会社、2025年4月24日)
- ZenkenのChatGPT Enterprise全社員導入までの道のり(Zenken AI(Zenken株式会社公式AI部門ブログ)、2025年5月15日公開・2026年5月1日更新)
- 会社概要(Zenken株式会社公式サイト)
- 沿革(Zenken株式会社公式サイト)
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