AppleがアリババのAI「Qwen」をMacのSiriにつなぐ手順書を中国で公開、1日足らずで削除

Appleが8月8日、中国本土のMacユーザー向けに、アリババの生成AI「Qwen(通義千問)」を音声アシスタントのSiriと作文ツールにつなぐ中国語のサポート文書を公開しました。ロイターが最初に発見し、MacRumorsなどが後追いで報じています。ところがこの文書は、公開から1日足らずの8月9日までにAppleのサイトから削除されました。
中国ではApple Intelligenceがまだ正式に提供されていません。今回の「公開して即削除」は、水面下の準備が具体的な段階まで進んでいることを図らずも示した形です。
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
手順書には何が書かれていたのか
削除前の文書によると、対象はmacOS 26.6以降を搭載したMacで、利用者が自分のQwenアカウントにサインインして有効にするオプトイン方式です。説明されていた内容は次のとおりです。
- Siriが直接答えられない込み入った質問を、写真や書類の分析を含めてQwenに引き継いで回答させる
- 作文ツールでは、文章での指示からテキストや画像を生成できる
- 送信した内容をアリババがAIモデルの学習や改善に使うことは禁止と明記
この仕組みは、中国以外の地域でSiriに組み込まれているChatGPT連携とほぼ同じ構造です。iPhoneやiPad向けの同様のガイドは公開されていません。
なぜ1日で消えたのか
中国のニュースサイトReadHubが文書の消失を伝えたほか、AppleInsiderによると、Appleのカスタマーサポートは中国メディアに次のように回答したと報じられています。
機能や新しいプロジェクトが始まるときは事前に通知を受けます。そのような通知は受けておらず、Apple IntelligenceとQwenを統合する機能は中国本土ではまだ提供されていません。
一方でテックアナリストのLiu Dingding氏は環球時報に対し、削除は撤回ではなく、規制手続きに伴う技術調整の可能性があると述べています。
前例もあります。2026年3月にはApple Intelligence自体が中国の一部ユーザー向けに一時有効になり、当局の承認がないまま公開された形となってすぐ停止されました。中国では生成AIの提供に当局の承認が必要で、海外企業は実質的に現地企業との提携を求められます。
規制面では前進もあります。7月には中国の規制当局であるサイバースペース管理局(CAC)が、Qwenを組み込んだAppleのAIサービスを承認したとTechCrunchなどが報じました。ただしこの承認の対象はiPhoneのみと報じられており、今回の手順書はMac展開の時期を示す現時点で最も具体的な手がかりといえます。
AIツールギャラリーの視点
今回の動きの本質は、Siriが「自前で答えられないことを外部のAIに引き継ぐ」設計を、地域ごとに相手を替えながら広げている点にあります。中国以外の多くの地域ではその相手がChatGPTで、中国ではQwenになる構図です。お使いの環境でApple Intelligenceが利用できるなら、設定からSiriのChatGPT拡張を有効にすると、今回中国向けに用意されていたものと同じ型の連携を試せます。
引き継ぎ先となるQwenがどんなAIなのかは、記事「AlibabaがQwen3.8-Maxを発表」で紹介しています。
わかっていないこと
Macでの正式な提供開始時期、iPhoneとiPad向けの扱い、そして文書が削除された正確な理由は、いずれも現時点で公表されていません。今回の一時公開が近い提供開始を意味するのかどうかも不明です。
次に手順書が再公開されるとき、それは正式リリースの合図になるのでしょうか。続報が出たらこの記事に追記します。
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