マルチエージェントとは?単一エージェントとの違いは「役割を分けて協働する」こと|向く場面と分けない方がよい場面

マルチエージェント(Multi-Agent System)とは、1つの依頼をAIエージェント1体だけで処理するのではなく、複数のAIエージェントに役割を分けて動かす仕組みのことです。
Manusの「Wide Research」やAnthropicの調査機能の説明で「複数のエージェントが並列に動く」という記述を見て、1体でやるのと何が違うのか気になった方もいるはずです。
単一エージェントとの違いと、複数に分けたときに初めて出てくる論点を、実際の製品と一次資料の数字で整理します。
「複数にすれば賢くなる」とは限らないので、向く場面と向かない場面を先に押さえておきましょう!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
マルチエージェントとは、1つの依頼を複数のAIエージェントに分けて動かす仕組み

マルチエージェントは、1つのタスクを複数のAIエージェントで分担して処理する構成を指します。
代表的な形は、依頼全体を把握するリード役のエージェントが仕事を分解し、それぞれの部分を専門化したサブエージェントへ割り振るというものです。
Anthropicはこの構成を「オーケストレーター・ワーカー方式」と呼んでいます。リード役が依頼を分析してサブエージェントを並列に生成し、各サブエージェントが独立してツールを使い、結果をリード役に返す流れです。
大事なのは、「マルチエージェント」という言葉自体は特定の1製品の機能名ではなく、この役割を分担し、結果を受け渡して協働させる構成そのものを指す言葉だという点です。
並列に実行するかどうかは、独立したサブタスクに分けられるときに選べる代表的な方法の1つで、必須の条件ではありません。実装の仕方は製品やフレームワークによって変わります。
単一エージェントとの違いは「役割を分けて協働すること」

AIエージェントは、手順を自分で決めて動くAIのことでした。1体のエージェントが計画を立て、ツールを使い、結果を確認しながら次の一手を決めます。
マルチエージェントとの違いは、この一連の流れを1体で最初から最後まで抱えるか、複数体に分けるかという点にあります。
- 単一エージェント: 1つの文脈(コンテキスト)の中で、計画から実行、確認までを順番にこなす
- マルチエージェント: 依頼を複数の部分に分け、それぞれ別の文脈を持つエージェントに役割を割り振り、結果を受け渡しながら進める(独立した部分は並列に処理させることもできる)
Agentic AIという語が「AIエージェントらしさ」の度合いを指すのに対して、マルチエージェントは体数と役割分担という構成の話です。似た文脈で使われますが、指している対象が違います。
具体例:メインエージェントが仕事を配り、結果を集める

具体的にどう動くのか、公開されている2つの例で見てみます。
Manusの「Wide Research」という機能では、メインのエージェントが依頼を独立したサブタスクに分解します。それぞれを専用のエージェント(各自が独立したコンテキストウィンドウを持つ)に割り当てて同時に実行する仕組みです。
最大20個のサブタスクを同時に走らせられ、250件までの処理でテスト済みとされています。これはManusという1製品の仕様であり、他のマルチエージェント製品が同じ上限を持つとは限りません。
CrewAIというフレームワークには、実行方式が2つ選べます。
エージェントを順番に実行する「Sequential Process」と、マネージャー役のエージェントが各エージェントの役割・能力に応じてタスクを割り振り、成果物を検証する「Hierarchical Process」です。
マネージャー方式は、CrewAIというフレームワークが用意している選択肢の1つであり、マルチエージェントの唯一の実装方法ではありません。
複数に分けると何ができるようになるのか

複数のエージェントに分けることで、次のようなことができるようになります。
並列に処理できることです。1体のエージェントが順番にこなしていた作業を、複数のエージェントが同時に進められます。Manusの例では、最大20個のサブタスクが同時に走ります。
それぞれが自分だけの文脈を持てることも違いです。1体のエージェントに大量の情報を読ませ続けると、扱える情報量の上限(コンテキストウィンドウ)にすぐ達してしまいます。
サブタスクごとに別の文脈を割り当てれば、この上限に個別にぶつかることになります。1体に情報を詰め込むよりも、多くの範囲を同時に見られるようになります。
Anthropicは、Opus 4をリード役、Sonnet 4をサブエージェントにした構成で、社内の調査系の評価において単一のOpus 4より90.2%上回ったと報告しています。
ただしこれはAnthropicの内部評価・この特定の構成に限った数字であり、あらゆるタスクや他社の構成に当てはまるとは限りません。Anthropic自身も、複数の観点を同時に探れる調査のようなタスクで効果が出たと説明しています。
複数に分けると増えるコストと調整の手間

複数に分けることは、良いことばかりではありません。Anthropicが報告している内容を見ると、次のようなコストと手間が増えます。
トークン消費が増えます。通常のチャットと比べて、エージェント1体は約4倍、マルチエージェント構成は約15倍のトークンを使うとAnthropicは報告しています。
台数を増やすほど、それだけトークン消費と費用も増えていきます!
調整の手間も増えます。Anthropicは開発の初期段階で、単純な質問に対して50個ものサブエージェントを生成してしまう過剰反応が起きたと明かしています。リソースの配分ルールをプロンプトに明記することで、この問題を抑えたそうです。
失敗が伝播しやすくなる点も指摘されています。エージェントは長時間状態を保持しながら動くため、小さな失敗が積み重なって全体に響きやすいと説明されています。Anthropicはこれに対して、失敗した地点からやり直せる仕組みを作ったとしています。
これらはいずれもAnthropicという1社の実測・実例です。「マルチエージェントは常にこれだけコストがかかる」という一律の数字ではなく、複数体に分けるという構成を選ぶと、こうした調整コストが発生しうるという理解が実態に近いです。
分けない方がよいのはどんな場合か

Anthropicは、コーディングのようなタスクは、調査に比べて「真に並列化できる作業」が少ないため、単一エージェントの方が向く場合があると述べています。
手順が前の結果に強く依存し、途中で分けて並列に進めにくい作業では、並列実行の恩恵が小さくなりやすく、調整のコストが便益を上回ることがあります。
この記述はAnthropicの記事内での一例であり、「コーディングは絶対にマルチエージェントに向かない」という断定ではありません。
目安になるのは、依頼を独立した部分に分解できるかどうかです。分解した各部分が互いの結果を必要とせずに進められるなら並列化の効果が出やすく、各部分が前の結果に強く依存するなら、分けてもかえって手間が増えることがあります。
よくある質問

マルチエージェントとエージェント(単体)の違いは何ですか
エージェント(単体)は1つの文脈の中で計画から実行までを1体でこなす仕組みです。マルチエージェントは、その一連の流れを複数の部分に分け、それぞれ別の文脈を持つエージェントに役割を割り振り、結果を受け渡しながら進める構成です。独立した部分は並列に処理させることもできます。
体数と役割分担という構成の違いであり、性能の優劣を表す言葉ではありません。
エージェントを増やせば増やすほど性能は上がりますか
上がるとは限りません。Anthropicは特定の内部評価・特定の構成で90.2%の改善を報告していますが、これは並列化しやすい調査系タスクに限った数字です。
並列化しにくいタスクにエージェントを増やすと、トークン消費や調整の手間だけが増えることがあります。
Deep ResearchやWide Researchはマルチエージェントの一種ですか
Deep Researchは調査を進めてレポートにまとめる機能そのものを指す言葉です。その裏側の実装としてマルチエージェント構成を使っている例があります。
ManusのWide Researchはその実装例の1つで、メインエージェントが依頼を独立したサブタスクに分解し、専用のエージェントへ同時に割り当てる仕組みです。ただし実装の詳細は製品ごとに異なります。
まとめ

マルチエージェントは、1つの依頼を複数のAIエージェントに分けて動かす構成のことです。単一エージェントとの違いは、役割分担と結果の受け渡しによる協働にあります。並列実行は、独立した部分に分けられるときに選べる代表的な方法の1つです。
複数に分けると、並列処理やコンテキストウィンドウの上限を個別に扱えるようになる一方で、トークン消費の増加、調整の手間、失敗の伝播といったコストも増えます。Anthropicが報告する90.2%という改善幅も、特定の内部評価・特定の構成に限った数字です。
「複数にすれば必ず賢くなる」わけではなく、依頼を独立した部分に分解できるかどうかで、マルチエージェントに向くかどうかが変わります。
まずは自分が任せたい作業が、互いに依存せず分解できる作業かどうかを見極めることが、判断の出発点になります。マルチエージェント構成を実務に取り入れるかどうかで迷ったら、お問い合わせはこちらからご相談ください。
この記事の出典
- How we built our multi-agent research system - Anthropic(2025-06-13公開、2026-09-13確認)
- What is Wide Research? - Manus Help Center(2026-09-13確認)
- Wide Research - Manus Docs(2026-09-13確認)
- Hierarchical Process - CrewAI Docs(2026-09-13確認)
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