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ナレッジグラフとは?ベクトルDBとの違いは「近さで探すか」「関係をたどるか」|GraphRAGの前提知識

AIツールギャラリー編集部更新: 2026年9月12日
ナレッジグラフとは?ベクトルDBとの違いは「近さで探すか」「関係をたどるか」|GraphRAGの前提知識

RAGやGraphRAGの資料を読んでいると、「ナレッジグラフ」という言葉に行き当たることがあります。検索基盤の比較記事で見かけることもあります。

ベクトルDBという言葉も同じような場面で出てくるため、同じ仕組みなのか、別のものなのかが分かりにくいところです。

この記事では、ナレッジグラフが何を指す言葉なのか、ベクトルDBと何が違うのか、GraphRAGとどう関係するのかを、公式ドキュメントの記述から整理します。

「近さで探す」仕組みと「関係をたどる」仕組みは、目的が違うと捉えると理解しやすくなります!

この記事の監修者

山原 慎也
山原 慎也

AIリスキル株式会社 代表取締役

AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。

実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など

ナレッジグラフとは、ものごとと関係を明示的なデータとして持つ仕組み

人物・組織・場所などの丸(ノード)が、関係を示す線(エッジ)でつながっている図

Googleは2012年、検索機能としてナレッジグラフを発表した際、これを「文字列ではなく、ものごと」を認識する仕組みだと説明しました。

同社の説明では、以前の検索エンジンがある語を単なる2つの単語としてしか扱えなかったのに対し、ナレッジグラフはその語が指す実際の建造物や人物、場所を認識し、それらの間の関係も表現するとされています。

Neo4jは、ナレッジグラフを実世界のエンティティとその関係を組織化して表現したものであり、多くの場合グラフデータベースに格納されると説明しています。

同社の説明によれば、構造はシンプルです。人や場所、モノを表す「ノード」と、ノード同士のつながりを示す「エッジ」があり、それぞれにラベルや詳細情報(プロパティ)を付けられます。

どのようにノードとエッジを構造化するかという設計(スキーマ)は、用途によって変わるとNeo4jは説明しています。

ベクトルDBとの違いは「近さで探す」か「関係をたどる」か

左に類似度で近いものを探すベクトルDB、右に関係の線をたどって答えを絞り込むナレッジグラフを並べた図

ここが最も混同しやすいところです。ベクトルデータベースは、意味の近さでデータを探す仕組みです。処理の詳細は同記事に譲ります。

グラフデータベースを提供するNeo4jによれば、ナレッジグラフは近さではなく、あらかじめ持っている関係を明示的にたどって答えを絞り込みます。

同社は、「過去12か月の役員会のうち、少なくとも2人が棄権した回はどれか」のような複数条件をたどる質問では、ナレッジグラフの方が正確な答えを返しやすいと説明しています。

同社は、ベクトルDBが類似度スコアと件数上限に頼るため、単純な質問には強い一方、複数条件が絡む質問では不完全な結果になることがあるとも述べています。

この説明はグラフデータベースを販売する立場のNeo4jによるものであり、ベクトル検索そのものの得意・不得意は同記事で扱っています。

両者は必ずしも二者択一ではありません。後の見出しで扱うAWSの実装例では、ベクトル検索とグラフをたどる処理を組み合わせています。

ナレッジベースとは何が違うのか

文書ファイルが並ぶ棚(ナレッジベース)と、丸と線でつながったグラフ構造(ナレッジグラフ)を並べて対比した図

名前が似ているため、ナレッジベースと混同されることがあります。

ナレッジベースは、社内文書などをまとめて置く場所という軸の言葉です。詳しい説明は同記事に譲ります。

Neo4jの説明にある「実世界のエンティティとその関係の組織化された表現」という軸で見ると、ナレッジグラフは置き場所ではなく、関係をどう構造化して持つかという言葉です。

ナレッジグラフは「高機能なナレッジベース」というより、データの持ち方そのものが違う仕組みだと捉えると整理しやすくなります。

検索エンジンでの使われ方

検索結果の横に、その人物や場所に関する関連情報のパネルが表示されているイメージ図

ナレッジグラフという語が広く知られるきっかけになったのは、Google検索の機能としての利用です。

Googleは2012年の発表時点で、5億以上のオブジェクトと、それらの間の35億以上の事実・関係を含んでいたと説明しています。この数字は2012年発表時点のものであり、現在の規模ではありません。

同社が挙げる例では、マリー・キュリーという人物を起点に、その子供や夫、ノーベル賞といった関連する情報が結びつけられます。

これはGoogle検索という特定の製品の機能としての説明です。生成AIが直接答えを返す検索の仕組みとは別の話であり、本記事では扱いません。

GraphRAGとの関係:前提知識と言われる理由

Microsoft ResearchのGraphRAG研究が示す、テキストの束からLLMがエンティティと関係を抽出してグラフを組み立て、そのグラフをもとに回答を生成する流れを示した図

Microsoft ResearchとAWSの説明に共通するように、GraphRAGはRAGの一種で、検索の土台としてナレッジグラフを使う仕組みです。ナレッジグラフの構造を先に理解していないと、GraphRAGが何をしているのか掴みにくいという意味で、前提知識にあたります。

Microsoft Researchは、GraphRAGについて、LLMを使って非公開のデータセットからナレッジグラフを構築し、そのグラフ構造を使って検索を行う仕組みだと説明しています。

同社の例では、情報源全体を横断してつなぎ合わせる必要がある質問に対し、通常のRAGは「テキストに具体的な情報がない」と答えたのに対し、GraphRAGは出典付きの詳細な回答を返したとされています。

一方でMicrosoft Researchは、GraphRAGが通常のRAGと同程度の忠実性(事実に沿っているか)を達成しているとも明記しています。優れているのは複数の情報源をまたぐ複雑な質問への対応力であり、事実への忠実性そのものが上回っているとは述べていません。

AWSのBedrockでは、GraphRAGはまずベクトル検索で関連するノードを取得し、そこからグラフをたどって詳細情報を集めるという処理順序で実装されています。ベクトル検索を置き換えるのではなく、組み合わせる実装です。

万能ではない理由

ナレッジグラフの構築・運用にともなう制約(構築コスト、対応データソースの限定、設定の柔軟性)を示した図

Microsoft Researchの研究では、LLMがデータセットからエンティティと関係を抽出し、ナレッジグラフを構築するという処理が行われています。

AWSのBedrock Knowledge BasesのGraphRAG機能には、いくつかの制約が明記されています。グラフ構築の設定はカスタマイズできず、対応するデータソースはAmazon S3のみで、1データソースあたりのファイル数にも上限があります。

これらはAmazon Bedrockというサービス固有の制約であり、ナレッジグラフという仕組み全般に当てはまる制約ではありません。

同ドキュメントは、複数の情報源をまたいだ根拠付けが「正確性を高め、ハルシネーションを抑えるのに役立つ」としています。防げる・なくなるとは書かれていません。

よくある質問

ナレッジグラフとナレッジベースは同じかという問いと、GraphRAGは必ず精度が上がるかという問いを並べた図

ナレッジグラフとナレッジベースは同じものですか

同じではありません。Neo4jの説明にある「実世界のエンティティとその関係の組織化された表現」という軸で見ると、ナレッジベースは文書の置き場所という軸、ナレッジグラフはものごとと関係の持ち方という軸の言葉です。

詳しい違いはナレッジベースで扱っています。

GraphRAGを使えば普通のRAGより必ず精度が上がりますか

必ずとは言えません。Microsoft Researchは、GraphRAGが通常のRAGと同程度の忠実性にとどまるとも説明しています。

優位性が示されているのは、複数の情報源をまたぐ複雑な質問への対応力であり、事実への忠実性そのものが常に上回るわけではありません。

RAG全体の仕組みはRAGで扱っています。

まとめ

Googleの2012年の発表とNeo4jの説明をもとに、ものごとと関係を明示する仕組み、ベクトルDBとは軸が違うこと、GraphRAGの前提知識であることという3つの要点を並べたまとめ図

ナレッジグラフとは、ものごとと、その関係を明示的なデータとして持つ仕組みです。Googleの2012年の発表とNeo4jの説明をもとにした定義です。

ベクトルDBとは軸が異なります。グラフデータベースを提供するNeo4jの説明によれば、近さで探すのがベクトルDB、あらかじめ持っている関係をたどるのがナレッジグラフです。AWSの例のように、両者を組み合わせる実装もあります。

ナレッジベースとも異なります。Neo4jの説明にある軸で見ると、文書の置き場所という軸と、関係の持ち方という軸の違いです。

GraphRAGは、このナレッジグラフを検索の土台に使う仕組みです。Microsoft Researchによれば、複雑な質問への対応力に優位性がある一方、事実への忠実性は通常のRAGと同程度とされています。

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