GitHub Copilot活用事例|日立製作所・200名評価で見えた生産性10〜20%の実例

GitHub Copilotの効果を組織として説明するには、感想ではなく測り方が要ります。日立製作所は約200名を対象に3〜4か月かけて評価し、コーディングと単体テストで平均10〜20%、ケースによっては30%の生産性向上を確認しました。
効いてくるのは、何を指標に選ぶか、どのくらいの期間と人数で測るか、測った結果をどう横展開へつなぐかの3点です。日立はこの順で設計しています。
この記事では、200名評価の設計と結果、そこから全社へ広げるまでに用意した仕組みを見ていきます。読み終えると、自社で効果を測る計画を組み立てられます。
記事の最後には、自社で着手する業務を選ぶためのワークシートもご用意しています!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
日立製作所は何を測り、何がわかったのか
この数字の出どころは、Microsoft公式のカスタマーストーリー(2025年3月24日公開)です。対象は社内公募した約200名でした。
この評価は2023年10月から3〜4か月かけて行われたもので、GitHub社、ビクトリア大学、Microsoft Researchのメンバーが提唱する「SPACEフレームワーク」(複数の指標を組み合わせて開発者の生産性を多角的に評価する手法)を採用しています。
同記事が公開された2025年3月時点では、自社の開発フレームワーク「Justware OSSベース」とGitHub Copilotを組み合わせ、検証用アプリケーションのコード生成率を78%から99%まで引き上げたことも報告されています。
「使ってみて良かった」という感想だけでは、組織としての投資判断には使いにくいものです。日立製作所がまず取り組んだのは、効果を客観的な指標で測ることでした。
200名・3〜4か月・複数指標での評価
日立製作所は2023年10月、GitHub Copilot活用の効果に関する社内評価をスタートしました。社内公募で約200名のユーザーを集め、3〜4か月かけて評価を実施し、この間に2回のアンケート調査を行っています。
調査の手法として採用されたのが「SPACEフレームワーク」です。
これはGitHub社、ビクトリア大学、Microsoft Researchのメンバーが提唱した調査手法で、開発者の生産性を1つの数値だけで測るのではなく、複数の指標を組み合わせて多角的に評価する点が特徴です。
アンケートでは6項目の指標のうち5項目で70%以上の高評価となり、「タスクを迅速に完了できる」という項目では83%に達しました。
日立製作所アプリケーションサービス事業部の溝江彰人氏(担当部長)は、その理由についてこう説明しています。「コメントからのコード生成やコードからのコメント・テストコード生成が自動化できる、型定義宣言や関数名・変数名が提案される、などが挙げられています」。
コーディング・単体テストで10〜20%、最大30%の生産性向上
アンケートによる評価に加えて、実際の生産性向上の数値も確認されています。
Microsoft公式記事(2025年3月時点)によると、GitHub Copilotの用途として多いのはコーディングと単体テストで、この領域では平均10〜20%、ケースによっては30%の生産性向上効果が得られているといいます。
コーディングでは最初の枠組みを作る作業に手間がかかり、心理的な負荷もかかりがちです。この部分をGitHub Copilotが肩代わりしてくれることが、効果につながっていると溝江氏は語っています。
また、コーディングは1人で取り組むことが多く孤独になりがちな作業ですが、GitHub Copilotが常に横でサポートすることで、開発者の心理的な負担が軽くなっているという声もあるとのことです。
新しい言語の学習を後押しする効果も報告されています。
業務内容には詳しくても新しい開発言語には慣れていない設計者は少なくなく、COBOLからJavaへの移行や、生成AI活用のためのPython習得といった場面でGitHub Copilotが助けになっているといいます。
この評価期間中にユーザー数は急速に増加し、Microsoft公式記事(2025年3月時点)によると約2,000名に達しており、当面の目標は5,000名とされています。
既存の開発資産と組み合わせて数字をさらに伸ばす
GitHub Copilot単体の評価に加えて、日立製作所が力を入れているのが、自社が持つ開発フレームワークとの組み合わせです。
Justware OSSベースとの連携でコード生成率78%→99%
日立製作所には「日立アプリケーションフレームワーク Justware OSSベース」という独自の開発フレームワークがあります。
詳細設計からルールに沿って骨格となるコードを生成できる仕組みですが、複雑な業務ロジックはルールベースでは生成できず、詳細設計書に処理を細かく記載したうえで開発者が手作業でコーディングする必要がありました。
この部分の負荷軽減が課題だったといいます。
そこで進められているのが、Justware OSSベースが生成した骨格コードをもとに、開発者がGitHub Copilotを使ってコードの精度を高めていく取り組みです。
日立製作所アプリケーションサービス事業部の五十嵐聡氏(部長、GenAIアンバサダー)は次のように説明しています。「詳細設計書には『こんな処理をやるよ』という内容を記載しておくことで、Justwareの骨格コードと組み合わせて業務ロジックを提案してくれます」。
「実際に、当社の検証用アプリケーションにおけるコード生成率は、Justware OSSベースだけでは78%でしたが、GitHub Copilotの併用で99%にまで向上しています」。
なお、この78%から99%という数値は、日立製作所社内の検証用アプリケーションで得られた結果です。開発環境やコードベースが異なれば、同じ幅の向上が再現されるとは限らない点には注意が必要です。
上流工程までカバーするフレームワークとの組み合わせ
2024年5月には「Hitachi GenAI System Development Framework」の提供も始まっています。
これは要件定義や基本設計といった上流工程から、結合テスト、システムテストまでをカバーするフレームワークで、詳細設計書からプロンプトを自動生成し、生成AIでコードの初稿を作成したうえで、GitHub Copilotの活用でその精度を高めるという流れになっています。
五十嵐氏は、プロジェクトの性質によって使い分ける方針を語っています。「日立製作所はミッションクリティカルなプロジェクトが多いため、開発手法もウォーターフォール型が多いのですが、最近ではスピーディーなプロトタイプ開発やアジャイル開発が求められるケースも増えています」。
「プロジェクトの性質によってGitHub Copilotでの支援や日立のフレームワークとの組み合わせを使い分けることで、開発の間口がさらに広がると考えています」。
なぜここまでの数字が説明できるのか
GitHub Copilotのような生成AIコーディング支援ツールは、導入した個人の感覚が良かったという話で終わりがちです。
日立製作所の事例が他社と違って見えるのは、感覚を多角的な指標に落とし込み、既存の開発資産と組み合わせて数字を伸ばすところまで設計している点にあります。
同じような傾向は他社でも見られます。国内ではZOZOが日立製作所より早い2023年7月、パイロット対象56名のうち78.9%が「より生産的になった」と回答したことをTech Blogで公開しています。
日立製作所の200名評価とは規模も時期も異なりますが、指標を決めて測定した企業ほど、社内向けにも社外向けにも効果を説明しやすくなるという構造は共通していると考えられます。
日立製作所は2023年5月に「Generative AIセンター」を設置し、システム開発の生産性を2027年までに30%向上させるという目標をInvestor Dayで公表しています。
2023年10月からの評価は、この目標に対する具体的な進捗を示す取り組みの1つと位置づけられます。
さらに2024年6月には、日立製作所とマイクロソフトが生成AI活用における戦略的パートナーシップを締結し、GitHub CopilotやAzure OpenAI Serviceの活用を日立グループ27万人規模の取り組みへと位置づけました。
個別の効果測定と、全社的な戦略の両方が並走している構図がうかがえます。
拡大しても崩れない理由
「効果があるのはわかった。でも、使う人が増えたときにナレッジや品質がばらついてしまうのでは」という不安を持つ読者も多いはずです。この点についても、日立製作所は具体的な仕組みを用意しています。
ナレッジオーナーとユーザーの間にモデレーターを置く設計
日立製作所は2023年に有志メンバーによるコミュニティ活動を始め、2024年4月に「生成AI実務者コミュニティ」として正式に立ち上げました。
このコミュニティの運営体制について、日立製作所アプリケーションサービス事業部の斎藤岳氏(センタ長、GenAIアンバサダー)はこう説明しています。
「コミュニティの目的はナレッジのオーナーとユーザーのコラボレーションを促進することですが、両者の間にモデレーターを置いていることが最大の特徴です。モデレーターがナレッジの審査・承認・発信を担当することで、ナレッジの品質担保と体系化を可能にしているのです」。
社内で共有されたユースケースは1,000件を超えていますが、これをモデレーターが約200のナレッジに体系化しています。誰でも自由に投稿できる状態にせず、間に審査の目を通すことで、増えても質が落ちない仕組みを作っている形です。
「拡大」と「定着」を分けて追うKPI設計
もう1つの工夫は、KPIを「拡大」と「定着」に分けて追っている点です。
Microsoft公式記事(2025年3月時点)によると、コミュニティの参加者数は約1万5,000名に達しており、日立製作所が重視しているのは、その中でも継続的に活動するコアなアクティブユーザー数です。
同時点で約2,500名だったこの数値を、6,000名まで増やすことを目標にしているとしています。もう1つのKPIは「貢献度」で、社内のさまざまな活動が収益にどう貢献しているかを定量評価する仕組みだといいます。
参加人数という規模の指標だけでなく、実際に使われ続けているかという定着度の指標を別立てで持っておくことで、「登録したきり動いていない」というありがちな失敗を防ぎやすくなっていると考えられます。
なお、この取り組みにかかった費用やライセンス体系は記事内で公開されておらず、他社が同水準の運用体制を敷く場合のコスト感は別途確認が必要です。
何から始めればいいか
ここまで見てきたのは、200名の評価から始まり、2,000名の利用、1万5,000名のコミュニティへと広がった実例です。ただ、自社で検討するのに、最初からこの規模を目指す必要はありません。
日立製作所の進め方から読み取れるのは、まず小さな評価母体を作り、複数の指標で測定し、既存の開発資産があればその組み合わせを検討する、という順序です。
自社にコーディング規約や開発フレームワークがあるなら、GitHub Copilotをゼロから使うのではなく、その資産と組み合わせたときにどれだけ効果が変わるかを見てみると、投資判断の材料になりやすくなります。
GitHub Copilotの料金プランや対応言語などの詳細は、ツール詳細ページで随時最新情報に更新しています(GitHub Copilotの詳細ページ)。
まとめ: 効果は測り方と広げ方で決まる
日立製作所の事例が示しているのは、GitHub Copilotが使えるツールかどうかという段階の議論はすでに終わっているということです。
大事なのは、複数の指標で測定し、自社の開発資産と組み合わせ、拡大しても質が落ちない仕組みをあらかじめ用意しておくことです。
試す前に、次の点を確認しておくと迷いません。
- 個人の感想ではなく、複数の指標で効果を測る計画があるか
- 自社に独自の開発フレームワークや規約がある場合、それとの組み合わせを検討したか
- 利用者が増えたときのナレッジ管理・品質担保の仕組みを考えているか
- コスト感や自社での再現性は別途確認が必要な前提として認識しているか
生成AIを開発現場にどう組み込めばいいか、GitHub Copilotのようなツールが自社の開発体制に合うかどうかを含めて相談したい場合、AIリスキル株式会社では生成AIの導入支援を行っています。
「何から測ればいいかわからない」「小さく評価して、うまくいったら広げたい」といったご相談は、お気軽にどうぞ。
この記事の出典
- 日立製作所が GitHub Copilot の活用で開発生産性を向上。社内評価、開発フレームワークとの連携、コミュニティ活動を通して、さらなる生成 AI 活用を推進(Microsoft Customer Stories、2025年3月24日)
- 日立とマイクロソフトが、生成AIでビジネスと社会イノベーションを加速するための契約を締結(日立製作所、2024年6月4日)
- GitHub Copilotの全社導入とその効果(ZOZO TECH BLOG、2023年7月10日)
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執筆メモ: 出典の詳細と時点の注意(本文非掲載、内部記録用)
- 日立製作所が GitHub Copilot の活用で開発生産性を向上(Microsoft Customer Stories、2025年3月24日公開)。WebFetchの要約だけでなく、生HTMLを取得しタグを除去した本文全文(script/style除去後)で全数値・全引用を照合済み(確認日2026-08-02)。登場する担当者3名の役職・発言はすべて原文引用
- 日立とマイクロソフトが、生成AIでビジネスと社会イノベーションを加速するための契約を締結(日立製作所、2024年6月4日)。旧URL(hitachi.co.jp)からのリダイレクト先を確認済み。27万人・GenAI Professional 5万人以上・数十億ドル規模協業の数値を確認
- GitHub Copilotの全社導入とその効果(ZOZO TECH BLOG、2023年7月10日)。「78.9%がより生産的になったと回答」「最終的に56名を対象者に選出」を確認。本文では比較材料として軽く触れるに留め、深追いしていない
- 参考(本文で直接引用はしていない): 日立製作所のシステム開発における生成AI活用 GitHub Copilot活用の取り組みを中心に Part 1(日立製作所ホワイトペーパー)。WebSearchのスニペットで存在を確認したのみで、PDF本文の内容は未確認のため、本文中の数値には使用していない
- 2026-08-15改稿メモ: review.mdの指摘に基づき、ユーザー数・コミュニティ規模の数値(約2,000名/約1万5,000名/約2,500名)を「Microsoft公式記事(2025年3月時点)によると」という出典時点を明示した表現に統一し、「記事公開時点で」「現時点で」「現在の」という自己言及的な時制表現を削除した。数値そのもの、および78%→99%・30%の限定表現は変更していない
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