AIに契約書を読ませても大丈夫?法務省ガイドラインで確認する【2026年8月版】

契約書のチェックにAIを使いたい。そう考えたときに、社内で必ず一度は出るのが「それ、法律的に大丈夫なの」という問いです。
弁護士法という言葉が出てきた時点で、答えられる人が社内にいないまま話が止まる。稟議書にも、上司や情報システム部門への説明にも、根拠が書けない。
この記事では、法務省が公表している資料をもとに、そのまま社内に示せる形で答えを整理します。専用ツールを検討している場合と、ChatGPTなどに契約書をアップしたい場合の両方を扱います。
結論と、そのまま社内に共有できる出典をセットでお渡しします!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
結論:自社の契約書を自社の業務のために読ませるのは、問題になりません
先に答えです。自社が当事者になっている契約書を、自社の業務のためにAIに読ませることは、弁護士法が禁じている行為には当たりません。
専用の契約書レビューツールでも、ChatGPTのような汎用のAIでも、この点は変わりません。法務省が2023年8月と2026年8月に公表した2本のガイドラインが、その判断のよりどころになります。
確認すべき点は、実質的に次の2つに絞られます。
- もめている案件ではないか:すでに紛争になっている、あるいは紛争になるのがほぼ避けられない案件は、AIではなく弁護士へ渡します
- 入力してよい情報か:契約書には取引先名や単価が入ります。使うサービスとプランが、その情報を扱ってよい設定になっているかを確認します
1つ目が弁護士法の話、2つ目が情報管理の話です。この2つは別の論点なので、分けて確認すると社内の説明も通りやすくなります。
根拠:法務省が公表している2本のガイドライン
上司や情報システム部門に説明するときは、この2本を示せば足ります。どちらも法務省のサイトで公開されている資料です。
- 令和5年ガイドライン(2023年8月公表):「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」。契約書の作成・審査・管理を支援するサービスについて、どのような場合に問題になるかを整理したもの
- 新しいガイドライン(2026年8月21日公表):「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」。対象が法務業務全般へ広がり、汎用型AIの提供者も念頭に置かれたもの
新しいほうは古いほうを置き換えるものではありません。ガイドライン自身が、令和5年ガイドラインを補完・拡充するもので、併せて参照されるべきものだと書いています。
そもそも何が禁止されているのか
弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件について法律事務を業として取り扱うことを禁じています。これに違反する行為が、いわゆる非弁行為です。
ここで大事なのは、この条文が問題にしているのが誰の行為かという点です。報酬を得て契約書レビューを業として提供しているのはサービス提供者であり、法務省のガイドラインもサービス提供者に向けた解釈の指針という形をとっています。
自社の契約書を自社の業務のために読ませる行為は、そもそも報酬を得て他人の法律事務を扱う行為ではありません。だから、使う側が禁止行為に当たるという話にはならないのです。
ただし「自社の業務のために」は外せません
新しいガイドラインは、サービス提供者が利用者へ確実に説明すべき事項として、利用者が自己の業務にのみ利用し、他人の法律事務を取り扱うためには使用しないことを挙げています。
つまり、他社の契約書を代わりに検討して報酬を受け取るような使い方は、想定されていません。ここだけは、使う側でも意識しておく必要があります。
なお企業グループ内で、親会社の法務部門が子会社や関連会社の法務業務を支援するために使うことは、通常はここでいう他人の法律事務の取扱いには当たらないとされています。
AIに読ませてよい契約書と、やめておく契約書
弁護士法の観点で線を引いているのは、その案件が「もめているかどうか」です。ガイドラインではこれを事件性と呼びます。
新しいガイドラインは、その水準を「法的紛議が現に顕在化している案件」と「法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件」と表現しています。もめている、またはもめるのがほぼ避けられない、という状態です。
読ませてよい契約書
日常的な取引にともなう契約書は、通常は事件性を認め難いとされる側に入ります。ガイドラインは例として次のようなものを挙げています。
- グループ会社の間で、これまでの取引関係を書面として明確にする契約書
- 基本契約を結んでいる相手と、特段の紛争なく従前同様の物品を調達する契約書
さらに、企業法務で扱う契約関係の事務のうち、通常の業務に伴う契約締結に向けた通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合に事件性がないとの当局の指摘があるとされています。
新規の取引先との売買契約や業務委託契約、NDAのレビューは、通常はこの範囲に収まります。日々の契約書のほとんどが該当すると考えて差し支えありません。
やめておく契約書
反対に、次のようなものは弁護士へ渡す運用にしておきます。
- 紛争が生じた後に結ぶ和解契約書(事件性が認められるとされている典型例です)
- 訴状などの裁判所へ提出する書面
- 支払いや納品をめぐって主張が食い違っている、解除や損害賠償が話に出ているなど、紛争が避けられそうにない案件
新しいガイドラインも、こうした案件の処理を目指して設計されたサービスや、裁判所提出書面・和解契約書の作成に特化した機能を持つサービスを、問題になり得る例として挙げています。
迷ったときの一段
事件性の判断は、契約の目的や当事者の関係、経緯によって分かれます。ガイドラインが示しているのはあくまで例示です。
社内で判断がつかない案件は、AIに読ませる前に顧問弁護士へ確認する。この一段をルールに書いておくと、線引きの迷いが担当者個人の判断に残らずに済みます。
ChatGPT・Claude・Geminiに契約書をアップしてよいか
専用ツールではなく、手元のAIで済ませたいという場合の話です。結論から言うと、弁護士法の観点では専用ツールと同じ扱いになります。
新しいガイドラインは、いわゆる汎用型AIの提供者が、報酬を得る目的で法律事務を行い得る機能を業として提供する場合も念頭に置いています。専用ツールかどうかで線が引かれているわけではありません。
実務で効いてくるのは、むしろもう1つの論点、つまり契約書に入っている機密情報の扱いです。
プランによって、入力内容の扱いが変わります
各社の公式情報を確認すると、個人向けプランと法人向けプラン・APIで、入力内容がモデルの学習に使われるかどうかの既定が異なります。2026年8月24日時点の各社の公開情報では、次のように整理できます。
| サービス | 法人向け・API | 個人向けプラン |
|---|---|---|
| ChatGPT(OpenAI) | ChatGPT Business・Enterprise・Edu・APIプラットフォームなどについて「デフォルトでは、ユーザーのデータを使用してモデルが学習することはありません」と明記されています | 設定でモデル改善への利用をオフにできます |
| Claude(Anthropic) | API・Claude for Workなどの商用製品は、既定では入力・出力を学習に使わないとされています | 学習利用の設定があり、許可した場合は最長5年、許可しない場合は30日の保持と説明されています |
| Gemini(Google) | Google Workspaceの生成AI機能では、顧客データを許可なくモデルの学習に使わず、ドメイン外での人間によるレビューも行わないとされています | Geminiアプリアクティビティがオンの場合、会話の一部が人間のレビューを経てモデルの改善に使われることがあります。オフにすると学習には使われないと説明されています |
各社の記載は更新されます。導入時には、後述の出典欄にある公式ページで、そのときの記載を確認してください。
実務としての結論
社外秘の契約書を扱うのであれば、法人向けプランを契約し、学習利用の設定を確認したうえで使うのが素直です。無料プランや個人契約のアカウントで取引先の契約書を扱うのは避けます。
これは弁護士法の問題ではなく、秘密保持義務の問題です。契約書には、相手方との間で結んだNDAの対象になっている情報が入っていることがあります。
社内で決めておきたいのは、使ってよいサービスとプラン、入力してよい情報の範囲、学習利用の設定の3点です。判断材料は生成AIのセキュリティリスクに整理しています。
専用ツールを入れる場合に見るところ
AI契約書レビューの専用ツールを検討している場合は、もう1つ確認できる材料があります。新しいガイドラインが、サービス提供者に向けて示したガバナンス上の推奨事項です。
これは利用する企業に課された義務ではありません。候補サービスの姿勢を読み取る手がかりとして使う、という位置づけです。
- 弁護士がサービス設計に関与しているか:鑑定等にわたり得るサービスでは、弁護士資格を持つ人の監修や実質的な関与が挙げられています
- 事件性のある案件には使えない旨が表示されているか:入力前の画面や出力結果に明示することが挙げられています
- 根拠や参照元が表示されるか:出力の裏づけを確認できるかどうかに関わります
- 国内の問い合わせ・インシデント対応窓口があるか:日本国内の利用者からの問合せや通報に対応する窓口の設置が挙げられています
満たしていなければ違法だ、という性質のものではありません。稟議の説明材料として、確認した結果を書き添えられる程度で十分です。
社内の承認プロセスに落とし込む段階では、生成AIのガバナンスの考え方も合わせて確認しておくと組み立てやすくなります。
社内ルールに書いておくこと
ここまでを、そのまま社内規程やマニュアルに写せる形にまとめます。3行で足ります。
- 自社が当事者の契約書に限って使う:他社の契約書を代わりに検討する用途では使いません。グループ会社の法務支援は、通常はこの制限に触れません
- もめている案件は弁護士へ渡す:紛争が起きている、起きそうな案件、裁判所へ出す書面、和解契約書はAIに読ませません
- 入力してよい情報とプランを指定する:使用するサービスとプランを社内で指定し、学習利用の設定を確認します。最終的な判断は担当者が行い、AIの出力をそのまま社外へ出しません
3つ目に関連して、新しいガイドラインは、AIが弁護士などの専門家に代わる最終的な判断をするものではなく、回答は参考情報にすぎないことを、提供者が利用者へ説明すべき事項として挙げています。
この3点と、稟議へ添付できるチェックリストを1つの資料にまとめています。社内へ回覧する形が必要であれば、AIに契約書を読ませてよいか|社内判断のための整理からお使いください。
主なAI契約書ツール
専用ツールを見比べる場合は、支援している場所が違うことを押さえておくと土俵がそろいます。
レビューを支援するタイプの代表がLegalForce(リーガルフォース)です。契約書をアップロードして、必要な条項の抜けやリスク箇所を確認する使い方になります。
作成から管理までを支える側にあるのがHubbleです。契約書のバージョン管理や、法務と事業部門のやり取りを1か所にまとめる用途に向いています。
いま時間がかかっているのがレビュー作業なのか、契約書の所在ややり取りの管理なのかで、見るべき側が変わります。両方を並べたい場合はHubbleとLegalForceの比較から確認できます。
よくある質問
無料のChatGPTに契約書を貼るのはだめですか
弁護士法の観点では、自社の契約書を自社の業務のために使う限り問題になりません。避けたほうがよいのは情報管理の観点からです。
個人向けプランは、設定によって入力内容がモデルの改善に使われることがあります。取引先の情報が入った契約書を扱うのであれば、法人向けプランを使うのが安全です。
子会社の契約書を親会社の法務部門が見てもよいですか
企業グループ内で、親会社の法務部門が子会社・関連会社の法務業務を支援するためにサービスを使うことは、通常は他人の法律事務を取り扱うためのものには当たらないとされています。
ただしガイドラインの範囲内での利用が前提です。グループ外の会社の契約書を扱う場合は、同じようには整理されません。
社内に弁護士がいる場合はどうなりますか
自社が当事者となっている契約について、職員や役員である弁護士が、AIの結果も踏まえて自ら精査し、必要に応じて自ら修正する方法で使うときは、通常は弁護士法第72条に違反しないとされています。
社内弁護士が最終確認に入る運用は、この整理に沿ったものになります。
2023年のガイドラインはもう見なくてよいですか
新しいガイドラインは、令和5年ガイドラインを補完・拡充するもので、併せて参照されるべきものとされています。用語の基本的な解釈は令和5年ガイドラインが土台です。
このルールは今後変わりますか
法務省は新しいガイドラインと同時に、今後の検討に向けたロードマップを公表しています。有識者検討会を令和8年度中に立ち上げ、令和9年度中の取りまとめを目指し、令和10年度から令和11年度を目途に措置を行うとされています。いずれも目途としての記載です。
見直しが予定されていることは、いま導入を止める理由にはなりません。現行のガイドラインに沿った使い方を決めておけば、変更があったときに差分だけを見直せます。導入の進め方そのものは中小企業のための生成AI導入ガイドも参考になります。
まとめ
自社が当事者の契約書を、自社の業務のためにAIに読ませることは、弁護士法が禁じている行為ではありません。専用ツールでも汎用のAIでも同じです。
確認するのは2点です。もめている案件ではないこと、そして入力してよい情報かどうかです。前者は弁護士法、後者は情報管理の話で、別の論点として整理すると社内の説明が通りやすくなります。
社内ルールには、自社が当事者の契約書に限ること、もめている案件は弁護士へ渡すこと、使用するサービスとプランを指定することの3点を書いておけば十分です。
次の作業は、自社のどの業務からAIを入れるかを決めることです。判断に迷う個別の案件は、自社の顧問弁護士へ確認してください。
出典
社内へ共有する場合は、次の資料をそのまま示せます。いずれも2026年8月24日に内容を確認しています。
法務省
- ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について(2026年8月21日公表)。新しいガイドラインの本体です
- 同ガイドライン概要。3頁にまとまっており、社内共有にはこちらが向きます
- AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(2023年8月公表)。事件性の考え方と例示はこちらに載っています
- AI等を活用した法務業務及びその支援の将来像を見据えたルールメイキングの在り方検討のロードマップ。今後の検討スケジュールです
- 弁護士法(その他)。上記各資料の掲載ページです
各AIサービスの公式情報
- OpenAI:OpenAI におけるエンタープライズプライバシー(2026年1月8日更新)。ビジネスデータの所有権とモデル学習の既定について記載があります
- Anthropic:Is my data used for model training?、Updates to Consumer Terms and Privacy Policy
- Google:Geminiアプリのプライバシーハブ、Generative AI in Google Workspace Privacy Hub
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