思考の連鎖(Chain of Thought)とは?AIに途中の考えを順に出させる依頼の仕方

社内向けの比較表や提案の下書きをAIに任せるとき、結論だけでは、どの条件を置き、何を確認したのか追えないことがあります。そこで、理由や前提を順に書かせる依頼の仕方が候補になります。
ただし、途中の説明が長ければ回答が正しいとは限りません。利用する製品やモデルによって扱いも異なるため、依頼の書き方とモデル側の仕組みを分けて考える必要があります。
この記事では、思考の連鎖の意味、推論モデルとの違い、業務で確認したい点を整理します。理由の説明を、成果物の確認にどう使うかを判断できます。
この記事では、途中の説明を業務でどう確認材料にするかを解説します!
この記事の監修者

AIリスキル株式会社 代表取締役
AIツールギャラリーを運営するAIリスキル株式会社の代表取締役。企業・自治体向けの生成AI研修とAI導入支援を手がけています。
実績: 大阪・関西万博 公式プログラム「AI HEROES COLLECTION」司会進行 / 神戸市デジタル人材育成エコシステム構築事業の運営 / MBS「せやねん!」「よんチャンTV」に生成AIの専門家として出演 / Felo日本初コアアンバサダー / Genspark第1期公式アンバサダー / Skywork公式アンバサダー / AKOOL公式パートナー など
思考の連鎖とは何か

思考の連鎖は、AIに最終的な結論だけでなく、途中の考えや理由を順に出すよう求める依頼の仕方です。英語ではChain of Thought、略してCoTと呼ばれます。
途中の考えを順に出す依頼
たとえば、社内資料の比較を頼むときに、結論だけでなく「前提」「比較した項目」「判断理由」「確認が必要な点」を順に示すよう頼みます。これは、答えをそのまま採用するためではなく、確認する場所を見つけるための依頼です。
依頼文そのものの役割は、プロンプトとはで確認できます。あらかじめ設定しておく指示とは役割が異なるため、固定の指示についてはシステムプロンプトとはを参照してください。
CoTという呼び方と学術上の範囲
Weiらの原著論文では、CoTを中間的な推論ステップの列として扱い、途中の手順を含む例を示すプロンプトを実験しています。日常の業務では、理由や確認点を順に書かせる依頼を広くCoTと呼ぶことがあります。
この二つは近い考え方ですが、同じ手順ではありません。業務で使うときは、難しい用語を使うことより、確認したい項目を依頼文に明記することが先です。
なぜ途中の手順を求めると回答の見方が変わるのか

途中の手順を求めると、最終結論の前に、AIが文章として置いた前提や理由を確認できます。結論だけでは気づきにくい、条件の抜けや、確認が必要な箇所を見つけるきっかけになります。
中間手順を置くと確認の対象が増える
たとえば「結論、判断基準、参照した情報、不明点の順に出してください」と頼むと、確認する人は項目ごとに見直せます。文章が見やすくなることと、内容が正しいことは別です。
途中の説明を求めるほど、読む量は増えます。結論に必要な観点だけを指定し、確認する人と確認箇所を先に決めておくと、長い説明を読むこと自体が目的になるのを避けられます。
研究で確認された範囲と業務での限界
Weiらの論文は、算術、常識、記号推論のベンチマークで、CoT promptingを検討しました。これは、途中の説明を頼めば、すべての業務で正確になることを示すものではありません。
資料の要約、比較、社内文書の下書きでは、元資料が正しいか、条件が最新かを別に確かめます。CoTは、確かめるべき箇所を文章として出すための補助として扱います。
推論モデルとは何が違うのか

思考の連鎖は、利用者が依頼文で途中の説明を求める書き方です。推論モデルは、回答の前に検討を行うよう設計・提供されるモデル側の仕組みを指します。
依頼の書き方とモデルの仕組みを分ける
同じ画面で使っていても、CoTと推論モデルは同義ではありません。依頼文を変えるのがCoTであり、モデルを選ぶのが推論モデルの検討です。
推論モデルの選び方や位置づけは、推論モデルとはで詳しく扱っています。このページでは、製品カテゴリの説明を繰り返さず、依頼文の役割に絞ります。
製品の仕様を一般化しない
OpenAIのReasoning models文書では、推論モデルが内部のreasoning tokenを使うこと、raw tokenはAPIから見えないことを説明しています。これはOpenAIの仕様であり、表示された説明がすべての製品で同じ形になるという意味ではありません。
GoogleのGemini 3移行ガイドは、CoTで推論を強制していた場合に、thinking_levelを高めて簡潔な依頼を試すよう案内しています。利用中の製品では、公式ガイドと設定を個別に確認してください。
業務で使うときは何に気をつけるのか

業務でCoTを試すときは、「考えてください」だけで終えず、確認したい観点と最終成果の形を分けて指定します。途中の説明と納品用の文章を混ぜると、確認する範囲が曖昧になりやすいためです。
結論より先に確認したい項目を指定する
資料比較を確認する場合の一例として、対象資料、判断基準、根拠を示せない場合の扱い、最終成果の形式を依頼文に入れます。
必要な項目は、業務・製品・社内ルールに合わせて選びます。理由は箇条書き、最終案は表というように分ける場合もあります。
最終成果を決まった項目で受け取りたい場合は、構造化出力とはも役立ちます。途中の説明を長く出すことと、必要な項目を欠かさず受け取ることは別の検討です。
利用中の製品の公式情報と社内ルールを確認する
思考の連鎖の有無は、会社で使えるかどうかを決める材料にはなりません。今回確認した一次情報だけでは、CoTから会社での利用可否や法的な適否を判断する根拠は確認できませんでした。
利用中の製品の公式情報と社内ルールを見る入口として、入力する情報の区分、契約・設定、社内のAI利用ルールを確認します。具体的な製品・契約・社内規程は、担当窓口に確認します。
理由の説明が必要な業務では、誰が元資料を確かめ、誰が結論を承認するかも決めます。AIに理由を書かせることは、人による確認や承認の代わりにはなりません。
出てきた「考えの過程」はそのまま信じてよいのか

そのまま信じてよいとはいえません。画面に出た説明は確認材料にはなりますが、AIの内部処理を完全に記録したもの、または結論の正しさを示す証拠としては扱いません。
説明文と内部処理を同一視しない
Anthropicの2025年研究は、Claude 3.7 SonnetとDeepSeek R1を、ヒントを注入した多肢選択評価で調べました。ヒントを使ったことが、出力されたCoTに十分表れない例が報告されています。
この研究は、対象モデル、評価形式、ヒントの種類に限られます。そのため、すべてのAIの説明が役に立たないとはいえませんが、説明文だけで検証を終えない理由にはなります。
根拠・計算・結論を分けて確かめる
確認するときは、根拠にした資料、計算や比較の条件、最終結論を分けて見ます。資料に書かれていない情報や、確認できない条件は、AIの説明がもっともらしくても保留にします。
事実と異なる内容をもっともらしく生成する問題は、ハルシネーションとはで確認できます。理由の説明を追加しても、元資料との照合は必要です。
まとめ

思考の連鎖は、AIに途中の考えや理由を順に出させる依頼の仕方です。理由を出させる目的は、結論を信じるためではなく、前提・根拠・不明点を確認するためにあります。
推論モデルはモデル側の仕組みであり、CoTとは別に検討します。業務では、依頼文、確認する項目、社内で扱える情報の範囲を分けて決めることが大切です。
理由の説明が必要な業務でAIの使い方を整理したい場合は、AI導入について相談するをご利用ください。依頼文だけでなく、確認項目と担当者の役割を業務に合わせて整理できます。
この記事の出典
- Chain-of-Thought Prompting Elicits Reasoning in Large Language Models(Weiら、2022年)
- Reasoning models(OpenAI、確認日 2026-09-13)
- Gemini 3 developer guide(Google AI for Developers、確認日 2026-09-13)
- Reasoning models don't always say what they think(Anthropic、2025年4月3日)
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