DeepSeek-R1入門:実力と使い方をやさしく解説【初心者必見】」

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山原 慎也

AIリスキル株式会社 代表取締役。日本最大級の生成AIメディア「AIツールギャラリー(累計100万PV超)」を運営し、これまでに600以上のAIツールを検証、1000以上の記事を執筆。
大阪を拠点に、法人向けの生成AI顧問や研修、各種生成AIサービスを提供しています。

近年、生成系AIの発展によって、文章作成からプログラミング支援まで幅広いタスクを自動化できる時代が到来しています。とはいえ、「コストはどのくらいかかるの?」「本当に業務効率化に役立つの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。

この記事では、DeepSeek-R1という大規模言語モデル(LLM)の具体的な導入方法や料金、技術選定のポイントや上手な使い方までをわかりやすく解説します。専門用語には簡単な補足をつけながらお伝えするので、ぜひ最後まで読んでみてください。

はじめに:DeepSeek R1とは

DeepSeek R1は、中国のAI企業であるDeepSeek社が2025年1月に正式公開したオープンソースの大規模言語モデルです。数学やプログラミングなど、論理的推論(※1)に優れた設計が特徴とされ、OpenAIの「o1モデル」と同等以上の性能を持つと注目を集めています。

※1 論理的推論: 数学やプログラミングなど、物事を筋道立てて考える能力のことを指します。

DeepSeek R1の概要

DeepSeek R1は、MITライセンスで公開されているため、商用利用を含めて自由に使うことができます。最大128Kトークン(単語や文のかたまり)もの長文コンテキストを処理できるため、長時間の会話や複雑なドキュメント解析にも対応可能です。

さらに、数理的なタスクやコード生成などで高い精度を示しており、研究機関や開発企業の間でも注目されています。

DeepSeek R1の主な特徴

DeepSeek R1は、他の大規模言語モデルと比べても優れたポイントがいくつかあります。ここでは、その代表的な特徴を分かりやすく紹介します。

オープンソースで自由度が高い

DeepSeek R1は、MITライセンス(※2)のもと公開されています。つまり、研究用途だけでなく商用サービスにも組み込みやすく、独自のカスタマイズも柔軟にできるのが魅力です。

※2 MITライセンス: ソフトウェアの改変や再配布を比較的自由に行えるライセンス形態。

高い推論能力

数学問題やプログラミングタスクなど、論理的な思考を要する場面でとても高精度な回答を示します。

  • 例:数学ベンチマーク「MATH-500」で97.3%の正解率を記録
  • 例:プログラミングの競技サイト「Codeforces」で96.3パーセンタイルを達成

大規模コンテキスト対応

最大128Kトークンまでの入力を扱えるので、以下のような使い方がしやすいです。

  • 長文ドキュメントの要約や内容整理
  • 長時間にわたるチャットログの分析

強化学習を活用

DeepSeek R1は、教師データ(人間が作成した例)なしで学習する強化学習を積極的に取り入れています。一部のバリエーションでは、モデル自体が学習中に「アハモーメント」と呼ばれる思考時間の調整を行い、自律的に性能を高める事例も報告されています。

DeepSeek R1のメリット

DeepSeek R1を導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、導入を検討する上で特に注目すべきポイントを挙げてみます。

コストパフォーマンスの高さ

DeepSeek R1のAPI利用料金は、以下のように他社の類似モデルよりもかなり安く設定されています。

  • 入力トークン(キャッシュミス):100万トークンあたり $0.55
  • 出力トークン:100万トークンあたり $2.19

一方、既存の有名LLMでは出力トークンが100万トークンあたり数十ドルに達するケースもあり、負担が大きくなりがちです。大量のリクエストをさばく必要があるサービスにとって、このコスト削減効果は非常に大きな魅力となるでしょう。

オープンソースコミュニティの充実

オープンソースであるDeepSeek R1には、すでに世界中の研究者や開発者が参加しています。コミュニティが活発だと、

  • バグ修正や機能改善のペースが早い
  • トラブルシューティング時に助言が得やすい
    などのメリットがあります。今後も継続的にモデルが進化していく可能性が高いです。

大規模コンテキストでの活用が可能

文章量の多い業務(例:膨大な法務書類の分析や長期のチャット履歴管理など)に対しても、DeepSeek R1は大きな可能性を持っています。最大128Kトークンの文脈を保てるため、一度に大量の情報を処理したいシーンでも活躍が期待できます。

DeepSeek R1のデメリットと注意点

一方で、DeepSeek R1にもいくつかのデメリットや注意すべき点があります。導入前にあらかじめ把握しておくことで、リスクを最小限に抑えることができます。

入力データの学習利用

API経由で入力したデータが、モデルの学習データとして再利用される可能性が指摘されています。具体的には、機密情報や個人情報などをそのまま送ると、第三者に渡る危険性は低いものの、学習に使われてしまうリスクがゼロではありません。

対策: 重要なデータを扱う場合は、ローカル環境でモデルを動かすか、暗号化や部分的なマスキング(隠す処理)を行いましょう。

実際の運用での信頼性

ベンチマーク上では高いスコアを出していますが、現実の複雑な場面や曖昧な質問には誤答も起こり得ます。高度な判断が求められる業務で利用する場合は、人的な確認(ヒューマンチェック)との併用が推奨されます。

負荷テストが十分でない可能性

まだ公開から日が浅いため、大規模なトラフィックを想定した検証例が少ないという面があります。大企業や大規模サービスで導入を検討する場合は、事前に十分な負荷テストを行い、サービス全体の安定性を確認しておくことが大切です。

DeepSeek R1の料金プラン

DeepSeek R1のAPI利用料金は、トークン数(入力と出力)に基づいて決定されます。トークンとは、文章を分割した単位(単語や文字列の塊)を指す専門用語です。

  • 入力トークン(キャッシュヒット時):100万トークンあたり $0.01 ~ $0.14
  • 入力トークン(キャッシュミス時):100万トークンあたり $0.55
  • 出力トークン:100万トークンあたり $2.19

数値に幅があるのは、キャッシュ(※3)の有無や契約プランなどによって料金が変動するためです。いずれにしても、OpenAIなどの他社モデルと比べると大幅に安価であることがわかります。

※3 キャッシュ: 過去に処理した入力を一時的に保存することで、次回同じ入力が来た際に計算を省略する仕組み。

無料枠はある?

  • Webインターフェース:公式サイト上で一定回数まで無料利用が可能
  • スマホアプリ:iOS/Android版を無料でダウンロード可能(利用制限あり)
  • ローカル環境:モデルのデータ自体をダウンロードすれば無料ですが、高性能なハードウェアが必要

DeepSeek R1の導入方法

DeepSeek R1は複数の方法で利用できます。ここでは、代表的な3つを紹介します。

Hugging Faceで利用

  1. Hugging Faceのアカウントを作成し、APIトークンを取得
  2. huggingface_hubなどのライブラリをインストール
  3. Pythonスクリプトからモデルを呼び出し、推論を実行

特に開発者の方は、既存のHugging Faceエコシステムを活用すると導入がスムーズです。

LM Studioで利用

  1. LM Studioをインストール(GUIツールなので初心者でもわかりやすい)
  2. アプリ内でDeepSeek R1モデルの蒸留版をダウンロード
  3. ダウンロード完了後、チャット画面で簡単にやり取りを開始

専門的なコードを書かなくても使えるため、試しに触ってみたい人におすすめです。

APIで利用

  1. DeepSeek公式サイトでAPIキーを取得
  2. REST APIまたはOpenAI互換APIを呼び出す
  3. 他のシステムやアプリと連携してチャットボットなどを構築

大規模なサービスやエンタープライズ向けシステムに組み込む場合は、この方法が一般的です。

DeepSeek R1と競合モデルの比較

DeepSeek R1とよく比較されるのは、OpenAI社のGPTシリーズやAnthropic社のClaudeなどです。以下は簡単な比較表になります。

モデル名オープンソース推論能力価格大規模文脈対応主な用途
DeepSeek R1〇 (MIT)数学・プログラミングが得意安価 (出力$2.19/百万トークン)128Kコストを抑えつつ、高精度な推論が欲しい場合
GPT-4×幅広いタスクで高精度やや高い32K程度高度な文章生成や多目的な会話タスク
Claude (Anthropic)×自然な会話・説明が得意高めモデルによる複雑な会話構造が必要なシナリオ
OpenAI o1×数学・論理思考に強い高い~32K特に高度な科学タスクや高精度が求められる場面に最適

「とにかく安価で高い推論能力が欲しい」というニーズが強い場合、DeepSeek R1が選択肢として有力です。一方、「画像や音声を含むマルチモーダル対応(※4)」が必要なケースなどでは、GPT-4系が優位となります。

※4 マルチモーダル対応: テキスト以外の情報(画像・音声など)を同時に処理できる機能。

まとめ

DeepSeek R1は、オープンソースで自由度が高く、コストパフォーマンスに優れ、数学やプログラミングなどの論理的思考に特化したLLMとして注目を集めています。以下の点を踏まえて導入を検討してみてください。

  • メリット
    • 推論能力が高く、特に数理的な問題やプログラミングに強い
    • オープンソースで改変が自由
    • API料金が安く、大規模運用にも向いている
  • デメリット・注意点
    • API使用時、入力データが学習データに利用される可能性
    • 現実の複雑な環境で誤答が出るリスク
    • 負荷テストなどの実績がまだ少ない

現状、ローカル環境での無料利用や手頃な料金でのAPI利用が可能なため、まずは小規模の検証やサンプルタスクから試してみるのがおすすめです。
もし高いカスタマイズ性やコスト削減を重視しているなら、DeepSeek R1は十分検討する価値があります。ぜひ本記事を参考にして、次世代AIの可能性を体感してみてください。

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