最近、テキストや音声からリアルなAIアバター動画を簡単に作れるサービスが人気を集めています。中でも注目を浴びているのが「AKOOL AI(アクール)」と「D-ID」。どちらも多言語対応の話すアバターを手軽に作成できるサービスですが、細かい機能や料金プラン、日本語対応の精度などには違いがあります。
「自分の目的に合ったAIアバター生成サービスはどっち?」
と迷っている方のために、両サービスを徹底比較しました。マーケティング、教育、エンターテイメントなど、様々な分野で活用できるAIアバターツールの選び方を解説します。
はじめに:基本情報
まずはAKOOL AIとD-ID、それぞれがどんなサービスを提供しているのか、概要を確認しておきましょう。
AKOOL AI(アクール)とは
AKOOL AIは2022年設立のシリコンバレー発AIコンテンツ生成プラットフォームです。画像生成、フェイススワップ(顔交換)、話すアバター動画作成など、幅広い機能を1つのサービスで提供しているのが特徴です。
特にフェイススワップ技術の精度に定評があり、専門知識がなくても高品質なコンテンツを素早く作成できます。2024年11月には年間リカーリング収益(ARR)4,000万ドルを達成したと発表されており、急成長中のサービスです。
「Akool(アクール)はAI画像生成サービスの中でも『フェイススワップの精度が高い』ことで知られています。クリック操作とテキスト入力だけでプロ並みのコンテンツが作れ、料金体系もわかりやすいのが魅力です。」
Ainova解説記事
AKOOLの主な機能
AKOOLの主な機能は以下の通りです。
- 画像生成(Image Generator)
- 顔交換(Face Swap)
- 背景変更(Background Change)
- リアルなアバター生成(Realistic Avatar)
- 写真から話す動画作成(Talking Photo)
- 動画自動翻訳(Video Translate)
- 話すアバター生成(Talking Avatar)
- リアルタイム対話アバター(Streaming Avatar)
- 個別対応動画(Video Campaign)
企業事例としてはカタール航空が広告キャンペーンにフェイススワップ技術を活用したり、日本企業のAvita社がAKOOLを使ってTikTokドラマを制作するなど、利用の幅が広いのも特徴です。
D-IDとは
D-IDは2017年創業のイスラエル発スタートアップです。もともと顔写真の匿名化技術(De-identification)で注目された後、静止画を動かす技術や”話す人物アバター”の生成を主力サービスとしています。
現在はCreative Reality™ StudioというAI映像生成プラットフォームを運営し、写真やイラストからリアルな“動画プレゼンター”を作れることで知られています。口の動きや表情が自然で、テキスト入力だけであたかも実在の人物が話しているかのような映像が作れます。
「D-IDは120言語に対応し、日本語も流暢に話せます。Coca-ColaやShellなどフォーチュン2000企業の4分の1ほどが顧客で、その数は1万社を超えています。」
TECHBLITZインタビュー
累計4,800万ドル以上の資金調達を実施し、丸紅やNTTなど日本企業も出資。世界中の大手企業や教育機関で活用される、業界をリードするAIアバター企業の一つとして知られています。
AIアバターの性能と日本語対応
ここではアバターのリアルさや、特に日本語を話させた場合の精度について比較します。
AKOOL AIのアバター性能
- 唇の動きや表情が非常に自然
- 150以上の言語に対応(日本語も可能)
- 500種類以上の音声がデフォルトで用意
- 自分の声を学習してボイスクローンも作成可能
UI(操作画面)は英語ベースですが、日本語テキストを入力すれば自然な日本語音声のアバター動画を生成できます。プロンプト入力などは英語がベースなので、画像生成など他機能では日本語入力がやや不安定なケースもありますが、日本語テキストの読み上げ精度は十分高品質です。
「UIは英語でも問題なく使いこなせる」「多彩な声質やアバターで攻めた表現をしたい」という方に向いています。
自分の声を学習して“ボイスクローン”を作ることもできます。
D-IDのアバター性能
- 動きや表情が滑らかで、人間が実際に話しているようなリアルさが強み
- 120言語に対応(日本語もスムーズ)
- UIの一部が日本語化されており操作しやすい
- デフォルトで選べるアバター(プレゼンター)の種類が豊富
- ビジネスシーン向けの落ち着いたモデルからカジュアルなものまで幅広く用意
音声のイントネーションは自然で、聞き取りづらさはほとんどありません。UIがわかりやすいため、「日本語環境を重視する」「操作にあまり手間をかけたくない」という人に適しています。
動画編集機能
AIアバターを生成するだけでなく、その動画をどう編集できるかも重要です。
AKOOL AIの動画編集
AKOOLはオールインワンの強みを活かし、AIビデオエディターを使って以下の編集がプラットフォーム内で完結可能です。
- テロップ挿入
- BGM追加
- 複数クリップの繋ぎ合わせ
- 写真を口パク動画に変換する「Talking Photo」
- 背景合成機能
- カスタムアバターで顧客ごとに異なるメッセージを大量生成できる「Video Campaign」
凝った演出や大量の動画出力をしたいユーザーにとって、外部ソフトを使わずに一通り仕上げられるのは大きなメリットです。
D-IDの動画編集
D-IDのCreative Reality Studioはシンプルさを重視しており、基本的には「1シーン1アバターが喋る動画」を作る設計です。タイムライン上でシーンを切り替えるような細かい動画編集機能は限定的で、そうした作業は外部ソフトに任せる前提となっています。
その代わり、Canvaや PowerPointプラグインなど外部ツールとの連携が充実。作成したアバター動画を簡単にスライド資料に取り込むといった使い方がしやすいのが特徴です。
また、既存の動画を多言語吹き替えする「Video Translate」機能や、話者の声をクローンして口パクを合わせる技術など、シンプルながら強力な機能も備えています。
凝った映像演出を追求したい場合はAKOOL AI、シンプルに短時間で必要な動画だけを作りたい場合はD-IDを選ぶとよいでしょう。
料金プランとコスパ
次に料金体系とコストパフォーマンスを見てみましょう。
プラン区分 | AKOOL AI | D-ID |
---|---|---|
無料プラン | Basic – 無料(100クレジット付与、透かしあり) | Trial – 14日間無料(制限あり、透かしあり) |
入門プラン | – | Lite – 月$5.90程度(10分相当、個人利用限定、透かしあり) |
スタンダードプラン | Professional – $30/月(600クレジット=動画約10分分、透かしなし商用可) | Pro – $29/月(15分、商用可、AIマークのみ) |
上位プラン | Pro Max – $119/月(2400クレジット=約40分、4K出力可) | Advanced – $196/月(100分、カスタム透かし可) |
大容量プラン | Max(Studio) – $500/月(11000+クレジット=180分以上、8K対応) | Enterprise – 問合せ(要件に応じたカスタム) |
Enterprise | Enterprise – 問合せ(専用サポート・カスタム対応) | Enterprise – 問合せ(音声クローンなどフル機能) |
AKOOLのポイント
- 無料プランで100クレジット(約10秒×10回分程度の動画)を体験可能
- 月$30のProfessionalプランから透かしが消えて商用利用OK
- ボイスクローン機能もProfessionalプランから使用可能
- 上位プランでは4K~8K出力や大量クレジットで大規模に動画を作成できる
D-IDのポイント
- Liteプランが月$5.90程度と格安だが、個人利用限定で透かし入り
- 商用利用ならProプラン($29/月、15分)がスタート地点
- 動画本数が増えるとAdvancedプラン($196/月、100分)やEnterpriseへ
少額で試したい場合はD-IDが有利ですが、音声クローンまで利用したいならAKOOLのほうが安価なプランでも可能です。
大量生成の場合、D-IDは分数単位でのプランが選びやすく、AKOOLはクレジット制で他機能も含めて使い放題という特徴があります。
コストパフォーマンス比較
- 低予算で試したい場合:D-IDのLiteプランが圧倒的にお得
- 商用利用を検討している場合:月額料金はほぼ同額。動画生成時間あたりの単価はD-IDがやや割安
- 音声クローン機能をを利用したい場合:AKOOL AIのProfessionalプランが有利
- 透かしを完全に除去したい場合:AKOOL AIのProfessionalプラン以上が有利
料金の安さで選ぶならD-ID、機能の多さで選ぶならAKOOL AI、と言えるかもしれませんね。
API提供状況
AIアバター動画作成サービスのAPI提供状況について解説します。API(Application Programming Interface)は、開発者が自社のアプリケーションやサービスにAIアバター機能を組み込むためのインターフェースです。APIを利用することで、動画生成の自動化や、外部システムとの連携など、高度な活用が可能になります。
両社とも開発者向けのAPIを提供しており、プログラムから直接AIアバター生成を呼び出すことが可能です。
AKOOL AI
- 画像生成や動画生成、翻訳など機能ごとにAPIを公開
- Professionalプラン以上でAPIキーを取得して使用可能
D-ID
- Developer Hubを公開しており、REST API経由でアバター生成を自動化可能
- 外部アプリでリアルタイム対話型アバターを組み込むことも可能
リアルタイム性の高い「Streaming Avatar」や「AI Agents」機能も両社とも対応を進めているため、チャットボットに「顔」を与えたいなどの要望にも対応できます。
企業規模と信頼性
サービスを長期的に安心して利用するためには、その提供元企業の信頼性を確認することが重要です。
ここでは、AKOOL AIとD-IDの企業規模、実績、信頼度を比較します。
AKOOL AI:急成長を遂げる新興AIプラットフォーム
- 2022年設立のシリコンバレー発スタートアップ
- 2024年にARR(年間経常収益)4,000万ドルを達成
- カタール航空やAvitaなど、多業種での導入実績があり急成長中
D-ID:業界をリードする老舗、豊富な実績と大手出資
- 2017年創業、顔認識技術やアバター生成のパイオニア
- 累計4,800万ドル以上調達し、顧客数1万社超
- Fortune 500企業の多くが利用し、丸紅やNTTも出資
実績や規模感ではD-IDが一日の長ですが、AKOOLも高収益を上げており、どちらも今後倒産リスクなどは低いと考えられます。
安定企業を選びたいならD-ID、勢いある新興サービスに魅力を感じるならAKOOL、といった視点もあるでしょう。
アップデート頻度:継続的な機能改善と進化
AI技術は日進月歩で進化しており、AIサービスのアップデート頻度は、サービスの競争力と将来性を左右する重要な要素です。
ここでは、AKOOL AIとD-IDのアップデート頻度と内容を比較します。
AKOOL AIのアップデート頻度
AKOOL AIは、アップデート頻度が高い傾向にあります。公式ブログやプレスリリースを確認すると、ここ半年~1年の間にも多数の新機能リリースや機能改善が発表されています。
近年の主なアップデート例:
- リアルタイム顔交換(Webベースのリアルタイム Face Swap)機能のリリース
- 高度なストリーミングアバター機能の追加
- 動画翻訳機能のリリース
- ディープフェイク検知ツールの導入
- Streaming Avatarsの強化、大規模言語モデル(LLM)との連携強化
毎月~数ヶ月に一度、新機能の追加や既存機能の強化など、積極的なアップデートを実施している印象です。
ウェビナーを開催するなど、ユーザー教育にも力を入れています。
常に最新機能を利用したい方や、サービスの進化に期待したい方にAKOOL AIはおすすめです。
D-IDのアップデート頻度
D-IDもまた、精力的にアップデートを重ねています。近年の主なアップデートとして、
- 「Chat D-ID」(AI Agents)サービスの公開
- Video Translate機能のリリース
- モバイルアプリのリリース
- AI Agentsの正式提供開始
- PowerPointアドインの提供
などが挙げられます。四半期に1回以上のペースで何らかの新機能や機能改善が行われています。
既存機能の品質向上(アバターの表情追加、テンプレートキャラクターの追加など)も継続的に行い、サービス全体の品質向上に努めています。
また、倫理・規制への対応アップデートも適切に行っています。ディープフェイク規制の強化に伴い、透かしの強化や不適切利用の禁止事項の更新などを迅速に反映しています。
アップデート頻度で比較すると、AKOOL AIは新機能リリースが活発で、D-IDは既存機能の改善と倫理面への対応にも力を入れている傾向があります。
その他の機能:独自機能と特徴
AKOOL AIとD-IDは、AIアバター動画作成サービスとして共通する機能を多数搭載していますが、それぞれ独自の機能や特徴も持っています。
ここでは、両サービスのその他の機能や固有のメリットについて補足します。
AKOOL AIならではの機能
AKOOL AI独自の機能として、以下のものが挙げられます。
- フェイススワップ機能:写真や動画内の人物の顔を別人の顔に高精度で交換
- Jarvis Moderator(不正コンテンツ検知):生成された画像・動画の不適切要素をAIが自動で検知
- AI Support Agent:AIアバターが顧客サポートを代行
- 画像生成・編集機能:AIによる高品質な画像生成、背景除去・変更、画像補完など
D-IDならではの機能
D-ID固有の機能、特徴として、以下のものが挙げられます。
- 豊富な既製アバター:多様な人種、年齢、服装のプロフェッショナルなプレゼンター映像をライブラリとして提供
- エシカル AIポリシー:生成物に識別マークを挿入、有名人画像の動画化禁止など、倫理面に配慮
- 多言語サポート:120言語に対応、ユーザーインターフェースも多言語対応
- 実績に裏打ちされた安定性:1万社以上の企業ユーザー、Fortune 500企業多数導入
AKOOLはフェイススワップなど攻めた機能が多い一方、D-IDはより保守的かつ企業利用向けの運用ポリシーという印象です!
リソースの充実度:学習コンテンツとサポート体制
新しいツールを使いこなすためには、学習リソースやサポート体制の充実度が重要です。
ここでは、AKOOL AIとD-IDの学習コンテンツ、サポート体制を比較します。
AKOOL AIのリソース
AKOOL AIの公式リソースは、英語が中心です。公式サイトにはBlogやResourcesセクションがあり、使い方ガイドや事例記事が掲載されています。ウェビナーも定期的に開催し、ユーザー教育を行っています。
日本語の公式ドキュメントやヘルプページは現状ありませんが、日本語の第三者ブログ記事やYouTube動画など、非公式ながら日本語情報も増えつつあります。
英語に抵抗がないユーザーや、情報収集能力が高いユーザーであれば、AKOOL AIのリソースを活用して十分に使いこなせるでしょう。日本語情報の拡充は今後の課題と言えます。
D-IDのリソース
D-IDは、学習リソースが充実しています。公式サイトには、FAQページやナレッジベースがあり、日本語でよくある質問の回答を確認できます。
開発者向けドキュメント(Developer Hub)も充実しており、APIの使い方を詳しく学ぶことができます。
日本語での情報も豊富で、Qiita記事や個人ブログなどで使い方紹介が多数公開されています。
ouTube上にもチュートリアル動画がアップロードされており、初心者ユーザーでも容易に学習できます。ユーザーインターフェースも一部日本語に対応しており、日本語環境での学習が容易です。
結論
- AKOOL AI:日本向けの公式資料は少なめですが、英語では公式ブログやウェビナーなどが充実。第三者ブログ「Ainova」などの解説記事も増加中
- D-ID:1万社以上が利用していることもあり、公式FAQやDeveloper Hubに加え、YouTubeやQiitaなどに日本語含む解説コンテンツが豊富
学習コストを最小化したいならD-IDのほうが情報量が多く安心です。AKOOLも英語メインながら情報が増えつつあり、多機能を使いこなしたい上級者向けの選択肢となるでしょう。
利用者数:ユーザー数と導入実績
サービスの利用者数は、そのサービスの人気や信頼性を示す指標の一つです。
ここでは、AKOOL AIとD-IDの利用者数、導入実績を比較します。
AKOOL AIの利用者数:急成長でユーザー数拡大、1.5億コンテンツ生成
AKOOL AIの利用者数に関する公式な数値は公開されていません。しかし、年間経常収益4,000万ドルを達成していることから推測するに、相当数の法人・個人ユーザーが有料プランを利用していると考えられます。
1.5億件以上のコンテンツ生成実績を謳っており、ユーザー数は急拡大している傾向にあります。クリエイティブ業界や広告業界などでの導入事例が目立ちます。
英語圏のYouTubeでは、AKOOL AIで作成した歌唱動画なども公開され、話題を呼んでいます。
D-IDの利用者数:1万社以上の企業顧客、業界トップクラスの実績
D-IDの利用者数は、顧客数1万社以上と公式に公表されています。Fortune 500企業も多数含み、導入実績は業界No.1と言えるでしょう。
MyHeritage社の「Deep Nostalgia」にD-IDの技術が採用された際には、短期間で1,000万枚以上の写真がアニメーション化されたと報道されており、D-IDの技術に触れたユーザーは世界中で数百万規模に達すると推測されます。
金融、小売、教育、エンターテインメントなど、多様な業界での導入事例が公式サイトで紹介されています。日本国内でも、大手通信企業や保険会社が実証実験を行うなど、幅広い分野で活用が拡大しています。
圧倒的な顧客基盤と豊富な導入実績は、D-IDの高い信頼性を裏付けます。実績を重視するユーザーにD-IDは最適です。
結論
利用者数ではD-IDが優位である一方、AKOOL AIも急速にユーザー数を拡大している状況です。成長性に期待したいユーザーや、新しいサービスを積極的に試したいユーザーにAKOOL AIはおすすめです。
まとめ:どちらを選ぶべきか
AKOOL AIとD-IDはいずれも高性能なAIアバター生成サービスです。最終的には「何を重視するか」で選択が変わってきます。
総合的な機能を1つで使いたいなら → AKOOL AI
フェイススワップから動画編集、音声クローン、リアルタイム対話まで幅広い機能を提供しています。日本語UIではありませんが、英語操作が苦にならない方なら多彩なクリエイティブが楽しめます。
日本語対応や使いやすさを重視するなら → D-ID
UIも一部日本語化されており、豊富なテンプレートアバターで短時間で高品質の動画が作成可能。料金プランも低価格帯から揃っているので、手軽に試したい人にもおすすめです。
料金面での選び方
- 少額予算でまずは試す → D-IDのLiteプラン($5.90/月)
- 音声クローンを本格的に使いたい → AKOOLのProfessional($30/月)
- 大量の動画を作りたい → 各社の上位プランを比較し、必要分数と機能を総合判断
どちらも無料枠があるので、気になる方は一度試用してみることをおすすめします。実際に日本語でアバターを喋らせてみると、その自然さに驚くはずです。
AIアバター技術は今後もさらに進化し、マーケティングや教育、エンタメの現場で新たな可能性を広げていくでしょう。自分の目的に合ったサービスを選んで、効率的で魅力的な動画コンテンツを作ってみてください。