Superwallは、モバイルアプリ内の課金画面(ペイウォール)をリモートで構築・更新できるサービスです。通常、アプリの課金画面を変更するには、コードの書き換えとアプリのアップデートが必要でしたが、Superwallを使えばオンラインのダッシュボードから即座に変更が可能になります。
2021年にY Combinator出身のスタートアップ、Superwall社によって開発されたこのサービスは、ペイウォールのA/Bテストを素早く繰り返し、収益向上を図るためのツールとして注目を集めています。現在では月間3000万回以上のペイウォール表示と毎月数十万件のコンバージョン(購入)が発生する規模にまで成長しています。
Superwallの主な機能
1. ノーコードでのペイウォール編集
Superwallの最大の特徴は、コーディング不要のビジュアルエディターです。ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、ペイウォールのレイアウトや要素を自由に配置・編集できます。
テキストや画像、ボタンなどをGUI上で操作し、マーケターやデザイナーでも簡単にカスタマイズできるのが魅力です。
2. 豊富なテンプレート
200種類以上のペイウォールテンプレートが用意されており、ゼロから作る必要がありません。自社アプリに合った課金画面を素早く作成でき、テンプレートは無料で利用できます。
もちろん、フォントや色、画像などもすべて編集可能です。
3. ユーザーセグメント別の表示設定
ユーザーの属性や行動に応じて、適切なペイウォールを表示する柔軟なルール設定が可能です。例えば「アプリ起動3回目のユーザーには割引オファー付きの画面を表示」といった細かい設定ができます。
これにより、ユーザーの状況に合わせたパーソナライズされた提案が可能になります。
4. 分析機能とA/Bテスト
どのペイウォールが何回表示され、何人が購入に至ったか(コンバージョン率)などの詳細な分析指標が自動で収集・表示されます。また、ペイウォールのバリエーションを複数用意し、ユーザーごとに異なる画面を表示して効果を比較するA/Bテストが無制限に行えます。
成功指標は自動計測され、ダッシュボード上で比較可能です。
5. AI機能
最近では生成AIを使った機能も搭載されました。ペイウォール内で使用するイメージ画像をテキストから自動生成する機能があり、ヒーローヘッダー画像やアイコンなどをワンクリックで作成できます。
背景除去(背景透過)などのオプションも備えています。
Superwallの料金プラン
Superwallには3つの料金プランがあります。各プランの特徴を見ていきましょう。
プラン詳細
- Indie(無料):月250コンバージョンまで無料。標準機能を利用可能。
- Startup(従量課金制):$0.20/コンバージョン。月5,000コンバージョンまで対応。
- Growth(カスタム定額制):無制限のコンバージョン。カスタム料金プラン。
Superwallの無料プラン
Superwallには無料プラン(Indieプラン)があります。月250コンバージョンまで利用可能で、標準機能がすべて含まれます。
Superwallの料金比較表
機能 | Indie (無料) | Startup ($0.20/コンバージョン) | Growth (カスタム定額) |
---|---|---|---|
月間コンバージョン上限 | 250 | 5,000 | 無制限 |
Drag ‘n Drop Paywall Editor | ✅ | ✅ | ✅ |
200+ Paywall Templates | ✅ | ✅ | ✅ |
Unlimited A/B tests | ✅ | ✅ | ✅ |
Charts & Analytics | ✅ | ✅ | ✅ |
We Build Your Paywalls | ❌ | ❌ | ✅ |
4 Weekly Growth Meetings | ❌ | ❌ | ✅ |
Dedicated Slack Channel | ❌ | ❌ | ✅ |
Custom Integrations | ❌ | ❌ | ✅ |
プラン選択のポイントと注意点
- Indieプラン:月250コンバージョンまで無料で試せる。
- Startupプラン:従量課金制なのでスケールに応じた支払いが可能。
- Growthプラン:無制限のコンバージョンと専用サポートが付属。
- 注意点:Growthプランの料金は個別見積もり。
Superwallの使い方
Superwallの基本的な利用手順は以下の通りです。
- アカウント登録: Superwallの公式サイトで無料アカウントを作成します。アプリ名やプラットフォーム(iOS/Androidなど)を登録すると、管理用のダッシュボードにアクセスできます。
- SDKの組み込み(初回のみ): アプリ開発者がSuperwallのSDK(ソフトウェア開発キット)をアプリに組み込みます。iOSならSwift/SwiftUI、AndroidならKotlin/Java、FlutterやReact Nativeにも対応したSDKが用意されています。この作業は一度だけ必要で、10分程度で完了できます。
- ペイウォール作成: ダッシュボード上でペイウォールをデザインします。テンプレートから選んでカスタマイズするか、白紙からドラッグ&ドロップで要素を配置します。プレビュー機能でスマホ画面での表示を確認しながら調整できます。
- 表示条件の設定: いつ・誰にペイウォールを表示するかを設定します。「ユーザーが特定ボタンをタップしたとき」や「アプリ起動回数」などのイベントトリガーや、「新規ユーザー」「未課金ユーザー」などのセグメント条件を組み合わせて設定します。
- 公開とテスト: 準備ができたらペイウォールを公開します。設定した条件を満たしたユーザーにリアルタイムでペイウォールが表示されるようになります。
Superwallの成功事例
Superwallを導入して成果を上げた具体例も多数報告されています。
- 動画編集系アプリ「Mojo」では、Superwallを使ったペイウォールの高速な実験と最適化により、わずか6か月でアプリ収益を2倍にできました。
- 写真加工アプリ「Photoroom」では、Superwall導入後にアップセル用画面の転換率が50%以上向上しました。
- 音楽アプリ「RapChat」では、Superwallによりペイウォール実験のスピードが10倍に高速化し、ユーザーに最適な収益モデルの発見が可能になりました。
- 個人開発者の例では、テレプロンプターアプリでSuperwallを導入し、ユーザー一人当たりの売上が40%増加したと報告されています。
Superwallと競合サービスの比較
Superwallに似たサービスとしては、RevenueCat(レベニューキャット)、Qonversion(コンバージョン)、Adaptyなどがあります。
RevenueCatはアプリ内課金・サブスクリプション管理の定番サービスですが、ペイウォール画面自体のデザインや最適化機能は限定的です。RevenueCatが「裏側の購読管理」に強いのに対し、Superwallは「ユーザーに見せる課金画面の表現と最適化」に特化しています。
なお、SuperwallはRevenueCatと併用することも可能で、RevenueCatで管理しているサブスクリプション商品IDをSUPERWALL側に連携させてペイウォールに表示する、といった使い方もサポートされています。
Superwallの技術的な仕組み
Superwallの仕組みは、シンプルですが巧妙です。アプリ内に専用のWebView(ウェブビュー)を埋め込み、SuperwallのサーバーからペイウォールのデザインをHTMLとして読み込みます。これにより、ペイウォールの内容をサーバー側でコントロールできるのです。
ユーザーがアプリ内で課金トリガーに当たる行動をすると、アプリはSuperwallのSDKに問い合わせ、該当するペイウォールがあればWebViewで表示します。購入ボタンが押されると、SDKは内部でAppleのStoreKitやGoogle Play課金APIと連携して決済処理を行います。
この「フロント(見た目)をWeb技術で柔軟にし、バック(課金処理)はネイティブAPIと統合」するアーキテクチャにより、見た目やロジックの変更はサーバー側で自在に行えつつ、決済自体の信頼性も両立しているのです。
まとめ
Superwallは、アプリの収益化に悩むデベロッパーやマーケターにとって心強いツールです。一度SDKを組み込めば、あとはノーコードでペイウォールの設計、条件設定、公開、検証というサイクルを非開発者でも回せるようになります。
多くの導入事例が示すように、ペイウォールの最適化は収益に直結する重要な施策です。Superwallを活用すれば、思いついたアイデアをすぐに試せるスピード感で改善サイクルを回せるようになるでしょう。
アプリのユーザー体験を損なわずに収益化を進めたい方、開発リソースに制約がある中でマーケティング施策を素早く試したい方には、ぜひ検討してみる価値のあるサービスと言えます。