ここでは、AIエージェントを用いてウェブブラウザを自動操作できる「Browser Use」というPythonライブラリについて解説します。複数の大規模言語モデル(LLM)と連携し、複雑な操作を自動化できる点が大きな魅力です。
Browser Useはどんなライブラリなの?
Browser Useは、ウェブページ上のボタンやフォームなどの要素を認識して操作し、クリックやテキスト入力を自動で行うことができます。LangChainなどのフレームワークを介してGPT-4やClaude 3.5などのLLMと連携できるので、自然言語で指示した内容をブラウザ操作に反映させられるのが特徴です。
ブラウザ操作にはPlaywrightを使用し、3.11以上のPython環境で動作します。
Browser Useの主な機能
ここでは、Browser Useが提供する機能を具体的にご紹介します。
1. ウェブ要素の認識と操作
ウェブページ上のボタンやリンク、フォームなどを認識し、クリックや入力といった基本操作を自動化します。
- HTML構造を解析して要素を特定
- スクリーンショット機能を使った視覚情報の取得
ポイント
LLMと連携することで「ここをクリックして検索フォームに入力してね」といった自然言語の命令に対応可能です。
2. 自動化機能
Browser Useは複数タブの同時管理が可能です。たとえば、一度に複数のECサイトの価格調査を進めるといったシナリオでも、作業効率を落とすことなく進められます。
- タブを並行して開き、同時に処理
- クリックされた要素のXPath抽出で、再現性の高い操作を実装
3. カスタマイズ性
ファイル保存や通知送信、データベース操作など、ユーザーが自由にカスタムアクションを追加できます。また、ヘッドレスモード(画面を表示しないブラウザ操作)やセキュリティ設定の変更といった柔軟なオプションにも対応しているため、さまざまな業務ニーズに合わせて使い勝手を調整できます。
4. 堅牢性と効率性
自動エラー修正機能が搭載されており、操作が失敗した場合は自動的にリトライや修正を試みます。さらに、複数のAIエージェントを同時実行できるため、大量のタスクを並列で処理し、時間を大幅に節約できます。
5. AIモデルとの互換性
GPT-4、Claude 3.5、Llama 2などの大規模言語モデルと連携可能です。LangChain経由でモデルを呼び出し、AIエージェントにブラウザ操作を指示することで高度な自動化を実現します。
6. その他の機能
- 匿名の使用データ収集により、機能改善を継続(一部オプトアウト可能)
- MITライセンスで公開されており、安心して利用できる
Browser Useの技術スタックと設計思想
Browser Useの開発背景や設計上の工夫点を見てみましょう。
使用技術
- プログラミング言語: Python 3.11以上
- ブラウザ操作: Playwright
- 統合フレームワーク: LangChain
- ライセンス: MITライセンス
アーキテクチャの特徴
- モジュラー設計:
agent/
(AIエージェントの核)やbrowser/
(ブラウザ操作の抽象化)など、機能ごとにディレクトリが分かれています。 - 非同期処理:
async/await
を活用し、並行タスクを効率的に処理。 - 拡張性: カスタムアクションやブラウザ設定の追加・変更が容易。
- エラー処理とリカバリー: 自動エラー修正により作業が止まらない設計。
- セキュリティ: 環境変数を活用し、APIキーなどの機密情報を安全に管理。
Browser Useの実際の使用例
Browser Useを使った代表的なユースケースをご紹介します。
1. 求人検索と自動応募
複数の求人サイトの応募フォームに対して、氏名や経歴などを自動入力し、応募までを高速化。
2. 価格監視
ECサイトで販売されている商品の価格情報を収集し、条件に合った価格になったら通知を送信。
3. 航空券の最安値検索
Google Flightsなどを操作して、複数のフライトを横断的に検索し、最安値の航空券情報を取得。
4. Hugging Faceモデル検索
Hugging Face上でモデルを検索し、特定の条件を満たすモデルの情報をファイルにまとめて保存。
インストールと基本的な使い方
ここでは、Browser Useを導入する流れをシンプルにご紹介します。
1. 環境セットアップ
bashコードをコピーするpip install browser-use
playwright install
2. APIキーの設定
.env
ファイルを用意して、OpenAIやAnthropicなどのAPIキーを定義します。
makefileコードをコピーするOPENAI_API_KEY=your_openai_key
ANTHROPIC_API_KEY=your_anthropic_key
3. 簡単なコード例
pythonコードをコピーするfrom langchain_openai import ChatOpenAI
from browser_use import Agent
import asyncio
async def main():
agent = Agent(
task="Googleで東京の天気を調べてください。",
llm=ChatOpenAI(model="gpt-4"),
)
result = await agent.run()
print(result)
asyncio.run(main())
4. カスタムアクションの追加(例)
pythonコードをコピーする@controller.action('Save models', param_model=Models)
def save_models(params: Models):
with open('models.txt', 'a') as f:
for model in params.models:
f.write(f'{model.title} ({model.url}): {model.likes} likes\n')
セキュリティ上の考慮点
ブラウザを自動操作する特性上、注意すべきセキュリティリスクも存在します。以下に代表的な例を挙げます。
1. マルウェア感染リスク
Browser Useはローカル環境で動作するため、PC自体がマルウェアに感染している場合、悪意あるプログラムからBrowser Useを通じて機密情報が盗まれる可能性があります。
対策:
- ウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態に保つ。
- OSや関連ソフトウェアを定期的に更新する。
- 不審なメールやサイトからのダウンロードを避ける。
2. 個人情報・支払い情報の流出リスク
既存のブラウザプロファイルを使用すると、AIエージェントが保存されている個人情報や支払い情報にアクセスできる可能性があります。
対策:
- 別のブラウザプロファイルを使用し、機密情報を保存しない環境で操作を行う。
- 銀行やECサイトなど、機密性の高いサイトへの自動化を避け、手動での操作を行う。
3. 機密情報の不適切な入力
AIに指示を与える際に、誤ってパスワードや他の機密情報を含む指示を送信すると、それらの情報が外部に漏れるリスクがあります。
対策:
- 機密情報はプロンプトに含めず、必要な範囲だけを自動操作する。
- 使用しているLLMの利用規約を確認し、データの取り扱いポリシーを理解する。
4. 不明なコードの取り込みリスク
インターネット上からサンプルコードやスクリプトをコピーする際に、不正な命令が含まれている可能性があります。
対策:
- 信頼できるリポジトリや作者からのみコードを取得する。
- コードを導入する前に、自身で内容を理解し、必要に応じてテスト環境で検証する。
5. マルチタブ操作による誤操作リスク
複数のタブを同時に操作する際に、重要な情報が含まれるタブが誤って操作される可能性があります。
対策:
- Browser Useで使用するタブとプライベートなタブを明確に分ける。
- テスト専用のコンテキストを準備し、不要なタブを開かないようにする。
6. セキュリティ設定のカスタマイズ管理
Browser Useはセキュリティ設定をカスタマイズ可能ですが、不適切な設定変更はセキュリティホールを生む可能性があります。
対策:
- 必要最低限のカスタマイズに留め、セキュリティ設定を厳格に管理する。
- ヘッドレスモードやセキュリティ無効化などのオプションを慎重に使用する。
7. ブラウザの更新とメンテナンス
ブラウザ自体の脆弱性を悪用されないよう、常に最新のバージョンに更新することが重要です。
対策:
- ブラウザの自動更新機能を有効にし、定期的に更新を確認する。
- セキュリティパッチが提供された際には速やかに適用する。
8. 権限管理とアクセス制御
Browser Useがアクセスできる情報や操作権限を適切に制御することで、不正な操作や情報漏洩を防ぐことができます。
対策:
- 必要な権限のみを付与し、不要な権限は制限する。
- 環境変数や設定ファイルで機密情報を安全に管理する。
9. 信頼できる拡張機能の利用
ブラウザ拡張機能を利用する際には、信頼性の高いもののみをインストールし、定期的に見直すことが重要です。
対策:
- ブラウザの公式ストアからのみ拡張機能をインストールする。
- インストールする前に拡張機能のレビューや評価を確認する。
まとめ
Browser Useは、AIエージェントによる高度なブラウザ操作自動化を実現する強力なツールです。複数のLLMとの連携、カスタムアクションの追加、並列エージェントの実行といった幅広い機能を備えており、さまざまなウェブ業務の効率化に役立ちます。一方で、ブラウザ操作を伴うため、セキュリティリスクへの対策は欠かせません。
「大量のデータ収集を自動化したい」「複数のサイトをまたいだ操作を効率化したい」といった方は、ぜひBrowser Useを導入し、そのパワーを体感してみてください。適切なセキュリティ対策をしながら使いこなせば、日々のウェブ作業がぐっと楽になるでしょう。