ChatGPTにうまく伝えたつもりなのに、ちょっとズレた返答が返ってくる。
そんな経験をした人にこそ知ってほしいのが、「YAML形式」という書き方です。
YAML形式とは、情報を構造化(=整理)して記述するためのフォーマットの一つ。
そして実はこの形式、AIが最も理解しやすい形とも言われています。
指示が長くなったり、条件が増えたりすると、AIは文章の“行間”を読み違えることがあります。
でもYAML形式を使えば、どんな要素をどう処理すべきかが明確になるため、ChatGPTの出力が安定し、精度も高くなります。
本記事では、YAMLの基本的な書き方から、ChatGPTと相性のいい使いどころ、コピペで使えるプロンプトテンプレートまで、初心者にもやさしく解説します。
「なんで思った通りに動いてくれないの?」と感じている人こそ、YAML形式がきっと役立ちます!
はじめに:YAML形式って何?
YAML形式は、ChatGPTのようなAIに対して「何を、どのようにしてほしいか」を整理して伝えるのに非常に相性のよい書き方です。
この章では、YAMLの基本構造とその由来について、初心者にもわかりやすく紹介します。
YAMLの基本構造はシンプル
YAML形式とは、情報を見やすく整理して伝えるためのフォーマット(書き方のルール)です。ChatGPTのようなAIに対して、「どんなことを、どんなふうにやってほしいか」をわかりやすく伝えるのにぴったりな方法として注目されています。
例えば、こんなふうに書きます。
task: ブログ記事の構成を考える
topic: YAML形式の使い方
audience: 生成AIを使い始めた初心者
tone: フレンドリーでやさしい
length: 1200文字前後
これだけで、「何をしてほしいのか」「誰向けなのか」「どんな雰囲気で」「どれくらいの量で」など、AIに伝えたい要素が一目でわかります。
複雑な文章にしなくても、英語ラベルと日本語の中身を組み合わせることで、人にもAIにもやさしい構造がつくれるのが、YAMLの魅力です。
YAMLの名前と由来
「YAML」という名前は、「YAML Ain’t Markup Language(YAMLはマークアップ言語じゃない)」の略。
一見むずかしそうな名前ですが、難しい知識はまったく必要ありません。
「AIに伝えたいことを“整理して伝える”ための、ちょっと便利な書き方」くらいに気軽にとらえてOKです。
YAML形式がChatGPTに効く理由
YAML形式は、ただ見やすいだけでなく、ChatGPTが指示をより正確に理解するために役立つ「構造化の力」を持っています。この章では、なぜYAML形式が生成AIに効果的なのかを3つの観点から解説します。
1. 指示が明確になり、AIの誤解を防げる
ChatGPTは自然言語をある程度理解できますが、「人間の行間を読む」ことは苦手です。たとえば次のような指示では、どこまでが条件なのかがあいまいになりがちです:
SNS投稿の文章を考えてください。20代向けで、カジュアルなトーン、商品は新作コスメで、ハッシュタグも入れてほしいです。
これをYAML形式にすると、情報の整理が一気に明確になります:
task: SNS投稿文の作成
audience: 20代の女性
product: 新作コスメ
tone: カジュアル
include_hashtags: true
このように「何をどうしてほしいのか」が構造として分かれていることで、AIが正しく処理しやすくなります。
2. 出力が安定し、テンプレートとして再利用しやすい
構造が決まっていれば、毎回の出力の揺れが少なくなります。たとえば毎週発行するメルマガや、商品ごとの紹介文など、形式が似ているプロンプトではテンプレート化が有効です。
task: メールマガジンの文章を作成
audience: ビジネスパーソン
topic: [ここに毎回変わるテーマ]
tone: 丁寧かつ親しみやすい
cta: ウェブサイトへの誘導を含める
YAMLなら一部の要素だけを差し替えて使いまわせるため、作業の時短にもつながります。
3. 複雑な条件もスッキリ整理できる
ターゲット・媒体・トーン・文字数・キーワードなど、条件が増えてくると、文章ではどうしても伝えづらくなります。
task: 記事構成案の作成
audience:
年代: 30代
職業: マーケター
関心: SEO対策
tone: 解説的でやさしい
length: 約1500文字
keywords: [SEO, コンテンツ制作]
media: オウンドメディア
構造が明確で、情報がどこに属しているかがはっきりしているため、AIが迷わず処理できます。
YAMLは、条件が多くなるほど“整理力”が活きる書き方です。
ChatGPTにも使われている!YAMLが活躍する身近な例
YAML形式は、実は私たちの身の回りのAIサービスにも広く使われています。ただの技術用語ではなく、ChatGPTユーザーにとっても“すでに関わっている存在”かもしれません。
ここでは、AI初心者でも一度は目にしたことがあるような例をいくつか紹介します。
YAML形式は、実は私たちの身の回りのAIサービスにも広く使われています。ただの技術用語ではなく、ChatGPTユーザーにとっても“すでに関わっている存在”かもしれません。
GPTsの「カスタム指示」でもYAML形式が採用されている
ChatGPTの「GPTs」機能では、オリジナルのチャット体験を作る際に、挙動を細かく設定できる「Instructions(カスタム指示)」があります。そこではYAML形式で情報が整理されています。
name: ブログ構成サポートGPT
description: >
記事の構成案を自動で提案します。
トーンやターゲットに応じて柔軟に対応します。
tone: フレンドリー
output_format: markdown
このように、あらかじめ「どんなことを、どう出力してほしいか」を整理しておくことで、AIはその設定に沿った一貫性ある対応が可能になります。
YAMLは、エンジニア向けの設定ファイルだけでなく、**生成AIを活用する人にとっての“伝え方の型”**としても役立っているのです。
ChatGPTのプロンプトテンプレやカスタムGPT以外にも
たとえば、以下のような場面でもYAML形式が活躍しています:
- 講座用のAIスクリプトを作成する際の設計メモ:教材作成者が「目的」「学習者像」「レッスン構成」などを整理するために、YAML形式で記述するケースがあります。
- ブログ記事やYouTube台本をAIに生成させるときの下書き指示:task・audience・toneなどの情報をYAMLで書いておくことで、安定した出力が得られやすくなります。
- AIチャットサービスのカスタム設定:GPTs以外のチャットAIでも「指示文をYAMLで構造化しておくと動作が安定する」と公式に推奨されているものもあります。
YAMLは、裏方の専門技術というより「AIとの対話をうまくするためのツール」として、少しずつ日常の作業に入り込んでいます。とえば、Zapier(ザピアー)やMakeといったノーコード自動化ツールでも、YAMLで設定内容をエクスポート・インポートできるケースがあります。これは、ワークフローの再利用性や構造化を重視した仕様に由来しています。
また、一部の日本語対応のAIチャットツールでも、設定項目やカスタマイズ部分で「YAML形式で貼り付けてください」と案内されることが増えています。
YAMLは“裏側で勝手に使われている”存在から、“ユーザー自身が書けると便利なツール”に変わりつつあると言えるでしょう。
YAMLの書き方を覚える必要はありません
ここまで読んで「でもYAMLって、ちゃんと書けるようにならないとダメなの?」と思った方もいるかもしれません。
安心してください。YAML形式の書き方を細かく覚える必要はありません。
なぜなら、AIに「YAML形式で整理して」と頼むだけでも、ちゃんと反応してくれるからです。
たとえば、以下のような自然な依頼でもOKです:
「この内容を、AIが最も理解しやすい形でYAML形式に整理してください」
実際にやってみると、ChatGPTがきれいに構造化されたYAMLを書いてくれるはずです。どんな要素に分けるかもAIに任せられるので、ユーザー側に特別なスキルは必要ありません。
もちろん、少し修正したくなったら、ラベル名や中身を自分で書き換えてもOK。
書き方を覚えるよりも、「YAML形式で整理して」と頼めることのほうが大事です。
YAMLとマークダウンの違いは「AIへの指示」と「AIからの出力」
ChatGPTでは、YAML形式と並んで「マークダウン(Markdown)記法」もよく使われます。どちらも見た目がシンプルで、AIとのやり取りに便利な形式ですが、それぞれ役割がまったく異なります。
マークダウンに馴染みがない方でも大丈夫です。このセクションでは、「AIとのやり取り」の視点から、YAMLとマークダウンの違いと使い分けをわかりやすく解説します。
YAMLは「AIにどう動いてほしいか」を伝えるためのフォーマット
YAMLは、ChatGPTに対して「何を・どうやって・誰向けに」など、指示内容を構造化して伝えるための記法です。あくまで入力(インプット)用として使われます。
task: ブログ記事の構成案を作る
topic: YAMLとマークダウンの違い
audience: 生成AIを使い始めた初心者
tone: フレンドリーでわかりやすく
このように書くことで、ChatGPTは「こういう構成で考えればいいんだな」と誤解なく理解してくれます。
マークダウンは「AIからの出力」を整理するためのフォーマット
一方でマークダウンは、ChatGPTの出力結果を「人が読みやすい形に整える」ために使われます。
たとえば、以下のように出力を整えると、視覚的にもわかりやすくなります:
# タイトル
本文です。
- 箇条書き
- 箇条書き
この形式は、ブログ・メモ・マニュアルなど、人に読ませる文書の整形に最適です。
つまり、
- YAMLは「AIに向けた設計図」
- マークダウンは「人に向けた完成品」
と捉えるとわかりやすいでしょう。
YAMLで明確な指示を与え、マークダウンでわかりやすく出力させる。 これがChatGPTと上手に付き合うための基本スタイルです。
コピペで使える!ChatGPTにYAMLで指示するプロンプト例
ここからは、ChatGPTにYAML形式で指示を出す具体的なプロンプト例を紹介します。 初心者の方でも、内容をそのままコピーして使える形にしています。どんなシーンで使えるのかイメージしながら読んでみてください。
会議の議事録を整理する(情報の分類と要約)
以下の議事録を、YAML形式で「発言者」「主な決定事項」「ToDo」に分けて整理してください。
---
(ここに議事録テキストを貼り付け)
このように頼むだけで、ChatGPTが情報を自動で分類し、スッキリと整理してくれます。
SNS投稿の構成を設計する(要素の洗い出し)
以下の条件をもとに、SNS投稿の設計をYAML形式で出力してください。
- 商品:睡眠サポートサプリ
- ターゲット:30代の働く女性
- トーン:やさしく、信頼感のある
- 含めたい要素:導入文・商品の特徴・効果・ハッシュタグ
ChatGPTはペルソナや投稿構成を整理し、 マーケティング視点で活用しやすい形にまとめてくれます。
アイデア出しの条件を明確にする(出力のブレを防ぐ)
以下の条件をもとに、YAML形式で10個のブログタイトル案を提案してください。
- トピック:副業初心者向けのアイデア
- 想定読者:会社員で副業に興味がある人
- トーン:ポジティブで親しみやすく
- 長さ:1タイトル15文字以内
構造化することで、「誰に」「どんな内容を」「どんな雰囲気で」届けたいかが明確になり、 タイトルの方向性がブレにくくなります。
このように、YAML形式は「伝えたい情報」をChatGPTにしっかり届けたいときに非常に有効です。 次は、さらに使いこなしたい人向けに「高度なYAML活用テクニック」を紹介します。
高度なYAML活用テクニック:出力スタイルを制御する
ここでは、YAML形式を使ってChatGPTの出力スタイルそのものを調整するためのテクニックを紹介します。 「もう少しくだけた言い回しにしてほしい」「文体に統一感がほしい」といった要望にも、YAMLを活用することで柔軟に対応できます。
toneとstyleでニュアンスを指定する
task: ブログ記事の作成
topic: 副業の始め方
audience: 20代会社員
style: カジュアルで親しみやすい
このように書くと、ChatGPTはカジュアルなトーンを意識した表現を選ぶようになります。
より細かく指示したい場合は、以下のような補足を追加してもOKです。
tone: 軽やかで明るい
notes: 若者向けの雑誌のような、テンポのよい文体を希望
formatで出力の型を指定する
ChatGPTは、以下のような出力形式の指定にも対応しています:
output_format: markdown
structure:
- 導入文
- 問題提起
- 解決策
- まとめ
このようにしておくと、AIは出力内容の見出し構成も考慮しながら生成してくれます。 特に、複数のセクションを含む記事やスライド構成などには有効です。
examplesで参考イメージを共有する
「この雰囲気で書いてほしい」というイメージを伝えるには、YAML内にサンプルを含めるのも一つの手です:
examples:
- "副業って難しそう…と思っていませんか?実は、最初の一歩は意外とカンタンなんです。"
- "この記事では、副業の始め方を3つのステップで紹介します。"
このような“例文提示”は、出力の雰囲気を合わせるために非常に効果的です。
YAML形式は「出力の設計図」としても使える、ということがポイントです。
まとめ:YAML形式は、AIとの会話を整える「型」
YAML形式は、ChatGPTに対して“どうしてほしいか”を整理して伝えるための、とても便利な書き方です。
- 指示が明確になり、AIの理解度がアップする
- 出力のブレが減って、安定した成果が得られる
- 複雑な要素や条件もスッキリ整理できる
さらに、「出力のスタイル設計」にまで活用すれば、ChatGPTの表現力を最大限引き出せます。
AIが“なんとなく”ではなく、“ちゃんと理解して”動いてくれる。その精度と安定感を支えるのが、YAMLという構造化の力です。
まずは試してみよう
「この指示をYAML形式で整理して」と頼むだけでも、今日から使い始めることができます。
小さな一歩で、AIとの対話の質が大きく変わります。ぜひ、あなたの業務にもYAML形式を取り入れてみてください。