AIコードエディタの最前線を走る「Cursor」が、開発の場所と手法を大きく変革するアップデートを正式にリリースしました。開発元の米Anysphereは2025年6月30日(現地時間)、かねてより期待されていたCursorのモバイル版およびWebブラウザ版(Cursor Agent on web and mobile)の提供を開始。
これにより、スマートフォンやタブレットからAIによる高度なコーディング支援を受けられるようになるだけでなく、公式ブログでは画像などのリッチコンテキストを扱える機能も明らかにされており、AIとの対話方法そのものの進化を感じさせます。
公式発表の概要:一体何が可能になるのか?
今回、複数の情報源から明らかになった新機能と特徴を、以下に整理します。
- 対応プラットフォームの拡大
- Webブラウザ:
cursor.com/agents
にて、PC、タブレット、スマホの各種ブラウザから利用可能。 - モバイルアプリ: iOSおよびAndroidではPWA(Progressive Web App)としてインストールでき、ネイティブアプリに近い操作感を実現。
- Webブラウザ:
- 強化されたAIエージェント機能
- 場所を選ばないタスク実行: 外出先からでも、バグ修正、新機能の構築、複雑なコードベースに関する質問応答などをAIエージェントに指示し、バックグラウンドで実行させることができます。
- リッチコンテキストでの対話: テキストの指示に加え、画像を含めた入力や、対話形式でのフォローアップ指示が可能。複数のエージェントを並行で実行させ、結果を比較検討することもできます。
- シームレスなIDE連携: モバイルやWebでAIエージェントが行った作業の続きを、PC上のCursor(IDE)で引き継ぎ、レビューや直接編集が可能です。
- チームコラボレーションの円滑化
- Web上でのレビュー: チームメンバーは、リポジトリへのアクセス権があれば、Webインターフェースから直接AIエージェントの作業差分(diff)を確認したり、プルリクエストを作成したりできます。
- Slack連携の強化: Slack上で「@Cursor」とメンションするだけでエージェントを起動したり、タスク完了通知を受け取ったりすることができ、日常のコミュニケーションツールから開発プロセスを直接駆動できます。
開発の未来を変える3つの重要なポイント
これらの事実から、開発の未来を占う上で重要となる3つの変化を読み解くことができます。
1. 開発の「場所」からの完全な解放
PCの前という物理的な制約がなくなり、アイデアが生まれたその瞬間に、場所を問わず開発に着手できるようになります。これは単なる利便性の向上ではなく、開発者のライフスタイルや企業の開発文化そのものを変えるインパクトを持っています。
2. AIとの「対話方法」の進化
特筆すべきは、画像入力への対応です。これは、AIとの対話がテキストベースからマルチモーダルへと進化していることを明確に示しています。
- デザインからコードへ: 将来的には、デザイナーが作成したUIデザインの画像をAIに渡すだけで、直接コードを生成させるといったワークフローが一般化するかもしれません。
- 直感的な指示: ホワイトボードに書いた図や手書きのメモを写真に撮ってAIに渡すなど、より直感的でスピーディな指示出しが可能になります。
3. コラボレーションの「中心」の変化
Slack連携やWeb上でのレビュー機能の充実は、開発のハブが従来のIDE単体から、コミュニケーションツールやWebプラットフォームへと移行しつつあることを示唆しています。AIエージェントはもはや単なるツールではなく、Slackのチャンネルに参加する「仮想的なチームメンバー」としての役割を担い始めています。
Cursor is now on your phone and on the web.
— Cursor (@cursor_ai) June 30, 2025
Spin off dozens of agents and review them later in your editor. pic.twitter.com/y7mOlA9h07
Cursorの料金プラン
Cursorには5つの料金プランがあります。各プランの特徴を見ていきましょう。
- Hobby:無料。Pro版2週間トライアル、制限付きエージェントリクエストが可能。
- Pro:月額$20。無制限タブ補完、バックグラウンドエージェント、Bug Botなどが利用可能。
- Ultra:月額$200。Proの全機能に加え、主要AIモデルの20倍使用量やPRインデックスへのアクセス。
- Teams:月額$40/ユーザー。Proの機能に加えて、チーム管理機能やSSOなどを搭載。
- Enterprise:カスタム価格。Teamsの機能に加え、SCIM連携や専用サポートなどが追加。
Cursorの無料プラン
Cursorには無料プランがあります。Pro版の一部機能を2週間トライアルとして利用できます。
Cursorの料金比較表
機能 | Hobby | Pro | Ultra | Teams | Enterprise |
---|---|---|---|---|---|
月額料金 | 無料 | 月払い:$20/年払い:$16 | 月払い:$200 | 月払い:$40 | カスタム価格 |
タブ補完 | 制限あり | 無制限 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
エージェントアクセス | 一部制限 | 可能 | 可能 | 可能 | 拡張機能あり |
チーム/管理機能 | なし | なし | なし | 有り | 拡張機能・SCIM対応 |
サポート | なし | 通常 | 優先アクセス | 通常 | 優先サポートあり |
プラン選択のポイントと注意点
Cursorの料金プランを選択するときのポイントや注意点は、以下の通りです。
- ポイント1:個人利用にはHobbyまたはProが適しています。
- ポイント2:生成AIの使用量が多い場合はUltraが最適です。
- ポイント3:チームでの導入にはTeamsまたはEnterpriseを検討しましょう。
- ポイント4:年間契約の場合、月額料金が20%お得になります。
以上がCursorの料金プランの概要です。詳細は公式サイトも必ず確認するようにしてくださいね。
まとめ
Cursorのモバイル・Web対応は、単に利用できるデバイスが増えたというニュースではありません。それは、開発の「場所」「対話方法」「コラボレーション」のあり方を根底から変える可能性を秘めた、重要な一歩です。特に画像などを扱えるマルチモーダルなAIエージェントの登場は、人間とAIがより高度に協業する新しい時代の到来を予感させます。