DeepSeekは、2023年に設立された中国のAI企業が開発した「大規模言語モデル(LLM)」を中心とした生成AI技術の総称です。多くの企業が高額な投資を行うなか、DeepSeekはオープンソース化を積極的に進め、コスト削減とAI技術の普及に力を入れています。
そのビジネスモデルが割引販売を得意とするプラットフォーム「Pinduoduo(ピンドゥオドゥオ)」にたとえられ、「AIのPinduoduo」と呼ばれることもあります。
DeepSeekの主な特徴
- 高性能なモデル設計
DeepSeekは、Mixture-of-Experts(MoE)という仕組みを採用しています。これは、必要に応じて計算資源を切り替えることで効率的に学習を行う方法です。大量のデータを処理してもコストと性能のバランスが取りやすいのがポイントです。 - オープンソース化
MITライセンスで公開されているため、商用利用や改変が自由に行えます。研究機関や個人が独自のプロジェクトに組み込みやすいという利点があります。 - 多言語対応と長文処理能力
中国語や英語をはじめ、多数の言語に対応しています。1度に扱える文章量(トークン数)が最大128Kと非常に大きく、複雑な文章や長時間の対話にも対応しやすいです。 - コスト効率の高さ
他社のAIサービスと比較すると、トークンあたりの利用料金が大幅に安い傾向があります。たとえばDeepSeek-V3の料金は1M(100万)トークンあたり約$0.27と、同等クラスのモデルに比べて10分の1程度のコストという報告もあります。
DeepSeekの主なモデル
DeepSeekは複数のモデルをラインナップしており、それぞれ得意分野が異なります。以下のモデルがよく知られています。
DeepSeek-V3
- 約6710億ものパラメータ(※1)を持つ大規模モデルです。
- 数学やプログラミング、長文の文章生成など、多岐にわたるタスクで高い性能を示します。
- 他社モデル(GPT-4oやClaudeなど)と比べても、学習コストが低く抑えられているのが特徴です。
DeepSeek-V2
- V3の前身となるモデルで、236億パラメータ規模のMoEアーキテクチャを採用。
- 比較的軽量ながら高性能で、研究機関やスタートアップ企業でも導入しやすかったモデルとして知られています。
DeepSeek-Coder
- コード生成に特化したモデルで、プログラミング言語を横断的にサポートします。
- プログラムの修正やコメント生成にも使えるため、ソフトウェア開発の効率化に役立ちます。
DeepSeek-R1
- 数学や推論タスク(※2)に強いモデルで、特に高度な計算が求められる場面に適しています。
- 軽量版モデルもあり、ローカル環境でも動作可能です。
※1 パラメータ: AIモデルが持つ学習可能な数値の集まり。大規模になるほど多様なデータに対応しやすい反面、計算量やメモリが必要になります。
※2 推論タスク: 数式の証明や論理的な判断など、複数ステップの思考が必要な課題を解くタスクを指します。
DeepSeekの利用方法
DeepSeekを使う方法は大きく分けて3つあります。
1. Webチャット
公式サイトで無料利用が可能です。ただし、利用回数や使用トークン数に制限があります。試しに触ってみたい方や、簡単な質問をしたいときに便利です。
2. API経由
開発者向けにAPIが公開されており、アプリケーションや自社サービスと統合しやすくなっています。利用料金は従量課金制で、トークン数に応じた料金が発生します。
3. ローカル環境
PythonやDockerでモデルをダウンロードし、自前のサーバーやPC上で実行することも可能です。ただし、高性能なGPUと大容量メモリを備えたマシンが必要になる場合があります。
課題と今後の展望
DeepSeekは低コストで高性能な点が強みですが、いくつかの課題もあります。たとえば、英語・中国語以外の言語対応の精度が十分でないなどの指摘があります。さらに、中国企業が開発したモデルという性質上、規制や検閲の影響を受けるリスクも考慮が必要です。
一方で、オープンソース化に積極的であることから、開発者コミュニティによる改良や新言語への対応が期待できます。今後のバージョンアップや多言語化の進展に注目が集まっています。
まとめ
DeepSeekは、「AIのPinduoduo」と呼ばれるほど低価格と高性能の両立を目指す大規模言語モデルの一群です。特に、オープンソースである点や、大量の文章を一度に処理できる能力などが魅力となっています。
初心者の方は、まず無料チャットや低コストのAPIを試すことで、モデルの出力精度や使い勝手を体感してみるのがおすすめです。一方、エンタープライズ用途では導入前にデータの取り扱い方や国内外の法規制を確認し、安心して利用できる体制を整えることが重要です。ユーザーのニーズや環境に合わせてカスタマイズしやすいのもDeepSeekの利点なので、活用の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。